リモート・マネジメントを実現し自由になる
コロナ禍によって、リモートワークが普及したことにより、「課長」を取り巻く環境が大きく変わろうとしている。コロナ前までは、メンバー全員が出社するのが当たり前だったから、その仕事ぶりや進捗状況を直接確認できたし、気軽にコミュニケーションを取ることもできた。しかし、リモートワークでは、目の前からメンバーが消え去り、いわば目隠しをされた状態でマネジメントをしなければならなくなった。
ただ、リモート・マネジメントという「難問」に対応できるようになった時、管理職は大きな可能性を手にすることができる。これまで管理職は、チームの活動を管理するために、就業時間の多くを職場で過ごすこと余儀なくされてきたが、リモート・マネジメントができるようになれば、その制約から自由になれる。
そして、自由にフットワーク軽く動き回ることによって、社外人脈を開拓し、そこで手にした「資産」を会社やチームに還元することによって、自分自身の「人材価値」を格段に高めることができる。それは「課長2.0」と呼ぶにふさわしい進化である。そこには、私たちの能力を高め、人生を豊かにしてくれる「出会い」が必ずある。
メンバーが自走する状態をつくる
リモートワークにおいては、メンバーの行動を細かく管理したり、コントロールしたりするのは、不可能である。それよりも、「自走」できるメンバーを育てて、彼らが全力で走れるようにサポートすることが重要である。そもそも、管理職は「自分の力」ではなく、「メンバーの力」を借りて結果を出すのが仕事。主役はあくまでメンバーである。
「チームを良い状態に保つ」ことこそが、管理職の仕事である。「良い状態」とは、メンバー1人1人が組織目標を達成することに強い意欲を持ち、チームワークを発揮しながら「自走」する状態のこと。メンバーが「自走」することが重要なので、メンバーに何らかの行動を強制するようなマネジメントは意味がない。
人間は誰かに強制されて、モチベーションを高めることができるような存在ではない。だから、管理職にできることは、コミュニケーションを通じて、メンバー1人1人のモチベーションの在り処を探し当てて、それを最大限に発揮してもらえるように働きかけることだけである。
メンバーを信じ、信頼関係を構築することから始まる
メンバーが自走する状態になるように、メンバーに働きかけることが管理職の果たすべき役割である。管理職の働きかけにメンバーが応じてくれるようにするためには、その前提として不可欠な「信頼関係」を構築する必要がある。信頼関係を築くことができれば、一気に状況は変わる。なぜなら、「この人なら何でも相談できる」「この人は自分の力になってくれる」という信頼感をもてる管理職に対しては、メンバーの方から積極的にホウレンソウしてくれるようになるからである。特にリモート・マネジメントでは、この信頼関係がなければ管理職としてまともに機能することは不可能だと考えておいた方がいい。
では、どうすればメンバーからの信頼を勝ち取ることができるのか。それには「まず、管理職がメンバーを信頼する」ことが大切である。なぜなら、メンバーは管理職をよく観察しているから、管理職の自分たちに対する「不信感」に敏感に反応するからである。そして、そのような管理職にネガティブな印象を持たれないように、彼らも警戒する。そこには、疑心暗鬼が渦巻く関係性しか生まれない。メンバーが信頼を裏切るようなことをする可能性も織り込んだ上で、「信頼する」と決断する。管理職がメンバーの裏切りを警戒しすぎると、いつまでたっても信頼関係を醸成することはできない。
大切なのは、まずは「この管理職は自分を見捨てたりしない」と理解してもらうこと。その信頼感があるからこそ、管理職の指導に耳を傾けてくれるようになり、いずれ成長の糸口をつかむタイミングが訪れる。そして、そのように成長するメンバーが増えることでこそ、組織は持続的に成長していく。管理職として長期的に成果を出すためには、たとえ不利益を被ることがあったとしても、それを甘受してでも「信頼」を守り抜くべきである。
「ステージゼロ」を大切にする
話しかけやすい存在か否かは、管理職として機能するかどうかを大きく左右するポイントである。メンバーにとって声をかけにくい存在だと思われていれば、ホウレンソウもなかなかしてくれないし、心も開いてくれない。
そのために大切なのは「ステージゼロ」を大切にすることである。「ステージゼロ」とは、具体的な仕事に入る前段階の、日常的な立ち居振る舞いやコミュニケーションのこと。「話しかけやすい存在」になることこそが、優れたマネジメントを実現する第一歩である。
重要なのは、メンバーが話しかけてくれることを「歓迎」する気持ちを毎回伝えることである。そして、メンバーに「この管理職に話しかけても、不愉快な気持ちにされない、ポジティブな気持ちになれる」といった感覚をもってもらうことができれば、メンバーとの距離は自然と近づいていく。