リーン・スタートアップ ―ムダのない起業プロセスでイノベーションを生みだす

発刊
2012年4月12日
ページ数
408ページ
読了目安
582分
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不確実で先が読めない時代におけるマネジメント手法
スタートアップのマネジメント手法として大きな脚光を浴びている「リーンスタートアップ」の提唱者エリック・リース氏による経営書。

スタートアップはなぜ失敗するのか

スタートアップが失敗する理由として、優れた計画やしっかりした戦略、市場調査の活用に目を奪われることが問題として挙げられる。不確実性が大きいスタートアップにはこの方法は使えない。どういう人が顧客になるのかやどういう製品を作るべきかさえもまだわからないのがスタートアップである。

アントレプレナー(起業家)は、マネジメントや仕組み作り、規律などをすべて捨て、「とにかくやってみよう」を方針とする。しかし、この方法では成功を呼び込むより混乱を招くことの方が多い。

アントレプレナーには、起業に伴うチャンスを現実のものとするマネジメント原理が必要である。

リーン・スタートアップとは

スタートアップの目標は、できる限り早く、作るべきモノ、顧客が欲しがり、お金を払ってくれるモノを突き止めることである。しかし、スタートアップでは誰も欲しがらないモノを作ってしまうことが多い。

リーン・スタートアップとは、サイクルタイムの短縮と顧客に対する洞察、大いなるビジョンなど様々なポイントに気を配りながら「検証による学び」を通して画期的な新製品を開発する方法である。

検証による学び

リーン・スタートアップでは、「検証による学び」という概念で学びをとらえなおす。「我々の努力のうち価値を生み出しているのはどの部分で、どの部分が無駄なのか」この問いを発せられるようにしなければならない。価値とは顧客にとってのメリットを提供するものを指し、それ以外はすべて無駄と考える。

スタートアップは不確実性を必ず持つため、この価値の定義自体を見直す必要がある。

今は、人間が思いつける製品ならまず間違いなく作れる時代。「この製品を作れるか」ではなく、問うべきは「この製品は作るべきか」である。この問いに答えるためには、事業計画を体系的に構成要素へと分解し、部分ごとに実験で検証する必要がある。

実験は科学的手法にのっとって行う。まず何が起きるのかを予測する仮説を組み立てる。次に、予測と実測とを比較する。

構築ー計測ー学習

リーン・スタートアップでは、様々な仮説に基づいて複雑な計画を立てるのではなく、「構築ー計測ー学習」というフィードバックループをハンドルとして、継続的に調整を行う。製品を顧客が使うとフィードバックやデータが得られる。この情報から次の段階のアイデアが生まれる。

(アイデア)→「構築」→(製品)→「計測」→(データ)→「学習」→(アイデア)

大事なことは、このフィードバックループの一周に要する時間を最小にすることである。

スタートアップの計画で最もリスクの高い要素は、「挑戦の要」となる仮説である。スタートアップは、この仮説をもとに成長のエンジンをチューニングする。

仮説の段階をクリアしたら、できるだけ早く実用最小限の製品(MVP)を作る。MVPとは、構築ー計測ー学習のループを回せるレベルの製品で、最小限の労力と時間で開発できるものをいう。最初から完璧な製品を狙わない。
MVPでは、常に「顧客と我々で評価が違ってないか」を問う必要がある。顧客から予想通りの反応が得られれば仮説は正しいと考える。

計測フェーズに入ると、製品開発が本当の前進につながっているのか否か判断する。誰も欲しがらない製品なら、完成させても意味がない。

ピボット(方向転換)

構築ー計測ー学習のループを回り終えた時、当初の戦略からピボットするか、このまま辛抱するかを決める。ピボットを決めるには、客観的に物事をとらえる必要がある。

ピボットとは、単に変化を勧めるものではない。製品、ビジネスモデル、成長のエンジンに関する根本的な仮説を新たに策定し、それを検証できる構造の変化をピボットと呼ぶ。ピボットがあるからリーン・スタートアップを採用した企業は失敗から立ち直れる。