賢い組織は「みんな」で決める:リーダーのための行動科学入門

発刊
2016年9月8日
ページ数
285ページ
読了目安
383分
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組織が正しい意思決定をするためにはどうすれば良いのか
組織が正しい意思決定をするにはどのようにすれば良いのか。集団で熟議するだけでは、必ずしも正しい判断ができるとは限らないと解説し、効果的な集合知の導き方を紹介している一冊。

集団で議論しても正しい判断ができるとは限らない

集団は個人の間違いを正しているのか。答えはノーである。集団で良い決定を出すのは難しい。集団で議論しても誤ってしまう理由は、集団のメンバーにかかる圧力に2種類あるからだ。

①情報シグナル
他人が公表した情報を尊重するあまり自分が持っている情報を発表しなくなる傾向

②評判プレッシャー
自分に不利になることを避けるために黙ってしまう傾向

 

熟議する集団が陥りやすい4つの失敗

この2つの圧力のために、集団は4つの問題に直面する。

①増幅される間違い
集団はメンバーの間違いを正すことができないどころか、その間違いを増幅する。

②カスケード効果
集団は、最初に発言、行動を起こした人に従う問いう「カスケード効果」の餌食となる。その発言や行動が集団を、不幸でおぞましい、悲劇的な方向に向かわせることになってもだ。

③集団は極に走る
集団は、メンバーが既に持っていた方向に沿ってさらに極に走る。非常に楽観的だった集団は、集団内の議論の結果、それに輪をかけて楽観的になる。

④情報共有のワナ
集団は、既にみんなが知っている、共有の情報に注目して、共有されていない情報をないがしろにする。その結果、1人あるいは少数者が持っている、耳障りだが重要な情報を活用できない。

こうした問題ゆえに、集団はメンバー個人の間違いを正し、個人の持つ情報を集約するという最低限の目的すら達成できない。

失敗を減らすための8つの方法

賢い集団は、少数派の意見を聞いて、固定観念から目覚めることができる。多様性の力をいかに活用するかを理解することは大切である。集団の多くは誤って、2つの任務を1つのプロセスに混ぜこぜにしがちだ。多様な視点を必要とする「拡散」とコンセンサスを作り出す「決断」という2つの任務を達成するには、それぞれが必要なのはどの段階かを理解し、その目的を別々に達成できるよう集団のプロセスを計画する必要がある。集団を賢くするためには次の8つの方法がある。

①好奇心旺盛で、自らは沈黙するリーダー
社会的地位が低い集団は熟議では影響力が弱い。リーダーや社会的地位の高い人が集団の役に立つためにできるのは、共有されていない情報を聞きたいと発言し、聞こうとする意欲を示すことだ。

②批判的思考を「プライミング」する
集団の方向性とは異なる情報でも公開を促すようにすれば、自己規制による沈黙はかなり減少する。結果、熟議は改善する。

③集団の成功を重視する
人が集団の成功を自分の成功と同一視するようになれば、集団の方針に関係なく、自分が知っていることを公表するようになる。

④役割を分担する
議論を始める前に、メンバー全員に対して、個々のメンバーが有用な情報をそれぞれに持っていることを公表しておく。

⑤視点を変える
「新しいリーダーを連れてきたら、どうするだろうか」と問うてみる。

⑥わざと反対意見を述べる
メンバーの数人にわざと反対意見を述べる「悪魔の代弁者」になってもらい、集団の向かう方向に反する立場を主張させる。

⑦敵対チームを作る

⑧デルファイ法
リーダーがメンバーに対して、討議に入る前に匿名で別々に意見を表明する機会を与える。