心理的安全性があがり、成果があがる 全員経営の仕組み

発刊
2024年11月12日
ページ数
208ページ
読了目安
177分
推薦ポイント 2P
Amazonで購入する

Amazonで購入する

推薦者

心理的安全性を高めるための組織運営の事例
脳神経科学と統計学をもとに作られた心理測定ツール「エマジェネティックス」を活用し、組織の心理的安全性を向上させる取り組みをしている島屋グループの経営を紹介している一冊。

人手不足で若手の採用が難しい建設業界の中で、新卒採用に成功し、組織の若返りを実現させている同社の組織改革から、いかに社員の満足度を上げ、成果を出すかという経営の仕組みを学ぶことができます。

社員の価値観を揃えることが大切

島屋は、建材の成形加工と販売を行う会社である。主に工場・倉庫・大型施設などの非住宅用、及び一般住宅用の屋根材、外壁材を取り扱っており、外壁材の取り扱い規模は、中国地方No.1である。

国内建設市場の成熟に伴い建材業界の停滞が予測される中、島屋グループは堅調に業績を伸ばしている。また、建設業界では人手不足で若手人材の確保が難しい中、新卒採用に力を入れた結果、組織の若返りが進んでいる。島屋グループでは、現在、20代が全社員の1/3を占めている。

 

会社の業績は、社員の学歴や才能、能力で決まるのではなく、社員の価値観を揃えることで決まると考えている。いくら能力が高くても、会社の考え方に従えない人は、結果として戦力にならない。従って、新卒採用では「島屋グループの文化に共感できるかどうか」を重視している。高学歴者や成績優秀者だけを集めて組織を組んでも、組織はまとまらない。組織力を高めるためには、異なる役割を持った人たちが、全体の目標を共有して補完し合う組織をつくることが必要である。

 

社員の特性を活かす

社員各自が持ち味を発揮、活躍できる環境を整えるためには、前提として、社員の特性(持ち味)をお互いが理解することが不可欠である。そこで島屋グループでは、社員の特定を理解するために「エマジェネティックス(EG)」という分析ツールを活用している。

EGを導入したことで、社員の特性に合わせた人事異動や役割分担が可能になった。また、自分のプロファイルがわかると、社員は「自己否定」をすることが少なくなる。自分が今まで欠点だと思っていた言動が、実は特性であり、持ち味であることがわかれば、自分を卑下する必要がなくなる。

 

島屋グループの経営計画書には、全社員のプロファイルが掲載されている。相手の特性がわかれば、相手に合わせたコミュニケーションが可能になるため、社内の心理的安全性が高くなる。

社員の離職を防ぐには、コミュニケーションの量と質を向上させて、心理的安全性を高くすることが不可欠である。心理的安全性の高い組織は、他人から拒絶される不安がないため、人間関係の質が良くなる。島屋グループでは、EG以外にも様々な取り組みを通じてコミュニケーションの向上に努めている。

  • 評価面談
  • サンクスカード
  • グループ懇親会
  • レクリエーション

 

社員の本音を引き出すため、無記名の「社員アンケート」も実施している。職場環境に対する社員満足度を把握するのが目的である。寄せられた社員の本音を蔑ろにせず、真摯に改善を行う。すると社員は「自分たちの意見が尊重されている」ことを実感できる。経営幹部と社員の信頼関係を強化していくためにも、社員アンケートは有益である。

 

社員がやりたいことを実現する経営

島屋グループは、コロナ禍以降、全員経営に向けた組織改善を進めている。「社員のやりたい事業ができる環境を整える」ためである。全員経営とは、社長がトップダウンですべての方針、計画を決めるのではなく、現場主導のボトムアップで経営計画を立案する経営スタイルである。ボトムアップ経営には以下のメリットがある。

  • 現場主導の改善が進む
  • 社員の主体性が醸成される
  • 社員の「参画意識」が高まる
  • 今までとは違う観点で新規事業を立ち上げることができる

 

社員のアイデアや提案を汲み上げた方が、社内に創造性をもたらすことができる。島屋グループでは、定期的な面談のほかに、社員に「自己申告書」の提出を義務付けている。現在の仕事に対する自己評価や満足度の他に、今後のキャリアに関する要望、担当したい仕事などを把握することが目的である。

社員から新規事業の提案があった場合、頭ごなしに「ノー」と否決することはない。「失敗の可能性が高いからやめよう」ではなく、「どうすれば実現できるか考えよう」と、建設的に検討する。社員に「やりたい」ことがあるなら、任せてみる。新しい事業にチャレンジして、それに向けて具体的に動き出すという行動力と現場力は、必ず会社の財産になる。

 

但し、社員が「やりたいことがやれる」ことと、「やりたくないことはやらない」ことは、同じではない。企業経営には「やりたくないけれど、必要不可欠なこと」がある。与えられた仕事に対して、腐らずに、愚直に、真面目に、地道に、誠実に取り組み続ける社員には「やりたいことをやりたいと主張する権利」を認めている。