誠実な組織 信頼と推進力で満ちた場のつくり方

発刊
2023年10月20日
ページ数
460ページ
読了目安
638分
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これからの時代に必要な組織のあり方
企業が長期的に成長する観点として「ESG」が重視されている昨今において、企業にはパーパスや不平等の是正、透明性などが求められている。今後の社会において、企業が目指すべき組織の在り方を示し、どのようにそれを構築すべきかを紹介している一冊。

今後、企業の長期的で持続可能な成長を考えた場合に、どのような組織を作っていくべきかを考えるヒントを与えてくれます。経営や組織マネジメント、組織構築に関わる人向け。

誠実な企業をつくるために不可欠なもの

ビジネスの世界では、次の3つの力が激しさを増しながら衝突している。

  1. パーパスに根差した生き方や組織づくりの動き
    →残念ながら企業は「パーパス・ウォッシュ(うわべだけの目的を生み出す)」を行うようになった
  2. 現代社会で道徳的、倫理的に問題視されている不平等さに関する動き
    →より公正な組織というよりも公正さそのものを求める運動になっている
  3. 従業員の声が組織のエンプロイヤーブランドにおいてますます重視されている
    →短期間の研修や広報活動でこうした社内文化を促進しようとするのはいいが、日常的な実践に遠く及んでいない

 

これら3つの力は、個々に見ると、本来の意図を達成できていない。しかし、すべてが合わさり、同時に働けば、さらに強い、新たな力が生まれる。

  • 目的:よりよい善を為す
  • 公正:正しく公平な行いをする
  • 真実:相手を尊重しつつ、妥協せず率直に真実を伝える

これが「誠実さ」だ。3つのピースがどれか1つでも欠ければ誠実さは成り立たない。誠実でいるためには、次の3つが不可欠である。

  • 正しいことを言う(真実)
  • 正しいことを行う(公正)
  • 正しい動機に基づいて正しい言動をする(目的)

 

誠実さというのはただの性格的な特徴や倫理的原理ではなく、能力である。能力を伸ばすためには、定期的に鍛えなければならない。必要なものは、洞察力、継続的なフィードバック、創造性が必要である。

より公正な組織をつくろうと決意すれば、組織の根深いバイアスに手を加えなければならない。また、アカウンタビリティ制度についても進んで見直さなければならない。そのためには、部下に弱さをさらけ出し、十分な信頼関係を構築することも伴う。そうすることで初めて、部下自身にコミットメントに対する責任を持たせ、失敗についてオープンに話し合う立場に立てる。また、自分が手本となって、自分の非を認めて改善する方法を示さなくてはならない。

 

アイデンティティにおける誠実さ – 言葉と行動を一致させる

自分たちはこのような組織だ、と語っている組織が、それに即した行動を取らなければ、あるいは大々的な目標を掲げながらも、その目標を従業員の日々の仕事と結びつけていなければ、その組織のアイデンティティはあやふやなものとなる。

組織としてのアイデンティティが明確でない、あるいは従業員の日々の業務に即していない企業では、そうでない企業と比較して、従業員が隠蔽や改ざん、不正を働く傾向が約3倍も高くなる。

 

アイデンティティを明確にするというのは、従業員や市場に対して宣言している自身の在り方と、実際の自身の在り方が一貫しているということ。つまり、言葉と行動に一貫性があるということだ。そのためには、組織に属する人々が、組織のバリューに沿って行動しなくてはならない。また、組織が掲げるパーパスを組織全体に浸透させ、従業員1人1人の日々の仕事に織り込まなくてはならない。

リーダーや組織が重んじるべきは、本物の信頼性だ。そのためには、自分の言葉と行動の溝に気づいたら、それを隠さず正直に対応しなくてはならない。

 

アカウンタビリティにおける公正 – 尊厳を第一に考える

組織における大きな頭痛の種の1つに、パフォーマンスマネジメントがある。リーダーによるパフォーマンス評価が公平でないと感じた従業員は、自分の手柄を確保するためにあらゆる手段を講じるからだ。

批判の恐れなく助けを求められる環境、あるいは失敗を学びの機会と捉えることが許された環境では、従業員が自分の成果を正直に語り、周囲に対しても公平に接する傾向が4倍も高くなる。

 

尊厳と公平をアカウンタビリティ制度の中心に置くことで、2つの重要な変化を起こすことができる。まず「貢献」と「貢献者」を改めて結びつけられるようになる。公平なアカウンタビリティを構築するためには、上司は部下が1人の人間として持つ独自の才能を育てなくてならない。アカウンタビリティにおける尊厳には、個々の貢献とその貢献者を結びつけた「評価と称賛」が必要である。尊厳あるアカウンタビリティの核にあるのは、リーダーと部下の間の誠実かつ思いやりある関係性だ。

 

ガバナンスにおける透明性 – 誠実な対話を通じて、信頼できる意思決定を行う

企業において、どのように意思決定がされるかというのは、しばしば混乱の種となる。人的・財的資源の割き方、優先事項の決め方、難しい問題に対する意思決定の仕方について、従業員が把握していない、あるいは信用していない場合、彼らが隠蔽や改ざんを働く傾向は3.5倍以上高くなる。

 

透明性のあるガバナンスとは、ただ意思決定のプロセスを可視化することではない。明確さ、機敏さ、思いやりを伴うものである。これら3つが組み合わさると、意思決定に対する信頼性が生まれ、組織全体で自信を持ってその方針を実行に移すことができる。優れたガバナンスの核にあるのは、決定事項が開示され、難しい問題がオープンに議論される、効果的な話し合いの場である。