英国海兵隊に学ぶ 最強組織のつくり方

発刊
2012年9月5日
ページ数
223ページ
読了目安
189分
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軍隊で採用されているマネジメント手法
英国海兵隊が中心となり、NATO軍によって開発された軍隊式マネジメントの手法をビジネスに生かす方法が紹介されている。

対ゲリラ戦、対テロリスト戦という変化の激しい不確実な状況に対応するために開発された軍隊のマネジメント方法は、今のビジネスシーンにも利用できると説く。

軍隊式マネジメント手法とは

軍隊では、遂行すべきミッションを与えられ、遂行時の制約条件は伝えられるが、『どのようにやるか』という具体的な行動計画については、大きな自由度が与えられる。自由が与えられれば、責任感が生まれる。それゆえ、兵士たちは、自由を与えられた時に、100%以上の成果を出すことができる。

一般にいって軍隊には、「トップダウン」「縦割り構造」など、上官の命令には絶対服従で、兵士は一糸乱れぬ集団行動をとるイメージがある。しかし、現代の軍隊組織は、ビジョンとリーダーシップに基づいて運営されている。その理由は次の通り。

①不確実な敵への対応
ベトナム戦争以降、戦争は正規軍同士の戦いから、対ゲリラ戦や対テロリスト戦に変わった。このような戦争では、事前に立てた作戦を大きな組織が遂行するといった方法が通じない。

②不確実な味方への対応
多国籍軍による軍事行動が増え、参加国の各部隊は1つの目標に向かって、それぞれの役割を担う必要がでてきた。

軍隊では、現場に権限を委譲する

権限委譲型の軍隊式マネジメント「ミッションコマンド」は、「不確実な敵」がいる混沌とした戦場で、敏速に、団結力を失うことなく、的確に行動できるようにすることを目的に考え出された。

ミッションコマンドでは、例えば『このエリアを明朝6時までに制圧することにより主力部隊のバグダッド侵攻を支援せよ』などと、組織としてのミッションを司令部が決める。しかし、どのようにして制圧するかは現場の指揮官に任せる。与えられた人員、武器、民間人を巻き込まないといった制約の中で、どのように作戦を展開し、どのように不測の事態に対応するかは、すべて現場に任せる。

権限委譲するのは、その方が死ぬ確率が低いからである。常に変化し、予測不能な対テロリスト戦では、細かい指示を出してコントロールするほど死ぬ確率が高くなる。

軍隊式マネジメントをビジネスに実践する方法

軍隊式マネジメントをビジネスに応用したのが「ミッションリーダーシップ」である。これは「ビジョン」と「ミッション」というプロセスと、リーダーに求められる行動規範「リーダーシップ」から構成される。

①ビジョンを掲げる
ビジョンは簡潔明快で夢があり、実現期日が明確であるものが理想的。

・長い文にしない
・組織の独自性を込める

②ミッションを設定し、現場に権限を委譲する
ミッションもビジョンと同じように簡潔明快でなければならない。ビジョンが長期的に目指す夢であるのに対し、ミッションは短期的に達成すべき目標である。

・美辞麗句を用いず、曖昧さを除く
・「何=What」と「なぜ=why」を明記する
・「どのように=how」を入れない
・下位のミッションと上位のミッションを「何」と「なぜ」の関係にする

ミッション設定後には、タスクを設定する。タスクは現場責任者が執行し、その方法や管理を任せる。その上で、ミッションやタスクの達成状況を、組織でタイムリーに共有する。ミッション達成が困難であることがわかれば、組織全体で対応する。

③リーダーシップを発揮する
リーダーは夢のあるビジョンの実現に向けて、自らコミットする姿勢を示すことで、ビジョンを組織内に浸透させる。

目的:常に組織の目的を明確にし、メンバーと共有する
状況:組織が置かれている状況を明確にし、メンバーと共有する
計画:目的を達成するための計画を明確にし、メンバーと共有する
示唆:鼓舞する、示唆を与える、率先行動で示す
強化:困難や想定外の変化にも諦めずに継続する
評価:組織の活動をたえず評価し、学習内容を次に生かす

組織のミッション達成には、リーダーがこれら6つの言動を高いレベルで示すことが不可欠である。