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スプリントとは
「スプリント」とは、グーグル・ベンチャーズが活用しているプロセスで、アイデアをプロトタイプの形に素早く落とし込み、それを顧客とテストすることによって、たった5日間で重要な問題に答えを出す手法をいう。
良いアイデアはなかなか見つからない。またどんなに良いアイデアでも、実世界で成功するかどうかはわからない。そこで、スプリントを行うスタートアップは、堂々巡りの議論をすっ飛ばして、たった1週間で数ヶ月分の仕事をやってのける。試用版の製品を公開するまでアイデアの検証を待つ代わりに、リアルなプロトタイプを使って明快なデータを素早く手に入れる。
スプリントの準備
成功するには適切なチームが欠かせない。完璧なスプリントチームをつくるには、まず意思決定権限を持つ人を決める。この決定者はスプリントに関与しなくてはならない。
スプリントの理想的な人数は7人以下。スプリントが最も成功するのは、多様な人材が揃っている時だ。実行に関わるコアな人たちに加えて、専門的な知識を持つ人材を何人か含める。
スプリントの手順
①月曜日:問題を洗い出して、どの重要部分に照準を合わせるかを決めるまずはプロジェクトの「長期目標」を決める。次に長期目標の前提とクエスチョンを考える。
・このスプリントでどんな質問に答えを出したいか
・長期目標を達成するには、どんな前提が満たされる必要があるか
・プロジェクトが失敗に終わっていたら、どんな原因が考えられるか
次にマップを使って漠然とした課題を絞り込み、スプリントの具体的なターゲットを決める。大まかな草案ができると、専門家にヒアリングして、メモにまとめる。
②火曜日:多くのソリューションを紙にスケッチする
スプリントでは「組み替え」と「改良」に徹する。但し、単なる模倣はいけない。ソリューションスケッチのヒントになりそうな既存のアイデアを探すことから始まる。同業者の製品を研究しても大して役に立たない。最高のソリューションの起爆剤になるアイデアは、異なる環境の似たような問題の解決策にこそある。
各自がソリューションのヒントになりそうな既存の製品・サービスをリストアップする。そして、1人ずつ順番に、自分の提案する製品の光速デモをして、ホワイトボードにメモをとる。その上で、各自がスケッチを行う。
・過去24時間のスプリントの「ベストヒット集」をつくる
・落書き帳のように何でも描く
・高速でバリュエーションを考える
・3コマで「全体像」を見る
③水曜日:最高のソリューションを選ぶという困難な決断を下し、アイデアを検証可能な仮説の形に変える
プロトタイプにするソリューションを決定する。
・ソリューションスケッチを壁に貼り付ける
・面白いと思った部分にドットシールを貼っていく
・各ソリューションの見所を話し合い、ビッグアイデアを書き出す
・各自がソリューションを1つ選び、投票する
・決定者が最終決定する
④木曜日:リアルなプロトタイプを完成させる
プロトタイプをつくるには「完璧」から「必要最低限」へ、「長期品質」から「一時的なシュミレーション」へと、考え方をシフトする必要がある。プロトタイプの手法は次の4つ。
・正しいツールを選ぶ ex.キーノート
・「5つの係」で分担する ex.メイカー、ステッチャー、ライター、資産コレクター、インタビュアー
・つなぎ合わせる
・試運転
⑤金曜日:本物の生身の人間でそれをテストする
テストする人数は5人。1日の内に1時間のインタビューを5回行う。5人の内2、3人が同じ強い反応を示したら注意を払う。
スプリントを繰り返し、ビジョンを持ち続ければ、いつか必ずギャップを埋められる日がくる。金曜日のテストで顧客がアイデアを完璧に理解し、それが生活向上に役立つと確信し、どこで買えますかと尋ねる瞬間がやってくる。