USPとは何か
USP(ユニーク・セリング・プロポジション)は、以下の3つから定義される。
①広告はすべて、消費者に対して提案(プロポジション)をしなければならない。
単なる言葉や、製品礼讃ではなく、「この製品を買えば、この便益が手に入ります」と言わなければならない。
②提案は、競争相手が示せないものでなければならない。
つまり、独自(ユニーク)のもので、その分野の広告ではなされていない主張である必要がある。
③提案は、数百万の人々を動かせるほど強力であり、新規顧客を引き寄せられるものでなければならない。
つまり、USPとは「独自な売りの提案」である。
USPがない広告では商品は売れない
最新の研究によれば、USPのあるキャンペーンは、広告全体の20%に満たない。他は、ショーウィンドウ的な購買につながらない広告に近い。
USPのあるキャンペーンは購入への牽引力をもたらす。さらに、浸透度も高める。単なるショーウィンドウ的広告では、他の広告に埋もれ、消費者に忘れがたい記憶を残せないことが調査でわかっている。
勝利へと続く3本の道
広告会社の進むことができる道は以下の3つである。
①商品のUSPを見つける
②クライアントに商品を改善するよう誘導する
③商品について以前は明かされていなかった情報を世間に伝え、独自性を装う
最初の2つは、どちらも最高の広告キャンペーンに結びつく可能性がある。しかし、3つ目には危険が伴う。その危険とは以下の通り。
USPには先取りの原則がある。ある分野の第一人者は、ストーリーの新奇さと新鮮さのおかげで浸透度を急上昇させることができる。例えば「口臭をストップ!」を、真っ先に唱えたリステリンから盗める者はいない。口臭をストップさせるマウスウォッシュは他に数十あるが、このUSPは消費者にとってリステリンのものである。
しかし、どんなに強力なコピーも、より優れた新商品なら先取りを突破できる。つまり、広告の仕方が同じであれば、長期的にはよりよい商品が勝利することになる。
USPを築くにはどの程度の差が必要か
広告業において、偽りの差異を強調することは、消費者の不信感と反感を買い、商業的な自殺行為になりうる。しかし、主張する差異が十分に大きければ問題ない。
・頭痛薬アナシン
アスピリンと異なり、成分配合も独自。どんな医師や専門家も、アスピリンとは異なる効果をもたらすと言う。
・ミニッツメイド
従来と根本的に異なるプロセスで水分を除去している。その結果、従来のどの冷凍濃縮ジュースより味が良い。
広告キャンペーンは頻繁に変えるな
広告キャンペーンを頻繁に変えると、浸透度は下がる。今日、市場に出回っているブランドで、過去20年間にキャンペーンを5回、10回、20回と変更しなかったものはほとんどない。
「世間はこのストーリーに飽きてきている」とメーカーは言う。しかし、商品自体が急激に流行遅れになった場合を別にすれば、浸透度が高くなったためにキャンペーンが古くなったことを示すような事態が起こったことはない。
ひとつのコンセプトに集中せよ
消費者はひとつの広告につき、ひとつの強いコンセプトだけを記憶する傾向がある。人々にどんどん浸透するような広告は、覚えやすい、心を動かすひとつの主張やコンセプトを提示する。
消費者の記憶の箱は限られている
広告されているブランドの内、消費者が記憶できるものは限られている。読んだ広告を全部覚えることなどできない。
広告のテクニックや仕掛けを使って浸透度を上げられれば、競争相手の浸透度を下げられる。消費者の頭により強いコンセプトを吹き込むことで、他社の広告のストーリーを記憶から消し、新たなストーリーに置き換えることができる。
独創性は必ずしも必要ない
消費者に注意を向けさせるのに、必ずしもショックや娯楽は必要ない。広告の作り手は商品そのものを興味深く描かなければならない。
独創性へのこだわりは、時に広告を極端な不合理に走らせる。広告とはUSPを最大多数の人々の頭に、可能な限り低コストで届ける技術である。独創性は、広告の機能主義の範囲で自制しなければならない。