サイロ・エフェクト 高度専門化社会の罠

発刊
2016年2月24日
ページ数
365ページ
読了目安
613分
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専門化しすぎることの落とし穴とは
高度に複雑化した社会に対応するため組織が専門家たちの縦割りの「サイロ」になり、その結果変化に対応できない。こうした事例を紹介しながら、高度専門化社会におけるリスクと対策を解説している一冊。

高度専門化社会の罠

21世紀の社会において、大規模な組織の多くは縦割りで、数え切れないほどの部署に枝分かれしており、協業は言うに及ばずコミュニケーションすらままならないケースが多い。我々は隔絶された心理的および社会的「ゲットー」に住み、自分と似たような人々とだけ交わり、共存する。職業の世界も専門化が進んでいる。技術がより複雑で高度になっている事も一因で、少数の専門家しか理解できなくなっている。この細分化した状態は「サイロ」と表現するのがぴったりである。サイロは部族主義を生むと同時に、視野を狭める。

サイロがスペシャリストの集まった部署やチームや場所を意味するのなら、間違いなく必要なものだ。しかし、サイロには弊害もある。専門家チームに分けられると互いに敵対し、リソースを浪費する事もある。互いにコミュニケーションできずに、危険なリスクを見逃す事もある。組織の細分化は情報のボトルネックを生み出し、イノベーションを抑制しかねない。何よりサイロは心理的な視野を狭め、周りが見えなくなるような状況を引き起こし、人を愚かな行動に走らせる。

サイロの危険を完全に払拭する事はできない

サイロを克服するのは終わりなき戦いである。我々を取り巻く世界は常に変化し、2つの逆方向の力が働いているからだ。複雑な世界にはスペシャリストや専門家集団が必要だが、それと同時に総合的な、柔軟な視点で世界を見る必要もある。サイロを克服するには、この両極の間の細い道をうまく渡っていかなければならない。この課題に取り組む第一歩は、まずサイロの存在を認めること、続いてその影響についてしっかり考える事だ。

サイロを打破するための教訓

分類システムが過度に硬直化し、サイロが危険なまでに強固に根をはると、我々にはリスクだけでなく魅力的なチャンスも見えなくなってしまう。このサイロ・シンドロームの弊害を緩和するには、次の教訓がある。

①大規模な組織においては部門の境界を柔軟で流動的にしておく
フェイスブックがしたように、ハッカー期間制度を通じて社員を異動させる事には意義がある。ハッカソンやオフサイトミーティングのような異なる部門の社員が出会い、絆を深められるような場所や制度を設けておくのも良い。組織のメンバーが内向きになったり、守りの姿勢になるのを防ぐには、交わる機会を増やす必要がある。

②組織は報酬制度やインセンティブについて熟慮すべきである
各自の所属するグループの業績だけに基づいて報酬が決まり、しかもグループ同士が社内で競争関係にあると、グループ同士が協力する可能性は低い。集団としてのモノの考え方を促したければ、協調重視の報酬制度をある程度採り入れなければならない。

③情報の流れも重要である
各部門が情報を抱え込むと、とてつもないリスクが蓄積される可能性がある。これに対する1つの解は、全員がより多くのデータを共有するようにする事である。さらに重要なのは誰もが自分なりに情報を解釈し、そうして生まれる多様な解釈に組織が耳を傾けるようにする事である。組織内で自分達にしかわからないような複雑な専門用語を多用し、代替案をハナから拒否するような専門家のチームが幅を利かせていると、実現は難しい。

④組織が世界を整理するのに使っている分類法を定期的に見直せば、見返りがある
我々は大抵継承した分類システムを無批判に受け入れる。そうしたシステムが理想的なものである事はまずない。時代遅れになっていたり、特定の利益集団の役にしか立たない事もある。パターンを変えるだけでイノベーションが生まれる事もある。少なくとも人々の視野は広がる。

⑤ハイテクを活用するのも有効である
コンピュータの利点は、消去できない心理的バイアスを持ち合わせていない事である。プログラムを変更すればそれまでとは違った方法で情報を整理したり、新しい分類法をテストする事もできる。