モチベーション3.0とは何か
コンピューター同様、社会にも人を動かすための基本ソフト(OS)がある。
モチベーション1.0:生存を目的とする人類最初のOS
モチベーション2.0:アメとムチ=信賞必罰に基づく、与えられた動機づけによるOS
モチベーション3.0:自分の内面から湧き出る「やる気」に基づくOS
生き残るという生理的動因によるOSをモチベーション1.0と呼ぶ。人は複雑な社会を築くに至って、単なる生理的動因だけでは対処できなくなった。
そこで人を動機付ける二番目のもの、報酬を求める一方、罰を避けたいという動機付けモチベーション2.0が生まれた。
モチベーション2.0を基盤とした管理手法は、労働者を機械部品のように扱い、優秀な者には見返りを与え、成績の良くない者には罰を与えたが、産業革命以後、役に立ってきた。単純労働に対しては、モチベーション2.0は有効であった。
しかし、アウトソーシングが進み、コンピューターが人間の変わりにルーチンワークをこなす時代になり、仕事には芸術的で、感情移入が必要な非ルーチンワークが増えた。そこでモチベーションは極めて重要な問題となった。自分の内面から湧き出る「やる気」、モチベーション3.0が必要な時代が来ている。
アメとムチの致命的な欠陥
①内発的動機づけを失わせる。
②かえって成果が上がらなくなる。
③創造性を蝕む。
④好ましい行動への意欲を失わせる。
⑤ごまかしや近道、倫理に反する行動を助長する。
⑥依存性がある。
⑦短絡的思考を助長する。
モチベーション3.0の要素
①自律性
人間の性質は根本的に自律的(自己決定)であるため、これを呼び起こす必要がある。自律性は、個人のパフォーマンスや姿勢に強い影響を与える。課題や時間、方法、チームを確実に任せることが目的に至る早道である。
②マスタリー(熟達)
マスタリーとは、何か価値あることを上達させたいという欲求である。モチベーション3.0では「積極的な関与」を求める。それだけが物事に熟達することを可能にする。
マスタリーは心の持ち方次第である。能力は固定的ではなく、無限に向上が可能だと理解し、意図的な訓練と努力によって身につけるものである。
③目的
人間は本質的に人生の意義や目的を探すものである。自分以外の人、もの、社会などの利益に貢献する永続的な目的を求める。
高い成果を上げる秘訣は、人の生理的欲求や、信賞必罰による動機づけではなく、第三の動機づけ、「自らの人生を管理したい」「自分の能力を広げて伸ばしたい」「目的を持って人生を送りたい」という人間の根源的欲求にある、と科学で証明されている。