マッキンゼー 勝ち続ける組織の10の法則

発刊
2022年11月19日
ページ数
436ページ
読了目安
503分
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マッキンゼー流組織のパフォーマンスを高めるための教科書
マッキンゼーで全社変革プログラムを様々な企業に提供している著者が、企業の組織変革において重要なことをまとめた一冊。
優秀な人材を獲得し、定着させる方法から、優れた経営チームをつくる方法、組織文化を競争力にするための方法など、組織に関わる重要なテーマにおいて、大切なことを紹介しています。

優れた人材を獲得し、定着させるために大切なこと

最高の人材が最高の成果を生み出すというのは、いつの時代も変わらない。最近の研究では、ハイパフォーマーの生産性は平均と比較して4倍高いことがわかった。その差は仕事の複雑さに比例してさらに大きくなることが明らかになっている。管理職、ソフトウェア開発者、プロジェクトマネージャーなど、情報のやり取りや、双方向コミュニケーションが重要な仕事では、ハイパフォーマーの生産性は平均と比較して8倍高い。

 

すべての職務は平等に作られているわけではない。ある職務は、特に大きな価値を生み出す。リソースや予算が限られる中、あらゆる領域で優れた人材を確保するのではなく、特に重要な領域に絞って、人材の獲得・定着に集中することが重要である。全ては重要な職務の特定から始める。特定するためには、各職務と生み出される企業価値の関係を理解する必要がある。

 

「Employee Value Proposition」(EVP)とは、社員が与えるもの(時間、労力、経験、アイデアなど)に対して、得られるもの(報酬、経験、仕事の中身など)を定義したものである。EVPが競合他社よりも強ければ、優秀な人材を惹きつけ定着させることができる。独自性があり、ターゲットが明確で、かつ実態を表しているEVPは、人材獲得・育成競争における強力な武器となる。

優秀な人材が最も重視する要素は次の4つである。

  1. 優れたリーダー:上司が心を動かす力を持っており、権限を与えてくれ、成長に集中できる
  2. 優れた企業:評判が高く、バリューや文化、業績、社会への貢献がある
  3. 優れた仕事:関心との合致、成長や出世の機会があり、意義がある
  4. 優れた報酬:仕事に見合った給与、福利厚生、手当や評価がある

 

意思決定の質とスピードを高める方法

組織の意思決定は小さなものであっても、積み重ねれば大きな影響を与える。しかし、会社における戦略的意思決定の質が概ね良好であると感じている従業員は28%にすぎない。これは、意思決定の質とスピードを向上したい企業にとって大きな改善機会があることを意味する。調査によると、変革に取り組めば意思決定のスピードが40〜50%向上し、会議に費やす経営者の時間を10〜25%削減し、一般管理費を5〜15%節約することができる。最も重要なことは、意思決定の質が35〜40%向上すると考えられることだ。

また、意思決定は、従業員の意欲にも繋がっており、意思決定の有効性と関与が従業員の定着率の重要な原動力になることがわかっている。

 

組織が些細な問題や細かいことに不釣り合いな注意を払う傾向を「凡俗法則」と呼ばれる。凡俗法則は、意思決定のスピードと質に影響を与える多くの機能不全の1つである。このような機能不全を回避する第1歩は3つの意思決定タイプを区別することである。

  1. 企業全体に影響を与える不定期かつ一か八かの意思決定
  2. 個人やチームに委任可能な反復的な決定
  3. 反復的、横断的な意思決定

 

優れた経営判断にはデータの測定と分析が不可欠である。但し、正しいデータを入手すれば、正しい意思決定を行うことができるわけではない。質の高い分析は、解釈し、評価し、意味を引き出す質の高い対話なしには、本来の価値に比べると意味がなくなることがわかっている。

対話は組織で懸案となる意思決定のすべてのタイプで重要である。Bタイプで個人やチームに意思決定が委任される場合、単に責任を負わせるだけでなく、誰に相談する必要があるかを明確にすることが重要である。Cタイプの意思決定でも、組織の垣根を越えて必要な調整を効率的かつ効果的に実現するために、対話は不可欠だ。

 

意思決定ではバイアスにも注意する必要がある。最も一般的で危険なもの次の3つである。

  • 確証バイアス:入手可能な情報の中から、自分の信念を裏付ける情報を重視し、否定する情報を無視する
  • 社会バイアス:他人がその決断をいかに好意的に見るかについて、過大評価する
  • 楽観バイアスで:可能な限り最良の結果が得られると期待する

 

意思決定におけるバイアスを最小限に抑えるための、実用的なツールは数多く存在する。

  • プレモータム:事前に失敗の要因となりうるものをリスト化し、逆算的に修正する
  • クリーンシート再設計:これまでの投資や経験を考慮せず、必要条件に基づいてシステムを開発する
  • レッドチーム-ブルチーム:ある決定に対して賛成派と反対派を割り当てて議論させる
  • 消滅オプション:好ましい選択肢を敢えて検討から外した上で再考する

これらの手法を使うこともできるが、単にチームに多様性を持たせることでも、同じように意思決定への効果を上げることができ、意思決定の質を50%以上も改善可能なことが調査で明らかになっている。