営業実行学 やりきる組織は、設計できる

発刊
2026年8月26日
ページ数
210ページ
読了目安
336分
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推薦者

営業組織を変革するために必要なこと
営業組織の変革を目指して、コンサルやSFAを導入しても、多くの組織は失敗をする。失敗の本質は戦略やツールではなく、「やり切る」ための設計が抜け落ちているからだとし、そのための解決策が提示されています。

優れた営業戦略やツールを導入しても、それを実行できなければ意味がない。いかに営業組織が施策をやり切るかに焦点を当てて、組織を動かすための設計においての要件が紹介されています。
営業組織を有効に機能させるための原理原則を理解できる内容になっています。

変革の定着不等式

「営業実行学」とは、戦略や施策を立てても現場で実行されない「実行の壁」を、精神論ではなく科学で乗り越える方法論を意味する。成果を分けるのは、戦略や施策をどう描くかではなく、それが現場で実行され、やり切るところまで設計されているかである。

 

調査では、94.6%の企業が営業の変革を定着させられていない。変革が失敗に終わる構造は次の2つの変数で捉える。

  • 変革の定着負荷:新たな戦略や施策を組織に根付かせる際にかかる、時間的・心理的な負荷
  • 組織実行力:新しい取り組みを実行・定着させる、組織の許容量

この2つの関係性は、シンプルな不等号で表すことができる。

  • 定着負荷>組織実行力 → 変革は失敗する
  • 定着負荷<組織実行力 → 変革は成功する

 

多くの現場では、この不等式の逆転が繰り返し起きている。典型的な失敗パターンは3つ。

  1. 過剰設計:「あれもこれも」で負荷が膨張する(SFAの入力項目が膨れ上がる)
  2. 隠れた落とし穴:目に見えない離脱要因を想定できない(評価につながらない、入力に時間がかかる、データが形骸化)
  3. 現状再現:変革のはずが旧来の運用の移し替えになる(Excel運用を移し替えるだけで操作が煩雑に)

 

失敗を超えるためには、「定着負荷」を下げるか、「組織実行力」を上げるかしかない。

 

定着負荷を下げる

左辺において考えるべきことは、今の組織実行力でやり切れる負荷に収め、その範囲内で最大の効果を狙うことである。そのための原則は以下の3つである。

 

①イネーブルメント仮説を見つける

今の組織実行力で確実にやり切れるように、他部署の要望よりも、売上につながる1つに集中する。売上が向上したという成功体験が生まれると、次の変革を進めるエネルギーになる。

 

イネーブルメントとは、営業領域では、一部の人ができていることを、組織全体ができる状態に引き上げる営みを指す。「一部の人はできているが、全員にはまだ広まっていない行動」の内、売上に効きそうなものを仮説として立てる。筋の良いイネーブルメント仮説には、次の4つの要件がある。

  1. N1:誰かができている実績があるか
  2. 余地:組織内でバラつきがあるか
  3. 再現性:他者が学習・模倣可能か
  4. 売上貢献:成果に直結するか

4要件を満たす仮説は、自組織の中で見つける。現場で誰かが自己流でやっているが、それが言語化されておらず、組織に広がっていないものが、仮説の最も豊かな供給源である。まずは、定量的な営業データから当たりをつけ、現場から良い行動を発見する。

 

②スモールウィンを広げる

まずは1人目の成功事例をつくり、次に1チームに広げる。成功したら複数チーム、全社へ。小さな成功体験を積み重ねながら展開していく。最初の1人の成功体験が、展開の負荷を下げてくれる。段階的展開の成否は、最初の1人、最初の1チームを誰にするかで、ほぼ決まる。誰を選ぶべきかは、次の2つの観点から考える。

  1. 新しい取り組みに前向きか:イノベーター/アーリーアダプター層
  2. 社内での影響力が強いか:発言に重みのある人

 

③仕組みで軽くする

毎日の実行に大きな負荷がかかれば、人は消耗する。施策を実行するために発生する負荷は主に3種類にあり、それぞれ対応する必要がある。

  1. 記録の負荷:施策を実行したことを残す入力負荷
    →項目を減らし、録音やGPS情報による自動入力ツールなどを利用する
  2. 把握の負荷:施策の目標値との差分を認識する負荷
    →施策レベルで追うべき数字を明確に定義し、スコアボードで現在地が見える状態をつくる
  3. 習得の負荷:できないことをできるようにする負荷
    →「何を渡すか(コンテンツ)」と「どう使えるようにするか(トレーニング)」の両方を設計する

 

組織実行力を高める

組織実行力は、次の2つの原則で高める。

 

④火をつける(動機づけをする)

人が行動を起こすかどうかは「やりたい(価値)」と「できそう(期待)」という2つの要素の掛け算で決まる。

  • 短期ゴール×できそう:N1のノウハウを共有、スモールウィンで体験させる
  • 短期ゴール×やりたい:仮説の根拠を伝え、メリットを実感させる
  • 長期ゴール×できそう:他社事例でロードマップを示す
  • 長期ゴール×やりたい:目指す営業組織ビジョンを提示する

 

「やりたい」「できそう」だけでは動かない人もいる。その時には評価や強制力といった外からの後押しをする。

  1. 評価制度・表彰との連動:組織としての価値づけ
  2. 摩擦の設計:「やらない」方に負荷をかける

 

⑤実行のリズムをつくる(日次の会議で仕組化する)

意志の力だけで変革を成し遂げられる組織はほとんどない。意志力ではなく、仕組みで回し続けることで、組織に定着する。仕組みの中でも力を持つのが定例会議の設計である。最も推奨されるのは、日次の朝会・夕会である。毎日同じ時間に、同じ場で、同じ型を回す。このリズムが身体に刻まれた時、実行は習慣になる。

参考文献・紹介書籍