マネジメント方程式
マネジメントとは戦略の実行確率を上げることである。どれだけ優れた戦略を持っていても、それが実行されなければ成果は上がらない。人は「チェック」されないと実行することが難しい生き物である。だからこそ、管理職は適切に「チェック」を行い、さらにマネジメント方程式の各要素を高めるための取り組みをすることが重要である。
「業績 = スキル × モチベーション × ベクトル(価値観)」
人が行動できない理由は、次の3つである。
- やりたいけどできない(スキル不足)
- やる気が起きない(モチベーション不足)
- やる意味がわからない(ベクトル共有不足)
これら3つの要素を適切に支援することで、「実行確率」を最大化することができ、確実に成果が上がる。そのために不可欠なのが仕組み化である。
スキルを磨く
従業員1人1人の「スキル」を高めることが、成果を最大化する重要な要素の1つである。スキル教育のポイントの1つは「守破離」という考え方。まずは「マニュアル」や「チェックリスト」などをしっかりと守ることからスキル教育を始める。マニュアルやチェックリストは「成果が出た方法」を体系的にまとめているため、最も成果に近づく教育手法である。
人を育てる時には、教えすぎても、教えなさすぎてもダメである。本人がその気になった時に教えるのが正しい。本人が望んでいない教育は、効果が薄い。そのため「教えるタイミング」を意識して教育を行う。しかし、全てのきょういくを相手が望むタイミングで行うのは手間と時間がかかるために「チェックリスト」を使う。
社員教育においては「人間性を高める心の教育」と「成果を出す実務教育」のバランスが重要である。心を磨き、ポジティブなマインドを育むことで基盤を整え、実務に直結するスキルを身につけることで、確実に成果を上げられるようになる。そこで、「スキルアップシート」と呼ばれる仕組みを構築する。スキルアップシートでは「入社1年目までにはここまでのスキルを身につけよう」「店長になる人であれば、ここまでのスキルを身につけよう」と明確な目標を設定する。求めるスキルを明確にすることで、会社、社員それぞれがスキル獲得のための取り組みを行うことができる。
モチベーションを高める
モチベーションと切っても切り離せないものが「コミュニケーション」である。コミュニケーションの取り方1つで、ハラスメントだと受け取られたり、相手のモチベーションを下げたりしてしまう。
コミュニケーションを取る際に大切にしている考え方の1つが「情と報の三角形」である。コミュニケーションとは、単に情報を伝えるだけでなく、感情的な信頼関係を土台に構築し、その上に仕事の報告や指示を乗せていくことが、成果を上げる鍵となる。
コミュニケーションは「量と質」の両面で捉えることを重視する。量とは「仕事以外の話をする回数」である。仕事以外の話をすることで、社内のコミュニケーションが円滑になり、相手に対する親近感も生まれる。そのために「グッドアンドニュー」という仕組みを取り入れ「24時間以内にあった良かったこと」を朝礼で仲間に共有するルールを取り入れている。
質とは「深さ」のことである。仕事の話やプライベートな話まで、多岐にわたる深い会話をするために、従業員との1対1の飲みの場「さし飲みの仕組み」を導入している。さし飲みの際には「自己開示の仕組み」として、「自分の取扱説明書」を作成して活用する。自分の取扱説明書には、以下のような内容が記載されている。
- 自分の特技や強み
- 褒められると嬉しい言葉
- やる気の出る環境
- 過去の私と未来の私
朝礼や飲み会以外にもコミュニケーションを円滑にする仕組みで効果的なものの1つには「EG(エマジェネティックス)」という心理測定ツールがある。自分の普通と相手の普通は違うということに気づくだけで、コミュニケーションエラーは改善される。
ベクトルを合わせる
ベクトルとは「考え方」や「方向性」を指す。考え方が違うと、言葉の受け取り方も変わってくる。これが原因でコミュニケーションエラーが発生したり、仕事の生産性が低下したりすることがある。
共通の認識を持てるようにするためには、「ベクトル用語集」という社内用語集を作成し、価値観を揃えるための勉強会を開催する。「なぜ」という部分を繰り返し伝え、価値観をすり合わせていくために勉強会を開催する。例えば「なぜその方針を行うのか」「なぜ会社のルールはそうなっているのか」といった疑問に対し、具体的な背景や理由を共有することで、従業員が腹落ちしやすくなる。
ベクトル勉強会の中では「アウトプットの場」を特に重視する。ただ聞くだけでは学習効果は低いが、「感想を言わなければならない」となると、話を聞きながら「どんな感想を言おうか」と考えるようになる。そのため真剣に話を聞くようになる。