アップル 驚異のエクスペリエンス ―顧客を大ファンに変える「アップルストア」の法則

発刊
2013年1月24日
ページ数
396ページ
読了目安
537分
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アップルストアに学ぶ顧客を満足させるための法則
アップルの成功要因として、製品やデザインではなく、アップルストアの顧客体験に注目して書かれた1冊。どのようにして、顧客を満足させ、ファンに変えるのか。来店者累計10億人の最高の小売店の成功の秘密を解き明かしている。

暮らしを豊かにする

ディズニーやフォーシーズンズ、ザッポス、アップルなど、優れた顧客サービスで有名なブランドを研究すると、結局のところコミュニケーションに問題が集約される。従業員に何をどう伝えるのか、また、その従業員が顧客に何を伝えるのか、がポイントなのだ。実際にスティーブ・ジョブズ自身も認めているように、アップルストアはフォーシーズンズを参考にしている。

アップルの従業員には、アップルストアを支えるビジョンが記された理念カードが渡されている。書かれた言葉の最初は「暮らしを豊かにする」である。従業員の暮らしを豊かにすれば、皆、熱心に働いてくれるようになり、優れた顧客サービスも提供すれば、辞める人も減る。顧客やクライアントの暮らしを豊かにすれば、取引を増やしてもらえるし、熱烈なファンとなって宣伝してくれるようになる。「暮らしを豊かにする」を基本にすると、魔法のようなことが起きるのだ。

フォーシーズンズならどうするか

アップルストアで実現されたイノベーションの中には、フォーシーズンズからインスピレーションを得たものもある。まず、フォーシーズンズにはキャッシャーがない。置かれているのはコンシェルジュだ。アップルストアも、生まれた頃には「コンシェルジュ」が顧客を出迎えていた。

アップルがもう一つコピーしたのがバーだ。アップルストアには、フォーシーズンズと同じようにバーがある。違いはひとつだけ。アップルの「ジーニアスバー」はアドバイスを提供する。

フィードバックループを育む

アップルは、常に、顧客の声に耳を傾ける。それどころか、社内の顧客に対しても社外の顧客に対しても、フィードバックを積極的に求める。フィードバックがなければ、アップル・エクスペリエンスは生まれない。

アップルでは、従業員が安心して自分の意見を言ったり提案したりできる雰囲気をマネージャーが作っている。フィードバックは、接客の記憶が新しい内の方が効果的だ。アップルストアでは、売り上げたすぐ後、「今の体験はどうだったと思う?」といったフィードバックに入る事が多い。このようなフィードバックループがあると、スタッフと顧客による体験が、充実したリッチなものになる。

人々を感動させるブランドをつくりたいと思うなら、適切な人を採用し、適切な文化を醸成し、その文化が生き残れるようにフィードバックをし続けなければならない。

アップルが使うサービスの5ステップ

アップルストアの従業員は、以下の5ステップで忘れられないリッチな体験を顧客に提供する。

①顧客を、それぞれに適した温かい挨拶で出迎える
来店者一人ひとりに対し、その人に合った体験を提供しようという意欲を持ち、気さくな笑顔とアイコンタクトで出迎える事が大事である。温かい挨拶には、大事にされていると人々に感じさせる力がある。

②顧客のニーズを丁寧に聞き出して理解する
アップルストアでは、3種類の方法で探りを入れる。
・自由に答えられる質問をする
・意味のある会話をするように顧客を誘導する
・会話に自分も参加する

③顧客に解決策を提示する

④課題や懸念などをしっかりと聞いて解決する
顧客の疑問に耳を傾け、その懸念を解消すると共に、解決すればどのようなメリットがあるのか理解してもらう。

⑤温かい別れと次回の来店をうながす言葉で別れる
アップルストアで買い物をすると、最後に必ずと言っていいほど、お祝いの言葉をかけられる。今日の買い物でこれからこんないい事があるはずだと言われると、「あ、やっぱり買ってよかったな」と思うものだ。

アップルをはじめ、顧客サービスの雄と言われるところは、大切にされたと顧客に感じさせるから成功している。

顧客の体内時計をリセットする

アップルは、温かくて親しげな挨拶で出迎えると、顧客の体内時計をスローダウンできる事を理解している。うまくやれば、接客まで15分待たせても、ほんの2〜3分に感じられたりする。

混雑しているお店に入る時、人は延々待たされるだろうと考えるが、アップルストアではそうならない。店内に入った瞬間、自分の存在を認めてもらえる。その結果、体内時計はリセットされ、時間の流れがゆっくりになる。対応できるまで3〜5分かかると店員に告げられると、また体内時計はリセットされる。顧客は定員の提案に従い、iPadをいじり始めると、また体内時計をリセットされる。スペシャリストや店員が通りかかり、にっこり笑って声をかける。これでまた体内時計はリセットされる。

体内時計のリセットはアップル・エクスペリエンスの中核をなすコンセプトであり、アップルストアでは常に注意が払われている。

メリットを売り込む

アップルストアの従業員は、アップルの製品の背景にあるメリットを売り込むように教育されている。ジョブズもプレゼンのたびに「なぜ皆さんが気にかけなければならないのか」に対する答えを上手に提供していた。

あなたの製品やサービスなど、気にする人はいない。人々が気にするのは、その製品やサービスが何をしてくれるのか、である。アップル・エクスペリエンスでは、メリットの訴求が大きな役割を果たしている。