デジタル機器そのものが子供に悪影響を及ぼす
双極性障害やADHD、ASDなど子供の心理社会的・神経発達的問題の増加は、日常生活でデジタルスクリーンにさらされる機会の増加と緊密に関連している。子供達は、家庭や学校でかつてないほどスクリーンを見る時間が増えているだけではなく、さらに幼い年齢層からスクリーンにさらされるようになった。現在、2〜6歳の子供たちは、1日に2〜4時間をスクリーンの前で過ごしている。この時期は、正常な成長のために健康的な遊びを十分に行うことが重要な時期である。
インターネット、ゲーム、スマホ、メールの爆発的な普及は比較的新しい現象であり、このようなテクノロジーの使用がもたらす影響は、まだ完全に解明されていない。一方で、「スクリーンそのものが本質的に有害である」と示唆する証拠が増えてきた。
心的外傷を伴う精神疾患を抱えた子供は、ストレスを感知すると、「一触即発」の状態に陥り、小さな身体が常に「戦うか逃げるか」の状態になる。この状態の特徴には、「感情的に反応する」「指示に従うのが難しい」「ちょっとした不満でキレてしまう」「すぐに興奮してしまう」などがある。
この「戦うか逃げるか」反応は、ゲームの時間がたとえ「わずかな量」であっても引き起こされる。精神に問題を抱える子供たちは、ゲームをすることで脳と身体を過剰に働かせ、神経症状や精神的な症状を悪化させている。この「戦うか逃げるか」反応は、ゲームだけでなく、ノートパソコンやスマホなどの他のスクリーン機器でも起こる。そして、これはどんな子供にも悪影響を与える可能性があることがわかった。
スクリーンタイムは、私たちの脳と身体に影響を与え、気分、不安、認知、行動に関連する様々なメンタルヘルスの症状を引き起こす。この影響を「デジタルスクリーン症候群」と名づける。これは、精神疾患がなくても、精神疾患とそっくりの症状が起こったり、基礎疾患を悪化させることがある。
デジタルスクリーン症候群は本質的には「調節不全の1つ」である。双方向のデジタル機器は非常に刺激的であるため、神経系を「戦うか逃げるか」モードに移行させ、様々な生物学的システムの調節不全や混乱を引き起こす。
このストレス反応は、ゲームをしている時のように、すぐにはっきり現れることもあれば、スクリーンを繰り返し見ている内に、徐々に現れることもある。メールやSNSの頻繁な利用など、スクリーン上のやりとりを繰り返すことで徐々に生じてくる場合もある。
この症候群を考える1つの方法は、デジタル機器をカフェイン、アンフェタミン、コカインなどの「ドラッグ」と見なすことだ。スクリーン機器を使うと、身体が高揚して集中力が高まり、その後に「クラッシュ」が起こる。このような神経系への過剰な刺激は、他の覚醒剤と同様、睡眠障害など身体に様々な影響を及ぼす可能性がある。
研究結果では、「すべてのスクリーン活動」が、神経系に不自然な刺激を与え、悪影響を及ぼす可能性があるとわかっている。そして、一般的な考えとは異なり、「内容」よりも「量」が問題となり、デバイスを操作する「双方向性スクリーンタイム」が、テレビや映画などの「受動的スクリーンタイム」よりも、より多くの機能障害を引き起こす。
よくある誤解の1つが、調節不全の原因となるのは暴力的なゲームだけでなく、教育的なゲームや、パズルのような一見良さそうなゲームも悪影響となることが知られていないことだ。そして、多くの子供は依存症の有無にかかわらず、デジタルスクリーン症候群の症状を示すし、わずかな時間スクリーンに接するだけで、過剰な刺激を受けて調節不全になる子供もいる。
医学界では既に、スクリーンタイムが学業、感情、睡眠、行動、身体的な健康問題などへの悪影響と関連していること、さらにこれらの悪影響が長期にわたって続く可能性があることのはっきりした研究結果が出ている。
デジタル脳回復プログラム
デジタルスクリーン症候群は、デジタル機器の使用を厳しく制限することで改善される。
第1週目:子供の成功を準備する
中途半端な気持ちでプログラムを行っても、効果は期待できないし、子供の癒しと成長を妨げることになりかねない。リセットで解決したい問題点を明確にし、準備をする。
第2週目:回復のためにプラグを抜く
計画を実行する。子供が禁断症状に陥っている可能性があるが、子供はすぐに順応する。
第3週目:子供の脳をゆっくり休ませる
睡眠が深くなり、不自然な刺激が減ることによって、子供の脳内化学反応やバイオリズムが正常化に近づく。
第4週目:子供の脳を癒やし、再生させる
最も深刻な症状が軽減または消失していても、気を緩めないように気をつける。