ザ・チェンジ・メイカー ―世界標準のチームリーダーになる49のレッスン

発刊
2016年1月21日
ページ数
260ページ
読了目安
251分
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ルールを打ち破れ
シリコンバレーの起業家として活躍し、現在はベンチャー支援に携わる著者が、ルールを打ち破り、イノベーションを起こすための考え方を説いた一冊。

ルールはバカのためにある

日本人の多くは、ルールという言葉を「誰もが、当然のように守らなければならない常識」のような意味でとらえている。しかし、アメリカ人のほとんどにとって「rule」はカチンとくる言葉である。「rule」は、人々を一律に矯正するための規則、支配を示す。欧米ではルールは「バカのためにある」とまで言い切る人も少なくない。時代にそぐわなければ、多数の利益に沿わなければ、どんどん例外を認め、常に改変されるべきが「rule」である事に異論のある外国人は少ない。日本人が古いルールに固執している間に、世界のルールは急速に変容している。グローバル時代を生き抜く力を身に付けるために、私達はまず、ルールという言葉の認識を改める必要がある。

 

逆境を歓迎せよ、好機は危機の中にのみある

人は前例にない知恵を振り絞る事ができる。前例に頼っていては解決できない問題があるからこそ、物事は前に進む。重要なのは、マイナスをプラスに変える発想である。危機の中にこそ、現状を大きく変化させる気づきがあると発想するか。逆境を歓迎する人こそが、次の時代の扉を開ける「チェンジ・メイカー」の卵となり得る。

 

ルールがあるのは、信頼がないからである

生活におけるテクノロジーの重要性が増し、情報の流通が発達した現代においては、どんな個人も、社会や組織の集合体に多くを依存して生きなければならない。そこに必要とされるルールもまた、大きく変容する必要が生じている。新しいルールの大前提にあるべき概念は「信頼」である。ルールが内包する社会の規模が全世界へと拡大し、そこに生きている人の個性や常識が多様になればなるほど、他者を「信頼していない」事を前提にしたルール作りの限界が見えてくる。予測外の行動を無限に妄想してそれを制限するという終わりのない回廊を未来永劫にわたりさまよい続けるか。あるいは、全世界の隣人たちと互いに信頼し合い、それぞれが最大の能力を発揮できる仕組みを設計するのか。選ぶべきは明らかである。

 

100点満点を追求する事は、失敗の最たるもの

すべてのルールは、それを定めた時にはもう陳腐化が始まっている。だからこそ、ルールの不備を補うためにルールはその解釈を改め続ける必要があり、状況に応じてルールそのものを自由に変えていかなければならない。ルールを作る人間が、永久に変える必要のない100点満点のものを志向する事は危険である。完璧なルールは完成するまでに膨大な時間がかかり、運用にも余計なコストがかかり、ルールの内側にいる人間には過剰な束縛を強いて自由を許さないからである。

 

より重要なのは、今は目に見えないセカンダリーエフェクトである

新しい技術や発想は、孤島に突然変異的に生まれるものではない。数多の成功と失敗を手本にして、改善を繰り返した努力の循環の先に、必然的に創造されるものである。物事の負の面にばかり目を向けて、批判する事は簡単である。しかし、危険ならばどうすれば危険ではなくなるのかというルールを話し合うべきである。「斬新すぎる」「実現は無理だよ」「前例がないから」そう感じさせられた、未成熟で幼稚に見える発想こそが、重要なイノベーションの種なのかもしれない。

 

マイクロの失敗を歓迎し、マクロの失敗を駆逐せよ

出世する日本人の共通項に「失敗しない人」というものがある。年功序列型の縦割り社会では、人事の評価制度は主に減点制。良くも悪くも目立たずに、与えられた役割をソツなくこなしていく事で年次に応じた昇進昇級が与えられるという現状は変わっていない。しかし、個が失敗しないからこそ、組織は自己批判の機能と機会を失う。全体が失敗している事に気づきもしないまま、失敗かどうかを判断する人もいないまま、単独で失敗のない個をそれぞれ磨き直す事でしか、対策できない。

マクロで失敗しない組織をつくるために重要になってくるのは、マイクロでの失敗回数を増やす事である。不確定要素の多い世界市場で成功するためには、誰よりも早く失敗を繰り返すしかない。

 

イノベーションに苦労する企業に共通する3つの問題

①内部留保が多すぎること。
海外ではリターン・オン・キャピタル(ROC)は企業の価値を測定するための、非常に重要な指標である。世界的な認識で言えば、お金は常に動かし、活用するもの。日本人の貯金癖は、他の国のビジネスではありえないくらいの非常識である。まずは絶対的にイノベーションに投資する金額と覚悟が少ない。

 

②社内ベンチャーを従来の評価制度の直下に統制しようとすること
ベンチャーは、限界を超えた200%の集中力を発揮して、目先の小さな儲けよりもっと遠くを見続けていないと成功しない。しかし日本の多くの企業では、せっかくのアイデアも、既存事業部に割り振られるのが当たり前。通常業務と兼務しての「ながら」仕事で、注げる力は全力の30〜50%。さらには、人事評価に悪い影響が出ないよう、数ヶ月スパンでの売上に一喜一憂している状況では、ベンチャー的なチャレンジ精神はスポイルされてしまうのが必然である。

③投資の成功経験が少なすぎること
中途半端に投資して、腐らせて終わる例が多い。イノベーションの始まりとは、あくまでも「種」である。その種に合った土、気候、水、肥料を与え、だんだん伸びてきたら適切に剪定して、1年経ったらまたその種を収穫して、植え直して、だんだん大規模になっていく。イノベーションとは、そして投資とはそういうものである。