「顧客消滅」時代のマーケティング ファンから始まる「売れるしくみ」の作り方

発刊
2021年2月27日
ページ数
224ページ
読了目安
241分
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コロナ禍でも売上を伸ばす方法
コロナ禍でも売上が落ちなかったり、むしろ売上が伸びた事例などを紹介しながら、コロナ禍でも売れる仕組み作りを紹介しています。いかにファンをつくるかという、今後も普遍となるマーケティングの鉄則を解説しながら、コロナ禍に負けないビジネスの要諦が書かれています。

選別消費の時代

コロナ禍の中、顧客は「選別」を行っていた。今まで何となく惰性で行っていた店に行けなくなった結果、「別にあの店に行く必要はない」という選択を行なった。あるいは「この商品は別になくても困らない」と考え、買うのをやめるという選択を行った。その結果が、「いつまでたっても顧客が戻ってこない」の正体ではないか。

 

今は「選別消費」が進んでいる時代である。選別消費とは「自分がコスト(お金、時間、労力など)をかけるべきもの、使うべき先をシビアに選択・選別する消費」のこと。元々、増税や災害などの際には、この選別消費の意識が高くなるが、今回はコロナによってこの選別消費の意識が大いに高まった。

 

心が豊かになる商品はコロナでも売れている

世の中は心の時代に向かっており、モノではなく「心の豊かさ」を消費したがる。モノを買うのは、モノそのものが欲しいのではなく、「心の豊かさ」を消費したがるからだ。店などに行くのも「心が豊かになる」からである。こうしたことに対して、人はお金に糸目をつけない。「心の豊かさ」の消費とは、人がより良く生きるためのエネルギーチャージだ。

 

コロナ禍でも「心が豊かになる商品」の売上はほとんど落ちなかった。あるいは落ちてもすぐに回復した。一方、生活必需品はコロナ需要さえ起きた。問題は、そのどちらにも属さないものだ。つまり、「心が豊かになるわけではないが、生活必需品でもないもの」。今回、売上が戻らなかったものの多くは、このカテゴリーに属するものであった可能性が高い。

会社や店から顧客が消え、それが戻ってきていないのであれば、その原因は、提供しているものが「心が豊かになる」わけでもなく「コスパがいい」わけでもない、中途半端なものになってしまっている恐れがある。

 

顧客消滅時代に負けないビジネスの要諦

重要なのは、フローのお客(一見客)ではなくストックの顧客(常連客)を持っていることである。コロナショックの影響を受けなかった企業や店舗は、ストックされた顧客を保持している。

フロー型のビジネスの象徴が、今回大打撃を受けることになった「好立地での商売」だ。駅前やエキナカ、SC、繁華街の中心地など、人通りというフローがなるべく多いところに出店し、常に一見客が途切れないようにする。こうした商売は、比率として常にフローの顧客が多いため、フローが途切れると危機に陥る。

一方、ストック型のビジネスにおいては、既存顧客を徹底的に重視する。フローも大事だが、それよりも既存顧客と継続的にコミュニケーションを取り、長く付き合っていくことを目指す。立地は必ずしも重要ではない。だから、フローがしばらく途切れてしまっても生き残ることができる。

 

「顧客消滅」時代にビジネスを持続していくためには、いかにフロー型からストック型に変えていくかが鍵を握る。重要なのは、多くの一見客をストックしようとするかどうかである。

コロナショックによる自粛期間中、企業の明暗を分けたのが「顧客リストの存在」だ。ストックとしての顧客を持ち、顧客へのアプローチ手段(顧客リスト)を持っていれば、顧客が消滅するという危機が起きても何らかの手が打てる。

 

ファンダムをつくれ

熱狂的なファンたちと、その人たちが作り出す世界のことを「ファンダム」と呼ぶ。顔の見えない「マス」を狙うのではなく、「ファンダム」を作り、育てていくことが、「顧客消滅」時代のマーケティングの核心である。

 

その第一歩は、とにかく顧客・お客とつながることだ。アンケートを活用するなり、会員制度を作るなり、LINE、DMなど方法は何でもいい。まずは「連絡先を集める」「アプローチ手段を整える」ことがスタートとなる。

その上で、顧客リストを温める。例えば、有益な情報を定期的に提供したり、無料イベントに招待したりする。そうして仲良くなった後に「実はこんな商品があるのですが」とお勧めする。それによってやっと、ごく一部の人が購買行動を起こしてくれるのである。

 

顧客リストを温めた先にあるのが「ファンダム」の形成だ。ファンダムとは、「ファンコミュニティ」「会員組織」と言い換えることも可能だ。最初にしておくといいのは、「仕組み」の設計だ。ただ闇雲に顧客にDMやメールを送ったところで効果は薄い。どのようなメッセージを発すれば、顧客はどのように感じ、どのような行動を起こすか。顧客の心と行動に向け想像力を働かせる。ビジネスはすべて、人の心と行動によって決まってくる。