熱狂しない経営 「北欧、暮らしの道具店」クラシコムが20年磨き続けた”らしさ”の正体

発刊
2026年9月18日
ページ数
400ページ
読了目安
460分
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「北欧、暮らしの道具店」の強さとは何なのか
ECサイト「北欧、暮らしの道具店」を運営するクラシコムの経営について紹介されている一冊。
アプリやSNS、YouTubeなどで1100万人以上の顧客接点を持ち、売上100億円を突破して成長し続ける同社の強みはどこにあるのか。

社員の8割が元顧客、バズるコンテンツに依存しない、KPIを設定しないなど、そのユニークなマーケティングやマネジメントがどのように行われているのかが丁寧に取材されています。

お客さまと同じ目線に立つ

ECサイト「北欧、暮らしの道具店」を運営するクラシコムは、YouTubeやSNSなどの登録者1100万ユーザーとつながり、売上を伸ばし、高い利益率を保っている。「北欧、暮らしの道具店」は、北欧雑貨や生活用品、アパレルなどを扱うECサイトとして見られるが、その強さの秘密は、アプリやメルマガ、SNS、YouTube、ポッドキャストなど、多種多様なチャネルで顧客接点を生んでいることにある。

 

「北欧、暮らしの道具店」には一見すると販売につながらないようなコンテンツもずらりと並ぶ。ただ商品を売るためのものではなく、世界観を表すもので、サイトやアプリに訪れたくなる、より長く、滞在していたくなるようなコンテンツで、毎日3、4本程度公開されている。

編集チームで大事にされているのが「毎日1本は、お客さまが本当に読み込みたいなと思ってくれるような特集、読み物を届けたい」ということ。そして「月に1本程度は、スタッフの悩みや知りたいことから生まれる私の濃度が高い記事を企画する」というもの。自分という「N=1」の課題からスタートする姿勢を大事にしている。さらに「N=1」に加えて、ミッションである「フィットする暮らし、つくろう。」という視点に合っているかも常に意識されている。

 

スタッフが共通して意識しているのが、お客さまも自分たちも同じ生活者であるという姿勢だ。この姿勢を社内で共有するために、「北欧、暮らしの道具店」の編集方針や守るべき価値観についてまとめた「KURASHICOM BOOK 1」が製作され、世界観のぶれないコンテンツが制作できている。

 

クラシコムは、メルマガやSNS、広報といった各活動に関して、KPIを設けていない。定期的に見ている数字は、PVと読了率の2つ。数字は参考にするが、数字以外のお客さまからの感想メールやSNSでの反応、スタッフから集まる意見など、そのテーマがどのように読者に響いたかを大事にしている。

 

MVVを実務で意識する

クラシコムの強さの源泉は、ミッション・ビジョン・バリューが社内に浸透し、意思決定の基準になっていることだ。ミッション・ビジョン・バリューを完全に使いこなすことによって生まれる効果は、社内からほぼ矛盾が一掃できることだという。矛盾が一掃されると、圧倒的にコミュニケーションコストが下がり、意思決定の速度は上がる。権限委譲も楽になる。

 

同社が掲げるミッションは「フィットする暮らし、つくろう。」だ。ここで言う「フィットする」とは、着心地の良い、お気に入りのシャツを着ているような感覚のこと。「自分の人生をフィットしているように感じられれば、他の人がどんなシャツを着ているか、他の人と比べて自分のシャツが高いか安いかといったことは気にならない。すごく着心地が良くて気分が良くて、それを着ていることを喜べているのであれば、それがフィットしているという感覚」だという。

クラシコムの場合、こういうことがやりたいというよりは、「こうありたい」ということが強かった。今風にいうと、Well-Beingに近いものをミッションとして掲げている。

 

ミッション・ビジョン・バリューを社内に浸透させるためには、例えばコンテンツの編集方針など、実務の中で使うことが重要だと考えられている。

 

社員の約8割が元顧客

クラシコムの離職率は直近3期の平均で4.1%と低水準。その最大の理由は、クラシコムにフィットする人材を手間と時間をかけて採用しているからだ。クラシコムでは、創業直後から「ポテンシャル採用」を貫いてきた。しかも、中途採用でありながら、新卒採用のように「定期一括採用」を実施。クラシコムの求人情報は、公式ウェブサイトやSNS、YouTubeチャンネルといった自前のつながりのみで、一般的な求人サイトはほぼ利用していない。その代わり、自社サイトやメディア内に会社や働いている人々、働き方を紹介するコンテンツが多数ある。

採用情報の流路が顧客の接点に限定されることから、クラシコムの求人に応募する人は大半が「北欧、暮らしの道具店」の利用者となる。世界観や価値観に共感している人たちがベースとして多く、そこから実際に企業カルチャーにフィットする人材と出会っていく。

 

採用面接で意識していることは、本当に互いのことを知り合うためのコミュニケーション力があるかどうか。特にクラシコムでは、言葉でコミュニケーションを取り、その奥にあるコンテクストを理解しながら共有することを大事にしている。だから、シンプルなコミュニケーションができる人の方がフィットするという。採用活動は募集から採用が決まるまで、およそ3ヶ月もの時間をかけて行われる。

参考文献・紹介書籍