経理チーム全員で共通の問題意識を持つ
「強い経理」とは、情報を分析し、経営の意思決定に必要な情報を自ら発信するという役割をしっかりと果たすことができる経理である。強い経理になるためには、業務が効率化されており、スキルの高い各経理メンバーがチームで力を発揮できるよう組織を整えなければならない。
経理業務の効率化を進めるためには、まず経理担当者全員が現状の仕事環境について共通の問題認識を持つことが必要である。なぜなら、全員の協力がなければ仕事環境の改善は進まないからである。仕事環境の問題には、個々の担当者の問題とチーム全体が直面している問題がある。特にチーム全体の問題を改善するためには、全員が守るべき作業の運用ルールを設定し、それに従うことで、より良い作業環境を実現することが可能になる。
業務効率化の第一歩は、経理部門の担当者が自身の業務に対する問題意識を持つことである。それぞれの担当者が、日々の業務で感じている不便さや面倒なことを洗い出し、それを共有することで、チーム全体の問題意識が明確になる。効率化を進めるにあたり、現状のままでもいいだろうと思う担当者にも「確かにこれは問題かも」と思ってもらえるかが重要である。
経理における仕事環境の問題と解決策
経理における仕事環境には様々な問題がある。この問題を1つずつ解決していくことで、経理業務の効率化を実現できる。
・作業状況の問題
経理担当者が日々作業する際、不便に感じていることや面倒だと感じていること。
①プロジェクト・タスク管理の問題
プロジェクトとタスクの管理として、よくあるのがやるべき作業を羅列して管理していること。一覧表を作成している場合、新しいタスクが発生するたびに、作業が増え、タスクの整理が追いつかず、結果としてダブりや不要な作業も増えていく。こうした問題を解決するには、次の4つの対策を講じる。
- 作業の洗い出し
- タスク管理の軸の設定(経理業務の目的の明確化)
- プロジェクト・タスクの再設定(タスク管理番号の付与)
- タスクに対する具体的な作業の紐付け
②煩雑な作業問題
経理業務ではシステムで対応できない作業を補完するためにExcelが頻繁に使用される。そして、よくわからないシートが羅列しており、作業の流れやファイル内で達成すべき目的がわからないといった問題が生じる。こうした問題を解決するには、次の対策を講じる。
- Excel作業の方針と運用事例の提示
- 作業ファイルの導線を整える
- 作業シートを整理する
③情報共有の問題
各担当者が作成した集計表やその根拠資料などのファイルの共有で、「閲覧したいファイルがどこにあるのかわからない」「ファイルの内容がわからない」という問題が生じる。そのため、経理部門で行うファイル保存ルールの設定が必要になる。
- プロジェクト・タスクに合わせたフォルダ体系を検討する
- フォルダ体系を維持するための運用ルールを検討する
- 1、2の内容を運用ルールに落とし込み、経理担当者へ展開する
- 運用開始
④業務引き継ぎに苦労する問題
複数のExcelファイルやシートを使った煩雑な作業が多い状況を放置すると、一部の担当者にしかわからない属人化した作業が増え、業務の引き継ぎが困難になる。作業の属人化を防ぐためには、作業フローやマニュアルの作成が必要になる。
⑤紙の資料が多い問題
紙で行っている経理業務も現行のシステムやツールで管理できないか、情報システム部門の協力を得ながらアイデアを出すことが重要である。
・個人スキルの問題
経理担当者個々人の知識や能力の差を起因とした悩み。
①Excel操作スキルの問題
経理部内で作成されるExcelの資料は、関数やマクロが使われている高度なものもあれば、関数も使わずにほぼ手入力で計算が行われているような作業効率の悪いものもある。この問題を解決するためには、以下の方法でチーム全体のExcel使用スキルを標準化することが必要になる。
- 運用方針・ルールの設定
- 基本操作の教育
②情報入手スキルの問題
情報収集の問題は、個々の経理担当者のスキルや立場に依存しており、チーム内での情報格差を生んでいる。そのため、チーム内での情報収集やスキルを標準化し、全員が同じ情報を共有できる環境を整えることが求められる。
- 社内情報がチーム内で共有できる環境(議事録や稟議書等の社内文書をまとめた一覧表作成)
- 情報収集スキルの格差を解消できる環境(会計税務情報サービスの一覧化、書籍の共有、ノウハウ共有)
③システム操作スキルの問題
システム操作に対するチーム担当者のスキルに差がある問題を解決するには、チームにおけるシステム操作スキルの標準化を行う。
- システム構成図の共有
- システムマニュアルの保存
- システム操作の簡易マニュアルの整備