SHARP BRAIN たった12週間で天才脳を養う方法

発刊
2022年6月9日
ページ数
384ページ
読了目安
642分
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認知機能が低下するのを予防するための健康法
脳神経外科医が最新の科学のエビデンスをもとに、脳の認知能力が低下するのを予防するための方法をまとめた一冊。認知症やアルツハイマー病の仕組みなどを解説しながら、どのようにすれば脳を健康的にすれば良いのかを紹介しています。

脳の機能は年齢に限らず強化できる

加齢による記憶力の低下は避けられないものではない。脳の機能は、年齢や環境にかかわらず、生涯を通じて着実に強化することができる。かつては一般に、人が生まれながらにして持っているニューロンの数は決まっており、損傷した場合、修復することは不可能であると考えられていた。

しかし、現在ではそうでないことがわかっている。脳は一生を通じて可塑性を保ち、経験によって配線を変えることが可能である。また、適切な環境下であれば、新しい脳細胞を生み出すこともできる。脳に損傷を受けた場合でも、脳の他の部分によって損なわれた領域を補うことができる。知能もまた、固定されたものではないのだ。

 

脳の可塑性は双方向である。記憶力や心身の能力を向上させることと同じくらい、低下させることも簡単である。悪い習慣は、その悪い習慣をさらに強化する神経を作る。可塑性がネガティブな方向に働くと、神経の接続に有害な変化が起こる。ネガティブな考えや心配事を持ち続けていると、うつ病や不安神経症に関連する脳の変化が促される。繰り返される精神状態、つまり、どこに注意を向けるか、何を経験するか、どのように状況に対応するかが神経の特性となるのだ。

 

脳を健康に保つ5つの柱

生涯にわたって良好な認知機能を発揮するためには、次の5つの行動が基本となる。

 

①動く

体の健康と脳の健康との関連性は直接的で強力なものである。運動によって、脳細胞の増加、修復、維持が促進されることで、脳の健康が向上し、生産性が高まり、1日中注意力を保つことができる。運動は、脳の機能を向上させる生物学的効果があることが科学的に証明されている唯一の行動なのである。その効果は想像以上に緩やかな運動でも確認されている。

必要なのは、心拍数を高め、筋肉を柔軟にするような運動を習慣的に行うことである。理想的には、最低でも週5日、30分以上の有酸素運動を行うようにすること。30分の内20分以上は、心拍数を安静時の基準値よりも50%以上高くすることが望ましい。

 

②発見する

認知予備脳やレジリエンスを高めるために重要となるのは、社会との関わりを持つことや、刺激のある活動に参加するなど、できるだけ意欲的に日々を過ごすことである。目的意識を持って人生を送っている高齢者は、軽度認知障害やアルツハイマー病、加齢障害、心筋梗塞、脳卒中など、様々な病気になりにくく、長生きする可能性が高いことがわかっている。

新しいことは特別なことに限らない。絵画や写真撮影などの趣味を始めたり、新しいソフトウェアの使い方や言語を習得したりすることで、脳の機能を強化することができる。

 

③リラックスする

脳もリラックスを必要としている。睡眠不足は記憶力の低下を招くことや、慢性的なストレスが学習能力や新しい環境への適応力を低下させることが示されている。睡眠は、様々な形で体を補充する重要な段階であり、脳、心臓、免疫系、代謝系など、あらゆる身体システムに影響を与える。

十分な睡眠をとることで、頭が冴え、創造力や注意力が高まり、情報を素早く処理することができるようになる。逆に一晩の睡眠時間が6時間以下の場合、日中の覚醒レベルは約1/3も低下し、車などの機械を操作する能力も低下する。

 

④栄養をとる

食生活と脳の健康との関連性について、最近では科学的エビデンスが得られている。冷水魚(サーモン、マスなど)や全粒穀物、エキストラバージンオリーブオイル、ナッツや種子類、食物繊維の多い果物や野菜などを積極的に摂取する一方、糖分や飽和脂肪酸、トランス脂肪酸を多く含む食品を制限することで、記憶力の低下や脳の衰えを防ぎ、脳を病気から守り、その能力を最大限に発揮させることができることがわかってきている。

次の「SHARP」を忘れないこと。

S(Slash sugar):砂糖の摂取量を減らす
H(Hydrate):水分補給をする
A(Add):冷水魚などからのオメガ3脂肪酸の摂取量を増やす
R(Reduce):食事の量を減らす
P(Plan):事前に計画する

 

⑤人とつながる

脳機能を高めるのに効果的なのは、直接顔を合わせて、人と接することだ。多様な社会的ネットワークを持つことで、脳の可塑性が高まり、認知能力が維持されることが示されている。人と交流することは、ストレスを軽減し、免疫力を高めるだけでなく、認知機能低下のリスクを軽減することにもつながる。

社会的なつながりが少ない人は、睡眠パターンが乱れ、免疫系に異常が生じ、炎症が起きやすく、ストレスホルモン値が高い傾向がある。孤独感は心臓病のリスクを29%、脳卒中のリスクを32%増加させることが明らかにされている。また、孤独感は高齢者の認知機能低下を加速させることがわかっている。