能力主義では職場の問題は解決しない
誰もが頑張っているのに、やってもやっても報われず、募るのは徒労感と疲労感という職場では、個人の信じる「正しさ」が一元的で、自分以外を承認しにくい構造に陥っている。例えば、状況が改善できない部署があると「それはマネジャーの力量の問題だな。責任者を代えればいい」「メンバーが優秀じゃないから問題が起きる。もっと能力のあるヤツらを採らないと」などと決めつけてしまう。
この発想の根底にあるのは、昔ながらの古い「能力主義」である。これこそが多様なはずの人間に一元的な正しさのモノサシを当てはめ、人や職場の良し悪しを拙速に判断しようとする。能力主義では「能力」のある人が優秀だと評価され、多くを得る。優秀な人が多くいれば組織はパフォーマンスを発揮できると信じられてきた。
ところが、この古い能力主義こそが、職場が直面している問題の解決を妨げている。ギスギスした職場の状況を改善するためには、一元的な正しさで自分も他人も縛るような、古い能力主義からの脱却が必要である。
能力ではなく、人の組み合わせで「機能」を実現する
一元的な能力主義の代わりとなる配分原理では、1つのモノサシで測ろうとするのではなく、多元的に物事を見る必要がある。能力アセスメントで「優秀な」管理職を選ぼうとするのではなく、色んな人の色んな勝ちパターンを見出し、組織内での組み合わせを考える。その人の良し悪しを拙速に判断するのではなく、誰にでもある得手不得手(凹凸)を把握することから始まる。この凹凸は、「持ち味」と言い換えられる。メンバーの凹凸を組み合わせることで、組織に必要な「機能」を実現していく。
組織の業績に寄与するのは、個人が持つとされる「能力」ではなく、人と人とを組み合わせることで実現する「機能」である。これは「関係論的な機能主義」と言えるかもしれない。
組織をより良いものにつくり変える方法
①チームビルディング・ワークショップ
職場がギスギスして、パフォーマンスが落ちている状況では、まずメンバー全員が参加する「チームビルディング・ワークショップ」を開催する。現場のリーダーやメンバーは、みんなそれぞれの立場から頭を抱えている。そこでみんながそれぞれの心情を吐き出し、その頑張りを承認し合う場がまず必要になる。
そして、メンバーの声に耳を傾け、みんなが職場の観察で気づいた問題点・改善点をもとに組織の方針を合議のうえ決める。その後は進捗を確認しつつ、軌道修正もする仕組みを用意する。
②「持ち味」を組み合わせる
持ち味は、「能力」のように優劣や良し悪しを決められるものではない。持ち味は、その人の凹凸であり、考え方や行動の癖を含んでいる。人と人、人と職務を組み合わせた時のチームの力学を予見するためには、メンバーの持ち味に関する情報が必要である。
この持ち味を知るための情報の1つが、採用選考時に実施される適性検査の「性格特性パート」の結果である。この結果をもとに、2つの軸を使ってプロットする。すると、大まかな傾向がつかめる。横軸と縦軸は、その組織ごとに必要なものを定める。心理学では、人間の性格を「外向性、誠実性、協調性、開放性、神経症的傾向」という5つの基本的な特性で説明する「ビッグファイブ理論」が有名である。
組織が向かうべき方向の実現に必要な「機能」は何かを考え、その機能のセットリストをどう多様な個人の組み合わせで実現するかを検討する。
③新卒・中途のオンボーディング
新卒採用や経験者採用で入ってくれた新入社員をスムーズに組織に定着させ、戦力化するための取り組みである「オンボーディング」は、チームに加わってくれる人に敬意を持って接し、組織づくりに参加してもらうためには欠かせない。オンボーディングでは、入社する社員と仕事で密接に関わる人や、直属の上司など、3人程度でミーティングを繰り返しながら取り組んでいく。
重要なことは、四象限の図を利用してチームの力学の行方をある程度、予測した上で、準備をしておくことである。適性検査などからわかった言動パターンと、上司、OJT担当者の解釈の癖などをすべてテーブルの上に並べて、行き違いによって採用した側が抱きがちな「評価」や、自走を助けるであろう指示の出し方、声掛けのタイミング、言葉選びまで、数時間にわたってとことん話し合う。
④「モード」を選ぶ上司になる
中間管理職、経営者などが、部下に応対する時の「モード(態勢)」こそが、組織風土に大きな影響を及ぼす。相手に合わせて臨機応変に「モードを選ぶ」ことで、みんなの持ち味を引き出して、チームのパフォーマンスを上げられるようになる。上司は、それぞれの部下と接するためにモードを変えていく必要がある。