「富士そば」は、なぜアルバイトにボーナスを出すのか

発刊
2017年11月17日
ページ数
224ページ
読了目安
225分
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経営者の仕事で最も大切なこと
立ち食いそばチェーン『富士そば』の創業者が、経営者の仕事で最も大切なこととは何かを説く一冊。アルバイトにもボーナスを出すという富士そばならではの考え方が紹介されています。

従業員をなるべく大切に扱う

『富士そば』は、東京を中心に展開する立ち食いそば屋である。2017年10月現在、店舗数は国内外約130店舗で、従業員1000名弱。多くの店が駅前にあってサラリーマンの利用が多く、かけそばを1杯300円で提供している。

富士そばには不思議な仕組みが多いと言われる。しかし、最も大切にしていることは、突き詰めれば1つだけ。「従業員をなるべく大切に扱う」という、至極当たり前の方針である。

細かいマニュアルがない

富士そばには創業当時から細かいマニュアルがない。例えば、そばの調理。「生麺をお湯に入れて、茹でるのは何秒」といったマニュアルは一応ある。但し、「マニュアルは参考程度にしてもらって、最終的には自由に調理してもらって良い」と従業員には伝えている。そばの調理の工程にあるそばの湯切りも、何回切るかは各自にお任せ。「細かいことは良いから、うまくやってくれ」。調理も、出来上がりさえ良ければ、自己流も大歓迎である。

マニュアルは本質ではない

富士そばにも接客マニュアルも、ほぼない。せいぜい、入社時に接客の基本を説いたDVDを見せるぐらいである。接客業で大事なのはマニュアルに忠実に動けているかどうかではない。できる限り心を込めて、自然に対応しているかどうかである。理想は、お客様のためになることを考えて、自然と身体が動き、言葉を発しているような状態である。その動機が自分の欲のためでも一向に構わない。人間は自分の欲に従って動いている時が最も自発的になり、良いサービスを提供できる。

メニューの開発も現場に任せる

富士そばの定番メニューといえば、かけそば、もりそば、ざるそば、天ぷらそば。これらがすべてのお店で提供している基本メニューである。それ以外のメニュー構成は、係長と店長で決めていて、店舗ごとに違う。最近評判になったのが、「まるごとトマトそば」である。そばの上にトマトがまるごと1個置いてあり、相当インパクトがある。インターネットで話題になったため、考案した店長には広報賞が与えられた。フライドポテトをのせた「ポテそば」、たこ焼きをのせた「揚げたこ焼きそば」も開発したことがある。これが結構売れてしまった。やってみないと案外わからないものである。

このメニューを考えているのは現場で働いている従業員である。社内でアイデアを募ってはどんどん採用する。日頃お客様に接していて、その需要を目の前で感じているのは現場の従業員たち。そこで発想が生まれてくる。

従業員が提案してきたメニューは、基本的には全部店頭に出す。従業員が熱意を込めて提案したメニューを簡単に足蹴にしてしまったら、そのうち誰もアイデアを出さなくなってしまうし、従業員が自由に意見を言えなくなる。何よりも気をつけているのは、従業員のやる気を殺ぐような言葉を決して発しないこと。まずは「君に任せた。やってみなさい!」と前向きにリードするべきである。

絶対に利を独り占めしないこと

アルバイトにも働いた年数に応じて、ボーナス、そして退職金を出している。アルバイトも、会社を構成する立派な一員。正社員だけでは会社は回せない。正社員でないとしても、彼ら彼女らも大変な思いをしながら働き、暮らしているのだから、払うものはちゃんと払って報いなければならない。正社員とアルバイトの間に金銭の面であまりにも極端な差があると「同じ仕事をしているのに」とアルバイトがひねくれてしまう。

もし経営者が事業で儲けた利益を独占して、従業員の給料を不当に減らしたりすると、現場の士気は下がる。サービスの質が低下する。お客様の足が遠のく。業績が悪くなる。すべてが悪い方向へ向かっていく。