最強のチームはフィールド外の文化から始まる
ラグビーのニュージーランド代表チーム「オールブラックス」は史上最強のラグビー・チームである。スポーツ全体を通して見ても、あらゆる点で最強のチームだと言われている。プロフェッショナルの時代において、86%を超える驚異的な勝率を誇る。
オールブラックスの強さの決め手は選手の数ではない。イングランドのラグビー選手の数はそれ以外の国々の合計よりも多い。人種の問題でもない。組織の下部構造だけの問題でもない。
フィールドでのオールブラックスの目覚ましい成功は、フィールドの外での非常に独自性の強い文化から始まっている。オールブラックスの一員になることは文化の遺産の担い手になることである。その役割は「ジャージをより良い場所に置く」ことである。これによってもたらされる謙虚さ、期待、責任が勝負のレベルを引き上げる。
才能よりも品性を大切にする
過去の偉大なスポーツコーチは謙虚さを選手育成の中心に位置付けていた。オールブラックスも同様に、基本と基本的価値を重視し、才能よりも品性に基づいて選手の選抜を行なっている。選手たちは決して奢ることなく、小さなことを大事にするように教えられる。
オールブラックスの選手たちは、自分でロッカールームを掃除する。自分たちの面倒は自分でみる。このことは、選手を謙虚にし、チームの品性を育てるのに役立つ。責任は品性から生まれ、品性は謙虚さから生まれる。
謙虚になれば「どうしたらもっとうまくできるか」という簡潔な問いが生まれる。そして、問いかけは学ぶ環境を作り出す。チームでは、誰もが目の前にある問題解決に貢献するよう求められる。これが革新、自己認識の向上、より高い品性へとつながる。
ゲームを支配している内にゲームの方向を変える
弾みというのは、私たちが考えるよりも移ろいやすい。世界の頂点に立ったと思うと、次の瞬間には反対側に転落し始める。リーダーの役割は、いつ、どのようにテコ入れをすれば良いかを見極めることである。S字形曲線からわかるように、ゲームを支配しているうちにゲームの方向を変えなければならない。大事なことは弾みを失わないことである。
最も効果的な攻撃はフィードバックを繰り返すことである。競争で常に優位を占めるには、絶えず内部で環境への適応が行われている文化を育てる必要がある。
オールブラックスにとって、適応とは反応ではなく、系統だった一連の行動である。その瞬間に起こっていることに反応するだけではなく、変化の主体になることである。これを達成するには、体系的なフィードバックに従い、適応しながら、リードすべき方向を明確にしていく。
目標を掲げて戦う
人間の基本的なやる気は、内的なモチベーションによって生まれる。リーダーが目標の力を利用すれば、グループに活力を与え、グループの活動と企業の戦略的支柱とを整合させることができる。
個人的な意味とチーム全体の目標とを結びつけることはオールブラックスが極端なまでに重視していることである。個人的な意味は、より大きなチームの目標と結びつくための手段である。自分の価値や信念が、組織の価値や信念と一致すれば、成功に向けてより一層努力できる。
オールブラックスの目標は、遺産に新たな成果を付け加えること。選手たちには世話役としての伝統がある。ジャージの価値を高め、受け取った時よりも良い状態で次に回すことがその役割である。