コミュニケーションのフェーズごとに手段を考える
仕事におけるコミュニケーションで重要なのは「分かち合う」ことである。他者との物理的な距離が離れているからこそ、事務的に伝達すること・伝えることより、情報だけでなく意見や感情を相手と分かち合うことが大事である。
どんな仕事を進める上でも、コミュニケーションに大きく影響するのが「仕事のフェーズ(段階)」と「相手との関係性フェーズ」である。これを5つのフェーズに分けると、どのフェーズにおいて、どのコミュニケーション手段の方が適しているかという考え方ができる。
①相互理解フェーズ(対面◯ リモート△)
関係構築期において重要なのは、感情を通わせる相互理解と信頼構築である。このフェーズにおいては、可能であれば対面でのコミュニケーション機会を設ける方が望ましい。会って話すことによる緊張感と安心感が、表情や立ち振る舞いなどの非言語コミュニケーションも含めて、互いを知るということを助けてくれる。
関係構築期もリモートで行わなければならない時は、コミュニケーション「頻度」と「密度」を上げること。最初の内は短時間でもいいので毎日コミュニケーションの機会をつくることが望ましい。
②前提共有フェーズ(対面◯ リモート△)
関係構築期と同時期に並行して進める。重要なことは「前提共有」とは「前提条件や情報は、人によって異なっていることを理解する」ということから始まる点である。前提の違いを理解した上で、この後のコミュニケーション・フェーズを円滑に進めていくために重要なことは、この仕事やプロジェクトの目的、ゴールを共有することである。
このフェーズにおけるリモートのポイントは「仕事上のゴール・目的」と「それぞれの役割」の可視化と共有化である。ゴールや目的ができるだけ具体的に、関係者の誰が見ても理解できるように言語化されていること、できるなら測定可能な数値化されていることである。さらに各自の期待される役割も言語化され、共有化されているのが望ましい。
③情報共有フェーズ(対面△ リモート◯)
仕事上のコミュニケーション・フェーズにおいて、情報共有と認識共有のフェーズが、最も長く中心となる。前フェーズまでの関係構築と前提共有がどれだけしっかりできたかで、コミュニケーションの円滑さが変わってくる。
情報共有フェーズは、デジタル業務環境が整っていれば、リモートの効率が良く、各種判断や意思決定のスピードも向上するため、最も業務効率化が見込める。
④認識共有フェーズ(対面△ リモート◯)
認識共有は、情報共有フェーズの中で生じる。外部環境が日々変化しているので、一度決めた目標や目的そのものを見直さざるを得ないこともあるし、あらかじめ共有していた役割や手段が変更になることもあり得る。そうなると、フェーズ②で固めた「前提」が変わってくる。リモート状態では、この変化の認識共有が非常に重要になる。前提が変わった際の認識が共有されないと、フェーズ②自体が無駄になり、リモートコミュニケーションに綻びが生じる。
前提の変化に対応するためには、フェーズ③の中で、前提に変化が生じたことを関係者間で認識合わせをする機会を設けておく必要がある。変化そのものは予測が困難なため、定期的に認識を合わせる機会を設定しておく。
⑤結果共有フェーズ(対面◯ リモート△)
結果共有は、仕事の節目における結果の振り返りと共有を行うフェーズである。このフェーズは、感情的な理由で対面が望ましい。振り返りの深さも、現時点では対面の方が優れている。結果共有だけを事務的に行うこともできるが、コミュニケーションの観点から見れば、非言語コミュニケーションも含めて、感情的な側面の振り返りを行うことも大切である。
結果共有フェーズにおけるリモートのポイントは「全員参加」と「心理的安全性」である。関係者全員が結果共有コミュニケーションに参加し、発言をしている状態をつくることが大切である。そのためには、心理的安全性が重要になる。
リモートコミュニケーションで大事なこと
リモートコミュニケーションで大事なことは、自らの考えや意思を持ち、発信することである。テレワーク前提になれば、物理的に一人で行動することが多くなる。「誰かが気をつかってくれるだろう」という発想では、パフォーマンスを上げることはできない。
リモートコミュニケーションでは、自律した思考と行動が求められる。求められる中で、自らの「律」を磨いていくことで、自律性を高めていくことができる。自律性を持った上で、必要になるマインドが「目的思考」と「相手思考」である。リモートコミュニケーションで多様な他者と共に働いていく上で、この2つを持っていないと、独りよがりなコミュニケーションになってしまう。