6つのモジュールを強化せよ
起業家のための経営システム(EOS)は、会社の最も重要な6つの側面の根本に直接働きかけて強化する自立的なシステムである。EOSは、多種多様な組織でテストされた、実践的かつ普遍的で、時代に影響されない原則からなる。「EOSモデル」では、あらゆる組織には「6つのモジュール」があると考える。EOSが極めて画期的なのは、これらのベストプラクティスが完全なシステムに統合されていて、このシステムを会社の組織構造や運営に応用すれば、会社は今後何十年も存続できるようになることだ。
①ビジョン
多くの起業家は自分の「ビジョン」がはっきりと見えている。問題は、彼らが全従業員にも同じビジョンが見えていると誤解していることだ。大抵の場合、従業員にはビジョンが見えていない。そのためリーダーはストレスがたまり、スタッフは混乱し、ビジョンは達成されずに終わる。
起業家はビジョンを頭の中から出して、紙に書き出す必要がある。次に、そのビジョンを社内で共有し、全社員が会社の方向性を認識し、その目的地に向かってあなたについていきたいかを決めてもらうことだ。
次の8つの質問に答えてビジョン・トラクションシートに記入すれば、ビジョンを正確に突き止められる。
- コア・バリューは何か?
- コア・フォーカスは何か?
- 10年目標は?
- マーケティング戦略は?
- 3年イメージは?
- 1年計画は?
- 四半期の石(90日間の優先事項)は?
- 課題は何か?
②人
誰かの助けなしで偉大な企業を築くことはできない。「正しい人」を「正しい席」に座らせることが重要だ。
- 正しい人:会社の「コア・バリュー」を共有する人のこと
- 正しい席:従業員一人ひとりが、社内で自分のスキルを発揮できて情熱のある業務を担い、その役割と責務が彼らの「ユニーク・アビリティ」に合致する状況のこと
このツールを使えば、人選の基準が明確になり、会社にふさわしい人を見分けやすくなる。その人がどれだけコア・バリューに忠実かを基準に、各人を評価する。
・アカウンタビリティ・チャート
これは組織を適切に構造化し、役割と責任を定義し、組織内のすべてのポジションを明確にする。チャートが完成し、誰が何の責任を負うか明確にし、今度は「GWC」というフィルターにかけ、正しい人を正しい席に座らせる。
- Get it(業務を理解できる)
- Want it(業務に対するやる気がある)
- Capacity to do it(業務を遂行する能力がある)
3つとも「イエス」でない人は、間違った席に座っているということだ。
③データ
生産的な議論や意思決定の根拠を提供してくれるのは、事実に基づくデータだけであると認識しなければならない。EOSのデータのモジュールでは、「スコアカード」というツールを導入して、業績を定量化する。
・スコアカード
幾つの数字を追跡するべきかは、会社によって異なる。「週間売上」「現金残高」「顧客満足度」「週単位の営業活動」など、測定可能な毎週管理すべき5〜15の数字を設定し、全員に数字目標を持たせる。
④課題
組織で課題が生じた時は、規律を持ち解決への方策を検討しなければならない。会社の成長を阻む障害と取り除くためには2つのEOSツールを利用する。
・課題リスト
まず従業員が問題を指摘しやすい職場環境を作り、課題を全て公にして1カ所にまとめる。
・課題解決トラック(IDS)
最も重要な課題を3つ選び、課題解決トラックに従って、重要な課題に取り掛かる。
- 原因を追究する(Idenfify)
- 議論する(Discuss)
- 解決する(Solve)
⑤プロセス
プロセス要素を強化するには、独自のビジネスモデルを構成している「コア・プロセス」を理解する必要がある。そして組織の全員がコア・プロセスを理解し、尊重し、遵守する。
・コア・プロセスの文書化
「アカウンタビリティ・チャート」を利用し、プロセスを文書化する。その際には、結果の80%を生み出す20%の手順を文書化する。
・全員実行
経営者も例外なく、全員がプロセスに従う。プロセスの透明性が高ければ、顧客数、取引数、収益、従業員が増えても、業務が複雑化することはない。
⑥トラクション(実行力)
ほとんどの組織は、結果責任と規律をもって実行することができず、それが最大の弱点となっている。トラクションをつけるために必要なことは次の2つ。
- 全員が具体的で測定可能な優先順位を設定すること
- 社内でのミーティングの質を向上させること
明確で長期的なビジョンを設定したら、それを達成するために、すぐにでも行うべき優先事項を設定すること。会社にとって最も重要な3〜7つの優先事項、つまり90日以内にやるべきこと(石)を決める。