ワーク・シフト
働き方の未来を考える時、はっきり認識すべきなのは、これまでのキャリアの常識が通用しなくなるということ。テクノロジーの進化、グローバル化の進展、人口構成の変化と長寿化、社会の変化、エネルギー・環境問題の深刻化、この5つの要因により、仕事の世界が大きく様変わりすることを考えると、私たちは働き方をシフトさせなくてはならない。
①ゼネラリストから「連続スペシャリスト」へ
世界中の何十億人もの人々がグローバルな人材市場に加わり、コンピュータがますます雇用を奪いはじめる結果、競争が激化する。私たちは高度な専門技能を習得し、大勢のライバルから自分を差別化しなければならない。
②孤独な競争から「協力して起こすイノベーション」へ
バーチャル空間で過ごす時間が長くなり孤独となることで、イノベーションと創造性が重要となる時代、関心分野を共有する少人数のブレーン集団「ポッセ」、多様なアイデアの源となる「ビッグアイデア・クラウド」、安らぎと活力を与えてくれる現実世界の友人「自己再生のコミュニティ」、これらを意識的に築くことが不可欠である。
③大量消費から「情熱を傾けられる経験」へ
手に入るお金が増えても、それに比例して幸せが大きくなるとは限らない。これまでは、仕事とは単にお金を稼ぐことを意味していたが、未来の世界では、自分のニーズと願望に沿った複雑な経験をすることを意味するようになる。
未来を形づくる5つの要因
未来に何が待っているかを知るためには、向こう数十年の世界を形作る5つの要因について考える必要がある。これらの要因が組み合わさり、働き方の常識の数々が根底から覆る。
①テクノロジーの進化
・世界の50億人がインターネットで結ばれる。
・地球上のいたるところで「クラウド」を利用できるようになる。
・「ソーシャルな」参加が活発になる。
・バーチャル空間で働き、「アバター」を利用することが当たり前になる。
・テクノロジーが人間の労働者に取って代わる
②グローバル化の進展
・24時間・週7日休まないグローバルな世界が出現した。
・新興国が台頭した。
・中国とインドの経済が目覚ましく成長した。
・バブルの形成と崩壊が繰り返される。
・世界の様々な地域に貧困層が出現する。
③人口構成の変化と長寿化
・1980〜1995年生まれの世代の影響力が拡大する。
・寿命が長くなる。
・国境を越えた移住が活発になる。
④社会の変化
・自分を見つめ直す人が増える。
⑤エネルギー・環境問題の深刻化
・持続可能性を重んじる文化が形成されはじめる。
働き方をシフトする
今後数十年の間に、仕事の世界で多くの変化が起き、キャリアや働き方に関する古い常識が次々と葬り去られる。世界中の企業でピラミッド型の組織構造が崩れ、全員が毎日午前9時から午後5時まで働くという勤務形態が揺らぐ。昔であれば不利な状況に置かれていた国に生まれた人たちも、グローバル人材市場に加わるチャンスを手にする。一方、元々有利な状況にあった国の人々は過酷な試練を突きつけられる。
未来を形作る要因の数々は、悲惨な未来を生み出す可能性もあるし、明るい未来を生み出す可能性もある。明るい未来を切り開くためには、これまでの固定観念、知識、技能、行動パターン、習慣などを根本からシフトする必要がある。
第一のシフト:ゼネラリストから「連続スペシャリスト」へ
昔は幅広い分野の知識と技能を持つ人材が評価されたが、そういう状況は変わる。グローバル化が進展し、テクノロジーが進化して世界が一本化する時代には、同種の知識や技能をもって仕事を行える人が世界中に多く現れる。
未来の世界では、その他大勢から自分を差別化する事が重要になる。そのために、専門分野の知識と技能を高める必要がある。但し、特定の一つの分野だけでは、その価値がなくなる危険が伴うため、いくつかの専門技能を連続的に習得していかねばならない。
第二のシフト:孤独な競争から「協力して起こすイノベーション」へ
グローバル化が進展し、世界中の人々が結びつく時代には、イノベーションと創造性が極めて重要になる。そのためには、大勢の人達の能力とノウハウ、人脈を統合する以下3つが不可欠である。
・ポッセ
非常に難しい課題に取り組む時、比較的少数の信頼でき、頼りになる同志を持つことが重要となる。
・ビッグアイデア・クラウド
大規模で緩やかな人的ネットワークを持っている方が、多くの情報を入手できる可能性が高い。構成する顔ぶれの多様性が大きいほど、幅広い情報を得られる。
・自己再生のコミュニティ
バーチャル空間で活動することが増えるため、情緒面の支えと安らぎを与えてくれる現実世界の人間関係が必要となる。