カスタマーサクセス・プロフェッショナル

発刊
2021年3月24日
ページ数
272ページ
読了目安
527分
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カスタマーサクセスの教科書
サブスクリプション型のビジネスが増加している中、カスタマーサクセスの重要性が増している。顧客にプロダクトやサービスを提供するだけでなく、顧客の課題をどのようにしてプロダクトで解決していくかという、契約成立後から始まる顧客支援が重要である。カスタマーサクセスの役割や求められるスキルなどを紹介しながら、カスタマーサクセスの実践方法を書いています。

カスタマーサクセスが不可欠な時代に

カスタマーサクセスマネジメントは、21世紀の現代に最も注目され、最も将来性を期待される職種だ。特にサブスクリプションモデルのビジネスを展開する企業にとって、カスタマーサクセスは必要不可欠だ。デロイトの調査によると、カスタマーサクセスを戦略的優先事項とする企業は、そうでない企業に比べて業績の伸びが大きく、契約更新率が2桁%改善した企業も約2倍にのぼる。

優秀なカスタマーサクセスチームがいれば、新規アカウントを開拓するよりもはるかに効率的に既存アカウントから収益を生み出せるので、企業価値を最大化することが可能だ。カスタマーサクセスマネジャーがカスタマーと良い関係を構築して価値を提供すれば、事業は大きく成長する。

 

ビジネスの前提が変わり、カスタマーの期待値が変わった。取引が無難に完了すれば満足するカスタマーは減り、みな結果を求めるようになった。プロダクトが約束する機能だけでなく、カスタマーの期待を満たす価値を提供しなければならないことにベンダーは気づき出した。

カスタマーサクセスを追求する流れは、SaaSやサブスクリプションビジネスに端を発したかもしれないが、今やカスタマーサクセスはあらゆる産業や事業分野に浸透しつつある。

 

カスタマーサクセスの成熟によって収益が大幅に上昇する

組織が成熟するにつれ、カスタマーのリテンション率の向上、契約拡張、口コミ紹介の増加、チーム全体の効率化という4つのキードライバーが事業成長において重要となる。カスタマーサクセス実務の成熟度には4つのステージがある。

 

①リアクティブ:ケースバイケースでエスカレーションを管理

②洞察&アクション:チーム全体がデータに基づいて行動

③アウトカム:カスタマーに対しプロアクティブな成果提供を大規模に展開

④トランスフォーメーション:会社全体がカスタマーサクセスの使命を中心に結集し連携

 

チームがステージを1つ上がるたびに、ネットリテンション率(NRR)は目に見えて上昇していく。「リアクティブ」から「洞察&アクション」に上がると、NRRが3%上昇。「洞察&アクション」から「アウトカム」に上がると4%上昇。そして、「アウトカム」から「トランスフォーメーション」に移行すると、上昇率は11%もアップする。

SaaS企業では、リテンション率が5%上昇するだけで、利益が25%から95%上昇する。カスタマーサクセスは、ビジネスの必須事項になりつつある。

 

カスタマーサクセスマネジャーの役割

カスタマーサクセスマネジャーにとって最も重要な評価項目は、リテンション率、すなわち、ある期間に維持できたカスタマー数の割合、またはそのカスタマーとの契約に基づく収益額の割合だ。やみくもにカスタマーを繋ぎ止める行為がリテンションではない。

 

カスタマーに取引を継続したいと思わせること。契約直後からカスタマーを啓発し、関係を築き、プロダクトを活用してもらうことが極めて重要だ。

 

優秀なカスタマーサクセスマネジャーの必須スキル

カスタマーサクセスマネジャーに求められるコアコンピテンシーは次の3つである。

 

①知識レベルの高さ

何よりまず必要なのは、業界、カテゴリー、プロダクトに関する高いレベルの知識だ。経験に基づいて話ができれば、信頼できるアドバイザーとしての説得力が増す。

 

②課題解決能力

カスタマーのビジネス固有の課題に対する深い理解が必要だ。的を射た質問を山ほどして、そのレベルに達すること。彼らの課題解決に最適なプロダクトの利用方法を、カスタマーが考えあぐねていることもある。

 

③カスタマーとの関係構築

最も重要なのは共感力を高めることだ。カスタマーサクセスは、概念的にも行動面でも「ヒューマンファースト」とされる。カスタマーサクセスマネジャーは、意識的にカスタマーに手を差し伸べ、相手の立場で考えなければならない。

 

これら3つが組み合わさればとてつもないコンピテンシーとなる。プロとしての力量は、カスタマーを深く理解すること、そしてこれらのコンピテンシーが与えるインパクトを理解することにある。

 

カスタマーに共感し関係を構築する方法

①内省を重ね自己認識を高める

②目的意識・正確性・説得力のあるコミュニケーションを心がけ信頼されるアドバイザーになる

③信頼を醸成・強化するために、継続的にフォローアップする

④わからない時の返答の仕方を知る(正直になる、知っていることを伝える、質問を賞賛する、次のステップを明示する)

⑤困難な状況下でこそ目的を意識して建設的に学ぶ

⑥人間ファーストという共感レンズで相手を深く理解する

⑦カスタマーと1人の人間として接する