データカタログとは
データカタログは、会社の中にあるデータを整理して、見やすくするツールである。「どんなデータがあるのか」「誰が管理しているのか」「どう使えるのか」という全体像を可視化して一元管理できる。
これを使えばデータに対する理解が深まり、エンジニアとの会話もスムーズになる。つまり、データカタログを使いこなせば、非エンジニアでも、ある程度データを活用できるようになる。データ活用にあたっての課題、部署ごとにデータが散らばる「データが原因のカオス」と、人材が足りなくなる「人が原因のカオス」の両方を解決できる。
そもそもデータは、中身だけでなく、背景や説明があることで資産として活かせるようになる。以前は、データの整備は人の手に頼るしかなかったが、SaaSやクラウドサービスの普及と共に「API」という仕組みを使って、データに関する情報(メタデータ)を自動で収集・反映できるようになった。そして、生成AIとの融合によって、これまで人間が手作業で担っていた、タグ付けや説明文の作成といった整備の仕事をAIが肩代わりするようになった。
近年、こうした進化を受けて「データカタログ」は、データインテリジェンスツールと呼ばれることも増えてきた。それは単なる検索の道具ではなく、データの意味や価値を引き出し、ビジネスの意思決定を支える基盤へと進化しつつある。
データカタログでできること
データカタログには、データを探す以外にたくさんの機能がある。
- 検索機能:キーワード検索とフィルターを組み合わせて、目的のデータを素早く見つける機能
- テーブル情報:データの構造や意味を、誰でも理解できるようにカルテとして共有する機能
- ダッシュボード機能:BIを「データ活用のアウトプット」として登録と共有するする機能
- データリネージュ:データがどこから来て、どこで使われているかを視覚的に把握できる機能
- ナレッジ:データの使い方や背景情報を記事形式で共有できる社内の知恵袋
- メンバーアクション:誰がどんなデータ資産にどう関わってきたかが一目でわかる、ユーザー視点のトラッキング機能
データカタログは、データを探すだけでなく「見つけた後にどう使うか」までサポートできるように進化していて、公開範囲の設定で「誰に見せるか」を制御できたり、自然言語でSQLを補助生成する機能も登場してきている。
データカタログを使いこなすための基礎知識
データカタログはデータガバナンス(データを信頼できる形に整えていく方法論やルール)やデータマネジメント(データ管理)と呼ばれる専門領域の課題を解決するソフトウェアである。
データガバナンスの領域では、4つの基本概念がある。
①メタデータ
メタデータとは「データを説明するためのデータ」のことであり、3種類ある。
- テクニカル・メタデータ:どんなデータがどこにどんな形式で保存されているか
- ビジネス・メタデータ:データが何を意味し、どう使われるか
- オペレーショナル・メタデータ:いつ、どこで、どう使われたかというデータの流れ、更新ログ、利用履歴
エンジニア、営業やマーケティング部門、データ管理者など、それぞれの立場が異なるごとに必要とされるメタデータが違ってくる。
②PII(個人情報)
PIIとは「個人を特定できる情報」のこと。データを本格的に活用するためには「様々なデータをつなぐ」ことが欠かせない。バラバラの情報を繋ぎ合わせることで、より深い洞察を得たり、より良いマーケティング施策を打つことができるようになる。
データをつなぐためには、個人を特定できる「鍵」が必要であるが、これは個人情報を保護する上でのリスクも高めてしまう。だからこそ、どのデータにPIIが含まれているかを正しく把握することが重要になる。
③データ品質
データ活用において「このデータは本当に信頼できるか?」を見極める力は欠かせない。この判断を支えるのが「データ品質」という考え方である。データカタログでは、各データに以下のようなラベルを付けることがある。
- certified(信頼できる)
- warning(注意が必要)
- fail(利用不可)
データ品質は奥が深く、この他にも「正確性」「完全性」「一貫性」「最新性」「有効性」など、様々な観点から評価している。
④データライフサイクル
データにも生まれてから使われ、やがて削除されるという一連の流れが存在する。このような流れの中で、データを取り扱う以上「いつどう使うか」「どのくらい保存するか」と同じくらい「どうやって処分するか」を考えることが重要になる。
このデータのライフサイクル全体をきちんと管理することは、これからのデータ活用には欠かせない。そして、このデータの一生を整理し、見える化し、適切に管理できるようにする仕組みこそがデータカタログである。