優勝を目指すための日常を構築する
優勝を狙うから、優勝チームになれる。2位でいいという考えでは、そこにすら届かない可能性が十分ある。優勝を目指すためには、そのための「日常」を構築する必要がある。チームが優勝を目指す理由はそこにある。勝者のメンタリティをチーム内に根付かせるため、細部にこだわり「心技体」におけるハイレベルを意識させ、徹底して積み上げていく。日々の「継続」が、無意識の「習慣」となるよう、繰り返し浸透させていく。
優勝するチームと準優勝に終わるチームには大きな違いがある。頂点に辿り着くために必要なのは「思考」と「実践」、「習慣」である。優勝するチームは、隙がない。選手やスタッフ、すべてのメンバーの思考や実践値が違う。勝つための思考をチームや組織全体で共有し、実践できるチームは強い。
もう1つ大事な要素が習慣である。勝つための習慣というものがあって、いかに早い段階でチーム内にこの習慣を浸透させることができるかが大事である。そうすることでチームから良い発想、良い判断、良い行動が自然に生まれてくる。これが組織を蘇生させる「鍵」になる。
原理原則を徹底させる
チーム改革で最も大事なのは、いつでも立ち返ることのできる原理原則、すなわちチームの「寄りどころ」が絶対に必要である。それがあれば、チームの方向性がブレず、問題が起きてもチームは大崩れせずにコントロールできる。
サッカーはシーズンを通して勝つ時もあれば、負ける時もある。負けた時や、不具合が生じた時には、チームで掲げたベースに立ち返って、軌道修正し再構築していく。
スタッフは常に一体
短期間で根本的にチームや組織を変えるには「原理原則の徹底」「選手の思考や意識を変えること」、これに加えて大事なことが「スタッフの存在」である。青森山田の頃からスタッフやコーチを「1つのチーム」と考えていて大事にしている。監督がすべての主導権を握る必要はない。
みんなが気持ちよく責任感を持って、全力で仕事に取り組み、みんなで勝利に向かって進んでいく。「歓喜」も「悲劇」もみんなで心から共感できることが大事である。
「失敗の原因」を明確にする
「常勝組織」の秘訣は、「負けないこと」である。勝つ、ではなく、負けない。
Jリーグでも負けることや引き分けることは必ず起こるが、そこで意識すべきことは絶対に「連敗」しないこと。連敗しないためには、引き分けた時、負けた時に、その原因をチームでしっかり共有することである。同じ失敗が繰り返し起こらないよう徹底して原因を突き詰める。失敗の原因を共有するために、ベースづくりをシーズン前のキャンプから細部にわたって浸透させる。
そして、負けた時に、このベースという原理原則に立ち返って、できていなかったことや失点の原因を洗い出す。すぐにベースに立ち返り、早期に改善することができれば、大崩れすることなく再び結束力を深めチームとして同じ方向へ進むことができる。
ポジティブ要素の整理、マイナス因子の排除
勝ち続けるための条件は、勝つために必要なポジティブ要素を上手く整理し、負ける原因となる可能性のあるマイナス因子をどれだけ排除できるかである。
勝った時にポジティブなアプローチでチームを称賛しすぎたり、良かったところだけを取り上げて褒め称えるのは絶対ダメである。試合中に生じたあらゆる失敗因子や不安因子を抽出し、わずかでも負ける原因となる可能性のあった現象について、徹底追求していくことが重要である。
試合で幾度となく起こる失敗こそが「負けるチームの悪い習慣」であり、それをチーム全体で明確にしていくことで、同じ失敗を2度と繰り返さないという、危機感溢れるチーム状態に導いていく。これこそが「負けない組織」の作り方の本質である。常勝軍団であるためには、負けない組織をいかに構築していくか、いかにその状態を維持継続していくかが肝心である。
「継続」と「習慣」の決定的な違いを理解する
「良い習慣」こそが個人のポテンシャルを最大限に発揮させ、強い組織を作り、最高の結果をもたらす。重要なのは「継続」と「習慣」の決定的な違いを理解すること。
良い思考や行動は、継続するだけでなく、習慣にしなければならない。継続は意識的だが、習慣は無意識に行うことができる。つまり、習慣化されると最適なプレーが無意識に、自動的に選択され、自然にピッチ上での実践や行動に繋がる。
なお「悪い習慣」も無意識に発動されるので、これを放置してはならない。これは「組織低迷」や「組織崩壊」の入り口と捉え、危機的状況と認識すべきである。「良い習慣」の継続と「悪い習慣」の排除を、ずっと徹底している。