働く人のためのメンタルヘルス術

発刊
2022年3月11日
ページ数
240ページ
読了目安
210分
推薦ポイント 2P
Amazonで購入する

Amazonで購入する

推薦者

心の水位が下がった時の対処法
サラリーマンから精神科医に転身し、多くの会社の産業医も務める著者が、うつなどのメンタル不調になった時の状態や回復するための方法などを紹介しています。
心に不調をきたした場合、まず何をすればいいのか。クリニックの選び方から、向精神薬の基本まで、メンタルヘルスの知識が身に付きます。

心の水位が下がっていないかチェックする

メンタル不調には、うつ、抑うつ状態など、色々な呼び方があるが、そうした心の水位が下がっている状況とはどういうものなのかを理解することが大切である。

精神的なストレスや肉体的なストレスで、脳がうまく働かなくなっている状態が、うつと言われる。セロトニンなど神経伝達物質の枯渇によって、心の水位が下がってしまっているということである。多くの場合は、心の不調の前に、体が悲鳴を上げる。人によって、体が出す疲れのサインは様々で、頭痛や耳鳴りがだんだんひどくなったりする。

体が疲れのサインを出しても、頑張り続けて、ある限界値を超えてしまうと、心の方に症状がじわじわと影を落としてくる。メンタル不調はそんなイメージで起こる。

 

メンタル状態、抑うつ状態になっているのかどうかチェックするには、次の4項目が2週間以上続いているかどうかに注目する。

  1. なんだかうつうつとしている
  2. 最近、大好きなことに、楽しんで取り組めていない
  3. 3大欲求が弱くなっている
  4. おっくう感があって、やる気が起きない

4つの状態が一時的に出ているのは、抑うつ的とは見なされない。症状があって、さらにそれがある程度の期間にわたって持続しているかで判断することになる。

 

4つの項目が2週間以上続いているなら、立ち止まって考えた方がいい。仕事の量、仕事の質(やりがい)、人間関係の3つについて考える。その上で、工夫することで変えられそうか、変えられないかを探っていく。

  1. 仕事の量 → 多すぎるなら減らせるか?
  2. 仕事の質 → やりがいを持てるようにできるか?
  3. 人間関係 → スムーズにできるか?

これらが望めないなら、心の水位は、このままにしておいても上がるとは期待できないと考えるしかない。

 

心の水位が下がった時の対処法

心の水位が下がる状態になる原因は、仕事の量が多すぎることや、人間関係などで、大きなストレスを抱えたことである。それによって、脳疲労を起こしている。脳科学的には、神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリン、ドーパミンなどの不足・枯渇が原因だろうと言われている。

 

まず初めの第1段階では、ちゃんと休むことが必要である。心の水位が落ちている時は、何もできないし、気力もないし、横になっていたいものである。それでいい。
この段階は、ひたすらうみを出し切るようなもの、いわばデトックスである。回復の右上がりの曲線にしっかりと乗っていくためには、初めのこの時期に、グダグダし、ダラダラすることが必要である。期間は1ヶ月から長くても2ヶ月ぐらいで、ちゃんとダラダラできたら、その期間は短くなるかもしれない。

 

メンタル不調は、まず心身ともに休ませてあげるのが第一である。こういう時は、食欲もないし、食べる気力も起きないのが当たり前。食事は1日1食が食べられれば上出来である。運動しなくてもいいし、お風呂にも入らなくてもいい。今はできないんだと、休むことを納得するのが、初期段階の第一優先事項だと覚えておくこと。

 

職場でメンタルヘルスを損なった場合には、怒りの感情が残っていて、そればかりを考えてしまうことも少なくない。この段階で大事なのは、会社を辞めるとか、訴えるとか、急いで結論を出すのをやめることである。優先順位は低いから、後回しにする。

真面目な方ほど、何もできないなんて人間として駄目じゃないかと思ってしまうし、ダラダラしていたら、どんどんできなくなっていくのではと焦る。心の水位が下がった状態から上がってくる時のポイントは、不安と焦りとの戦いである。焦る気持ちを制して、諦めるのが前半戦のキモである。

 

心身を休ませると、不足していた神経伝達物質が出てくるようになると考えられている。セロトニンの量が少しずつ増え、ノルアドレナリンの量、ドーパミンの量も少しずつ増えていく。神経伝達物質が、ほぼ枯渇している状態からスタートし、薬の力も加わりながら、じわじわと働きが戻ってくるという感じである。

初期には、セロトニンが不足することによる不安やイライラなどの症状の改善を目指す。その次に、ノルアドレナリンが不足することによる意欲がないという症状の改善を目指していき、最後にはドーパミンが不足することによる快楽への欲求がないという症状の改善を目指す。

 

しっかり休み始めると、1ヶ月ぐらい経った頃に、「だいぶ戻ってきた。休むっていうのはこういうことかな。色々ごちゃごちゃ考えなくなってきた」という感じになる。

しっかり休み切ると、休むことに飽きてくる。それと同時に、少し気持ちの活動度が上がってくる。この第2段階では、「なにかしようかな」「以前やっていたことに、また取り組んでみようかな」という気持ちになる。第2段階の初めのうちは、頑張らないことを徹底する。

何かをやり始めていると、徐々に持続力や集中力が戻ってくる。第2段階は1〜3ヶ月ぐらい。後半には、自分の好きなこと、興味関心のあることがだいぶできるようになる。