「午前中の修道士モード」で、仕事に集中できる時間をつくる
オープンスペース型のオフィスは、社員とのつながりを深めるには都合がいいが、集中しにくく作業には向いていないというジレンマを抱えている。研究によればオープンスペースに切り替えることで、社員同士がやりとりするメールの数は56%増加し、対面でのやりとりは1/3に減少した。仕事に集中しにくくなったことで生じた不満により、従業員間で相手に要求することが増え、人間関係は悪化したのだ。
オープンスペースのメリットを支持する研究結果は少ない。オープンスペースのオフィスで働く人は、近くに同僚が少数しかいないオフィスで働く人よりも病欠日数がはるかに多くなる。また、同僚から気軽に質問されるなどの要因で、平均して3分ごとに仕事への集中力を妨げられている。集中を妨げられてばかりいると、人は身を入れて仕事ができないという感覚を強く覚えるようになる。これは自己肯定感に悪影響を与える。人が仕事に満足感を覚えるのは「進捗を実感している時」である。
起業家には、「午前中の修道士モード」と呼ぶものを実践している人が多い。午前中は各自が静かに仕事に集中し、他人と関わる仕事は午後に回す、というアプローチを会社全体で採用しているケースも多い。職場で幸福感と充実感を高めるための方法が「大切な仕事をしていると実感すること」ならば、週2回、3時間ほど誰にも邪魔されずに静かな環境で仕事に集中できるように工夫してみるとよい。
「せっかち病」をなくす
現代では、何もしないことは、風変わりで非生産的な行為だと思われている。世の中には刺激が満ちあふれ、すべきこともたくさんあり、行動的であることがよしとされている。絶えず過剰な刺激にさらされている現代人は「すべきことを全部終わらせられない」という絶え間ない不安につきまとわれている。インターネットが普及したことで仕事量も増えた。調査によれば、現代人は1日当たり平均で約130件のメールを送受信している。そして会議だ。最近の調査によれば、イギリスの平均的な会社員は週に16時間を会議に費やしている。
問題はメールや会議だけではない。現代人が毎日処理している情報の量は、めまいがするほど膨大だ。その結果、人々は常に不安な気持ちにさせられている。せっかち病は深刻な症状だ。この切迫感に抗うためには、まず「いつも忙しくしているからといって、良い仕事ができるわけではない」と自覚することから始めよう。急かされているような気分になった時は、本当にそれが「できるだけ早く」でしなければならないものかを自問しよう。急ぐ必要があるものと、そうでないものをうまく分別できるようになれば、自分の心を冷静に見つめられるようになる。
また、じっくりと自分と向き合う時間や、あえて何もしない時間も必要だ。心の平穏や静寂を感じる瞬間はストレスレベルを下げるし、創造性も高まる。
働く時間を減らす
一昔前は、仕事を終えて会社を一歩出たら、あとは自由だった。しかし、現代ではメールのせいで行き帰りの通勤電車や自宅のソファ、トイレまでもが仕事場になった。勤務中も絶えず様々なことに注意を向けなくてはならなくなったために、仕事の負荷は増えている。現代の仕事のスタイルは、働く人たちにかつてないほど多くのことを求めるようになった。
人間の認知能力はゼロサムゲームだ。上限を超えて働き続け、なおかつ質の良い仕事をしようとすることなど、無理な話だ。研究によれば、週の労働時間が40時間を超えると生産性が落ちることがわかった。生産性を最大に高めたければ、長時間働かないことだ。
1つのことに集中する
仕事で幸せを感じられるようになるには、まず休日に仕事のメールをしない、夜にぐっすり眠る、通知をオフにするなどの方法を試すことだ。
絶えず気を散らしていると幸福度が下がることは、多くの研究が示している。仕事でもっと幸せになりたいなら、一度に1つのことに集中すること。それは生産性を高めるだけでなく、幸せにしてくれる。