なぜ、あなたのチームは疲れているのか?

発刊
2025年10月29日
ページ数
368ページ
読了目安
377分
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心理的リソースを消耗させないチームづくりの考え方
頑張れば頑張るほどチームが疲弊する現場では何が起きているのか。
予算や人員、工数、時間管理などでは測れない「見えない資源」である「心理的リソース」という視点に立って、チームをマネジメントする方法が紹介されています。

組織やチームを活性化させるためには、機械ではなく人であるために必要とされる「心のエネルギー」に着目して、これをマネジメントする必要があると説いています。リーダーがマネジメントにおいて、見落としがちな視点が書かれています。

心理的リソースの消耗

リーダーの仕事は、予算、人員、工数、情報、資材などのリソースを活用して「成果」につなげることである。しかし、これらのリソースが現場に十分に与えられることはほとんどない。そのため、現場のリーダーは、万全とは言えない量のリソースで成果を出すために、メンバーの目標達成率を管理したり、工数や時間管理をするなどの対策を講じる。しかし、こうした「管理強化」はたいてい逆効果に終わる。

 

ほとんどのリーダーは、予算、人員、工数などの「見える資源」の使い方には十分に意識を向けるが、それ以上にチームの成果に影響を与える「心理的リソース」という「見えない資源」の使い方には無自覚である。

私たちは常に「思考」「判断」「衝動制御」などの活動を行っており、そうした心に負荷のかかる活動を行うために、ほとんど毎秒のように「心のエネルギー」、つまり「心理的リソース」を費やしている。この心理的リソースは無限に湧き出てくるものではない。使えばすり減るし、次に使うためには回復を待たなければならない。リーダーは、この心理的リソースのマネジメントを行うことが求められる。自分のチームが停滞気味で、なんとなく疲弊していると感じるならば、メンバーたちが心理的リソースを浪費しているために、それが枯渇しかかっているという可能性を考えるべきである。

 

心理的リソースの消耗は、次から次へと連鎖し、どんどんと大きく膨れ上がってしまう。心理的リソースが奪われると、人はコミュニケーションを避けるようになる。他者とコミュニケーションをとるためには、相手の感情を読み取ったり、相手に伝わる言い方を工夫したりするために、大量の心理的リソースを要するからである。そして、コミュニケーションが減ると、業務に支障が出るようになり、思うように成果が出なくなる。すると、皆がイライラを抱え込むようになり、リーダーは成果を出さないメンバーに対する不満を募らせ、それがメンバーに伝わり、殺伐とした雰囲気が広がっていく。

 

リーダーは自らの影響力を自覚しなければならない

心理的リソースは、人が「願い」を持ち、それが叶うと信じられている時に生まれる。よって、メンバーの心理的リソースを増やすためには、リーダーは彼らの本当の「願い」を知ることから始め、それが叶うようにサポートする必要がある。もちろん、メンバーのすべての願いを叶えることはできないが、メンバーの「願い」を尊重する姿勢を見せることで、心理的リソースは回復する。自分の「願い」を叶えようとしてくれるリーダーに対して、信頼が生まれるのである。

 

リーダーにとって重要なのは、リーダー自身の無意識的な言動が、メンバーの心理的リソースを奪ってしまっている可能性もあるということである。リーダーは、チームの中でも最も周囲に対して大きな影響を与えることができる存在であるため、リーダーこそが「心理的リソース泥棒」に陥りやすい。なぜなら、リーダーは社会的地位・肩書き・権限といった「ランク」を持っているのに、そのことに無自覚であることが多いからである。何の気なしにかけた言葉が相手にとってはプレッシャーになり、心理的リソースを奪ってしまうといった現象がしばしば起きている。

 

サイパを上げる

「心理的リソースの投下に対して、どれだけの価値を生み出せているか」という「サイコロジカル・リソース・パフォーマンス(サイパ)」の視点で、会社の中の様々な活動を見直すこと。例えば、複雑な承認プロセス。これは、表面上は「必要な業務」であり、1つの承認を得るためには大して時間もかかっていないかもしれない。しかし、必要な時間は少なくても、「あの人に今お願いして大丈夫だろうか」という不安を抱えたり、待ち時間に「まだだろうか」とイライラしていれば、それは心理的リソースを奪っていることになる。

 

組織の中には「明らかに無駄遣いではないけれど、価値を生み出していない」という活動が山のようにある。「コスパ」「タイパ」だけではなく、「サイパ」の視点を加味することによって、より的確な経営判断やマネジメントができるようになる。

 

心理的リソースをチームの共通言語にすることは、チームを活性化させる上で極めて重要なことである。なぜなら、メンバー全員が心理的リソースを意識するようになることで、お互いにリソースを消耗させないように配慮し合うようになったり、チーム全体でサイパを上げる取り組みを進めることができるようになったりするからである。

まずは、リーダーが自分自身を見つめ直し、メンバーの心理的リソースを大切にする関わり方を徹底することで、1人1人のメンバーとの信頼関係をつくっていくことが大切である。その信頼関係があるからこそ、リーダーが口にした心理的リソースという言葉を、メンバーはまともに受け取ろうとしてくれる。