人を生かすマネジメント

発刊
2021年3月19日
ページ数
183ページ
読了目安
177分
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推薦者

芸能界でタレントをマネジメントするために大切なこと
ホリプロで長くタレントのマネジメントに携わってきた著者が、そのマネジメント術と心得を紹介している一冊。そもそも売れ続けることが難しく、スターになれる人が一握りの業界で、マネージャーはどのように仕事をすべきか、様々なタレントとのエピソードをもとに書かれています。

タレントが成功するのはマネージャーの腕次第

タレントは、テレビやラジオ、雑誌といったマスコミへの出演によって、知名度を上げていくが、実質的に日銭を稼ぐのは地方の歌謡ショーやイベントなど、マスコミに載らない仕事である。営業が色々なイベントを仕掛けて会社の利益に貢献する、というのが芸能プロダクションの売上の構図だった。

タレントを成功させるのも、失敗させるのも、マネージャーの腕次第。マネジメントは、タレントの人生を左右する大仕事である。マネージャーは、自分のタレントをどうしたら一番生かせるかを常に考えて仕事を取ってくる。タレントは、マネージャーは自分にとって絶対にプラスになる仕事しか取ってこないと思ってどんな仕事もやる。これが理想的な関係である。

 

タレントとマネージャーの関係で大切なのは、その子に対して、誰が夢中になって一生懸命やっていくかということ。間違いなく、情熱がないとタレントを育てられない。「この子を何とかしたい」という想いしかない。それがセールスする時の説得力になる。

そのため、多数決でみんなが支持する子よりも、この子は自分がこのコンセプトで、こういう形でプロデュースしたいんだと言い切る人間がいるかどうかが重要である。10人が10人「いい」と言ったから、必ず売れるというものではない。

誰がその子に全身全霊を傾けてセールスをしていくか。その情熱が、人と話した時に伝わって、相手の心を揺さぶり「使ってみようか」という判断に結びつく。

 

腕が良くても必ずしも売れるわけではない

どんなにマネージャーに情熱があっても、売れないことはある。それでも「この子をスターにしたいんだ」と頑張る原動力は「この子は世間にアピールできる」と信じることである。どんなにマネージャーの腕が良くても百発百中はない。ホリプロ創業者が言っていたのは「二割五分の確率で当たればいい」。ホリプロでその確率なので、他はそれどころではない。元々才能がある子が集まって、マネジメント力のある組織体があって、リードするスターがいて、それでも二割五分なのである。あとは時代に合っているかどうか。時代からの要請によって売れる子はいる。

 

マネージャーの情熱がタレントとの絆を結び、スターへの成功率を押し上げる。反対に、本人の信用をなくしたらタレントは離れていく。一旦そういう関係になってしまうと、何をやってもうまくいかない。

 

マネージャー自身が魅力的でなければならない

マネージャー自身の人間的魅力もまた、タレントが成果を上げるために重要な要素となる。センスの良い自分を演出できると、タレントの関心がこちらに向き、話を素直に聞いてくれる。「この人が勧めてくれる仕事なら、自分にとってもいいはずだ」となるのが、マネージャーとタレントの理想の関係である。つまり、いいマネージャーは、人として魅力的な人間でなければならない。

そういう意味では、遊ぶことも仕事の内。この業界は24時間遊びであり、24時間仕事であり、その境目がないとも言える。映画を観たり、芝居を観たり、イベントに足を運んだりして、常にアンテナを張り巡らせ、どうやって仕事に結び付けようかと考えるのがマネージャーの役割である。

 

タレント本人が悩み勉強することも必要

マネージャーの努力だけでは売れていかない。タレント本人の探究心や向上心も重要である。本を読んだり、映画を観たりして、感情移入することも大事な勉強で、自分が主人公になって演じているイメージを持ったり、監督になったつもりで作品全体を俯瞰したりする。それが、マネージャーの信頼を得ることになる。

タレントを信頼して仕事を取ってきても、勉強を怠ってきた人は評価される演技ができない。その批判は最初にマネージャーにくるが、徐々に使われなくなり、最終的にはタレントに返ってくる。

そういう意味では、今日仕事があろうがなかろうが、タレントを常に感情豊かにさせておく、感性を磨かせるのも、マネージャーの仕事である。

 

タレントとして恵まれるかどうかは運もある。売れない人がどうやって「それでも自分は絶対にこの世界で食べていく」と覚悟を決められるのかというと、マネージャーや他人からのアドバイスにより、自分自身で真剣に悩んだり試行錯誤したりする期間が必要である。

 

ホリプロの法則

マネージャーには仕事に対する3原則がある。

①タレントをダメにする仕事は、どんなにお金をもらってもやらない

②タレントを飛躍的に大きくする仕事は、どんなにお金が安くてもやる

③お金がもらえて、損も得もしない仕事は、基本的にやる

 

しかし、原則通りに動いても、うまくいかないこともある。ずっと脚光を浴び続けるスターはほんの一握りしかいない。マネージャーとしては「タレントを腐らせない」ことが大切である。