キャッシュエンジン経営とは
サイバーエージェントとライブドア、この2社の創業時の共通点とは何か。
①最初から確実に大きな売上を上げていたこと
②初期の時代に、一般の人向けの派手な事業ではなく、法人向けの地味だが堅実な事業を行っていたこと
世間からすると目立たず地味な事業で創業し、堅実に稼ぐ形で操業を続けること。こういった安定的にキャッシュを運んできてくれる事業で起業を行うことを「キャッシュエンジン起業」と呼んでいる。また、そこから生まれるキャッシュを原資にして、他の新規事業に繰り出していく経営方法を「キャッシュエンジン経営」と呼んでいる。
つまり、キャッシュエンジン起業とは、キャッシュ(日銭)を確実に稼ぎ、事業を延々と継続するための原資となるエンジンをあらかじめ持って起業する経営手法のことである。
キャッシュエンジン経営の本質
開発までにコストがかかるが、一発当たると大きな利益を生み出す事業を「キャッシュエンジン型事業」と比して「スケール型事業」と呼んでいる。スケール型の事業のメリットは、開発が終わってからは特に大きな機能などの新規開発やアップデートを行わなければ、あまり人員が必要なくなる点だ。そのため、当たれば当たるほど利益率が増大していく。
しかし、スケール型のアプリやメディアなどの自社サービス開発事業の最大の問題は、初期の開発コストが高い点である。完成までにまずお金がかかるので、最初は必ず赤字になる。収益を生み始めるのは完成してからだ。そして赤字のままヒットせずに終わることの方が圧倒的に多い。
地味だが長く堅実にキャッシュを生み続けるキャッシュエンジンを手にした上で、その潤沢なキャッシュを元手にしてスケール型の事業にチャレンジすることこそが、手堅くリスクの低い起業の方法である。
労働集約型の事業で資金をチャージし、スケール型の事業に投資する。これがキャッシュエンジン経営の本質である。
誰をバスに乗せるか
キャッシュエンジン経営は、キャッシュエンジン型事業を見つけたところで終了ではない。キャッシュエンジン型の事業を大きくしていくためには、事業を進めていくと同時に、人材を雇い、優秀なプレイヤーに育て上げて成果を最大化していくといったプロセスを踏むことが必要になる。
それは「採用→育成→最大化」の流れになるが、このプロセスを効率的に反復することでのみ、会社は成長を遂げることができる。会社を急成長させようと試みる時、組織をまとめる力こそが大切になってくる。組織をまとめるには強いカルチャーがなくてはならない。組織のマネジメントとは、カルチャーをいかにして育てていくかということと同義である。
強固なカルチャーをつくることは、人を採用するところから始まる。そのためには、会社のカルチャーに馴染んでくれそうな人を採用することが一番に必要である。優秀な人ではなく、一緒に働きたいと思う人を採用するべきである。
ビジョンを打ち立てる
マネジメントの要諦とは、「経営者がビジョンを掲げ、人を雇い、育てる中でそのビジョンを共有し、そうやって強固な独自の組織カルチャーを生み出していくことの繰り返し」に他ならない。
そのためには、まずビジョンを打ち立てる必要がある。そのビジョンやミッションと呼ばれるコアな部分となるタネの部分は、創業経営者が決める以外に方法はない。人や社会の中に存在する問題や不足に対しての気づきを言葉に落とし込んでいく。
ビジョンを社員に共感してもらうためには、そもそもビジョンに共感して、一緒に働いてくれそうな人を雇うことである。