富士通式! 営業のデジタルシフト カルチャーを変え、売上の壁を超える方法

発刊
2024年8月26日
ページ数
240ページ
読了目安
269分
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推薦者

大企業で営業組織を変革する方法
富士通において、従来型の営業組織から、The Model型の営業組織へと変革させていった取り組みが紹介されている一冊。

営業マン個人個人が、既存顧客の専属担当となる従来型の営業組織では、新規の売上を創出することが難しく、生産性も低いとし、役割を分担し、データを一元管理することで、効率の良い営業組織をつくる必要性を説いています。
大企業において、従来型の営業組織の限界を感じ、営業組織の改革に必要性を感じている担当者向きの内容です。

デジタルセールスの役割

デジタルセールスは、データを十分に活用する売り方を確立し、富士通グループの営業部門のDX推進に貢献する組織である。組織としての使命はBtoB領域における新規顧客の開拓を目指し、その方法として電話やメールなどを活用する非対面型の営業(インサイドセールス)を行う。

インサイドセールスには、次の2種類の業務がある。

  • SDR(インバウンド型営業)
    イベントやキャンペーンによってリードを獲得し、フォローコールから顧客情報やニーズをヒアリング、商品を販売する業務
  • BDR(アウトバウンド型営業)
    マーケティングから引き継ぐリードの開拓と精査のみならず、外勤型営業であるフィールドセールスが狙いたい企業や経営方針として開拓したい業界などにアプローチする業務

 

デジタルセールスはSDRやカスタマーサクセスの機能も含みつつ、営業方法の変革という点ではBDRの機能を果たす。複数ある社内の営業部門や商品部門と連携しながら、彼らが狙いたい顧客、具体的には受注金額が大きく、クロスセルやアップセルが狙える顧客を対象として、ニーズを聞き出し、フィールドセールスがアプローチするための決裁者やキーパーソンを自らの手で探し出す役割を持つ。

 

営業DXの効果

営業DXは、営業活動に関わる部門や従業員がデータを共有し、活用できるようにする。その効果は次の3つ。

①営業活動の可視化

従来の営業活動は、営業担当者が自分の案件を自分だけで把握し、デスクトップ上のエクセルや頭の中で進捗状況を管理していた。しかし、CRMなどのシステムでデータ共有できる環境をつくれば、営業案件活動の進捗状況を可視化できる。経営も各部門も確度が高い予実管理の実現が可能になる。

 

②データ活用の促進

顧客、売上、市場などのデータを分析することで、日々の業務の中にある「ムリ、ムダ、ムラ」を抑えることができ、営業活動の生産性が向上する。そのためにはデータを使いやすい状態で運用する必要があり、同時に、営業に携わる人にデータを積極的に使う意識と習慣を定着させる必要もある。

 

③営業活動全体の再構築

大企業の営業活動は、既存顧客に専属の営業担当者をつけて、顧客から定期的な受注を獲得したり、部門内や近隣の部門からの紹介によって顧客からの案件を獲得するケースが多い。この方法では売上を増やす効果が限定的である。この状況を変えるには、既存顧客からの売上をストックとして維持しつつ、一方で新規顧客からの売上をフローで重ねることで、営業活動の生産性を大きく伸ばす必要がある。

 

営業と経営を味方にしてDXを推進する

営業DX推進には、営業や経営をはじめとするデジタルセールス外から理解や協力を獲得するための外向きの施策と、デジタルセールスのメンバー内で目標やKPIを設定したり、成長に向けたロードマップを策定する内向きの施策がある。

 

①外向きの施策

DXプロジェクトが頓挫する企業のほとんどでは、次の目的のどちらか、または両方を達成できておらず、表面的な取り組みで終わっている。

  1. フィールドセールスにデジタルセールスの価値を理解してもらう
  2. 経営層にデータ活用と営業DXの価値を理解してもらう

 

富士通の改革では、フィールドセールスの理解獲得から手をつけた。そのための道筋は、フィールドセールスが狙いたい企業や業界をデジタルセールスが提案し、アプローチのためのプロセスを構築することである。受注が増えれば、DXやデジタルセールスに対する期待が膨らみ、「バディ」の関係性が構築しやすくなる。

フィールドセールスが専門分業化の価値を理解し、「デジタルセールスから引き継ぐ新規案件の中にダイヤモンドの原石が含まれている」と認識されれば、その後の営業DXは自走していく。まず興味や関心のあるイノベーター的なフィールドセールスとともにPOCから取り組むのがよい。

 

現場の理解がある程度進んだ後、経営層の納得を得るための施策に着手する。「役員の了承を得ています」と言える状態まで外堀を固め、DX推進が会社の公の取り組みであると証明する。

 

②内向きの施策

デジタルセールスを一体感ある組織にまとめるためには、自分たちの役割を明確にし、共有することが必要である。変革を目指す環境づくりと挑戦する目的を伝えることで徐々にチームとして団結する。

これからデジタルセールスを立ち上げるならば、マーケティングの中にSDR機能を持つチームをつくり、BDRへと広げていく方法が近道である。また、全社DXの推進を担う部門からスタートする場合は、顧客開拓や売上獲得に直接関わり、営業現場を理解することが重要である。また、スモールスタートで立ち上げ、小さな成果を積み重ねるとよい。

 

役割と立ち位置を明確にしたら、今後の活動や成長を示すロードマップをつくる。組織内で成長過程を共有すると、メンバーの目線を一枚岩にすることができる。