良い製品開発 実践的ものづくり現場学

発刊
2020年3月20日
ページ数
232ページ
読了目安
339分
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製品設計を見直すことでコストは半減できる
メーカーの開発力が強いか弱いかは、コストにあらわれる。開発部門の製品設計を見直すことで、部品点数や加工費を低減することで、大幅なコスト削減ができるとし、その開発手法を紹介しています。

製品の設計図面によってコストは大幅に変動する

メーカーの事業の赤字は様々な要因から発生するが、その赤字の解決策は常に開発部門にあり、その種は市場にある、ということに気づいていない幹部が多い。開発部門が担う開発力については、企業間格差が生じやすい。ほぼ同様な性能・機能・品質を持った製品を開発したような場合でも、開発力の強さ・弱さによって、その製品を構成する部品点数やコストには大きな差がでる。

 

一般的に言えば、メーカー企業における売上の6割は、製品開発部門で作製された「図面」から発生している。開発部門による図面から発生したものはすべて変動費である。

売価=変動費(60%)+固定費(30%)+営業利益(10%)

変動費=材料費+加工費+償却費+購買部品費+組み立て費+梱包費+運送費

 

開発設計者は自分が引いた図面について、これら変動費の中身を算出できることが必須条件である。その算出をコスト管理部門や専門の部署に丸投げしたのでは、まともな設計はできない。開発段階で設計された図面の出来栄えによって、変動費は大きく変わる。

 

コスト削減する項目

5年前に開発された製品であれば、その製品の「設計見直し」によって、変動費を30%低減できる。機械系の技術は、物理の基本原理は大きく変わらないため、新たな技術が次々と開発され、それが基本形の技術に加算され、より利用価値の高い優れた技術を形成している。これらの先進技術や考え方を学び、それらをヒントに自らの課題に挑戦することで、5年後に30%の低減が見込める。

 

①材料費

部材に働く力を少なくするよう、部品の形態の工夫を徹底することで、少ない材料で大きな力を負担させることができる。部品に作用する力には「圧縮」「引っ張り」「曲げ」があるが、「曲げ」が作用すると非常に弱くなるため、「圧縮」と「引っ張り」の力だけが作用するように設計する。

 

②加工費

加工工程を少なくし、同時に切削くずの発生量を抑える設計にする。理想的な設計は、材料費1に対し、加工費1になることである。また、部品加工のための専用機や冶具を使わなくても加工できるような設計が大切である。

 

③償却費(金型・冶具)

生産数量が少ない部品については、償却負担が課題である。

 

④購買部品費

前買いのものをそのまま流用すると、コストは据え置きか、場合によっては材料費の高騰から値上げ要請を受ける場合がある。購買部品に対しては、前買いの同等品から30%低減を目標にする。5社を相手に競合見積もりをすることでほぼ達成できる。

 

⑤組み立て費

部品の多さや調整箇所の組み立て時間など、開発段階の図面の出来栄えで大きく変わってくる。

 

⑥梱包費

製品を梱包しやすい形態に設計しているか否かで費用は異なる。さらに梱包材料によっても大きく異なる。これらの判断を外部の運送業者任せにしては、コストを下げることはできない。

 

⑦運送費

運送費も開発設計段階でほぼ決まる。

 

DTC開発による設計の見直し

製品に組み込んだ部品や、その構造に目を注げば、部品半減・コスト半減の可能性が見えてくる。製品の設計を見直せば、利益率も格段に向上するはずだ。そのための方法が「DTC(Design to Cost)開発」である。開発に携わる者全員に「ものづくり現場学」を教えながら、お客様が感動する製品を開発し、事業革新をしていく。DTC開発では自前設計品においては50%低減、専門業者からの購買品ユニットについても30%の低減を目指す。製品単体のコスト改善はもとより、事業全体の体質強化と事業革新が目的となる。

 

開発力の弱さはコストに出る。いくらコスト計算したところで、部品点数の多いものや、加工工程の多いものは、それなりにコストがかかる。部分分解、半分解、全分解の過程を、各自で追えるようにすることが大切である。そして、分解後の部品を並べた中から、感動した点をポンチ絵で描き出す。ポンチ絵は、手描きのラフな図面のことで、開発者同士が機体の構造や部品の形態などを話し合う時に活用する。素案がポンチ絵でできた段階で、すり合わせ、CADの設計に移し替える。