BIG THINGS どデカいことを成し遂げたヤツらはなにをしたのか?

発刊
2024年4月24日
ページ数
400ページ
読了目安
460分
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大きなプロジェクトが失敗する原因
大規模な建設プロジェクトやシステム開発など、あらゆる大型プロジェクトのほとんどは失敗する。人間が及ぼす心理メカニズムや権力といったプロジェクトに影響を与える要因を解説し、どのようにすれば大型プロジェクトが成功するのかを紹介しています。

政治的な要素が大きく関係していくる大型プロジェクトに携わる人、大型プロジェクトを主導する人にとって、参考になる教訓が書かれています。

ほとんどの大型プロジェクトは失敗する

大きいプロジェクトの成否を分ける普遍的な要因の1つは、人間の心理メカニズムである。人間の思考と判断、決定には、楽観主義などの心理メカニズムが必ず作用する。もう1つの要因は、権力だ。どんな大型プロジェクトでも、人や組織が資源を求めて競争し、地位を求めて画策する。そして競争と画策には必ず権力が絡む。

 

心理と権力は、高層ビルの建設など、あらゆる規模のプロジェクトに影響を及ぼす。このような普遍的な要因が作用するからこそ、あらゆるタイプのプロジェクトには共通の「パターン」が存在する。最もよく見られるのが「すばやく考え、ゆっくり動く」という失敗するプロジェクトに共通の特徴だ。プロジェクトは承認され、期待と興奮の中で工事が始まる。だがたちまち問題が噴出し、進捗が遅れる。さらに多くの問題が発生し、さらに進捗が遅れる。プロジェクトはズルズルと長引く。

 

プロジェクトは「一定の期日までに、一定のコストで完成させ、一定の便益をもたらす」という約束の下で実行される。しかし、136カ国の20種類超の計16000件を超えるプロジェクトを調査した結果、予算内・工期内に完了するプロジェクトは、全体の8.5%に過ぎない。予算・工期・便益の3点ともクリアするプロジェクトは、わずか0.5%だ。しかも、ほとんどの大型プロジェクトは、ただ計画通り実現しないリスクがあるだけでなく、破滅的な失敗に終わるリスクがある。

 

大型プロジェクトが失敗する原因

失敗するプロジェクトはズルズル長引きがちだが、成功するプロジェクトはスイスイ進んで完了する。成功のカギは「ゆっくり考え、すばやく動く」だ。だが、大抵の大型プロジェクトは「ゆっくり考え、すばやく動く」方式で進められることはない。

大型プロジェクトが失敗する原因には、以下のものがある。

 

①戦略的虚偽表明

戦略的目的のために、情報を意図的かつ体系的に歪めたりごまかしたりする傾向。契約を勝ち取りたい時や、プロジェクトの承認を得たい時は、表面的な計画が都合が良い。

 

②心理メカニズム

人間は極めて楽観的で、自信過剰に陥りやすい。大型プロジェクトを構想し、実現させるには、楽観主義と「やればできる」の姿勢は必要だ。しかし、楽観主義が過ぎると、非現実的な予測を立て、目的を見極めず、より良い選択肢を見過ごし、問題の特定も対処もせず、不足の事態に備えなくなる。

さらに、人は重要な意思決定を下す時でさえ、慎重な検討は行わない。最初に頭に浮かんだ選択肢をもとに、頭の中ですばやくシュミレーションを行う。うまくいくようならそれを実行するし、そうでなければ、次の選択肢をもとにまた同じ手順を繰り返す。そして、その予測は間違っている可能性がとても高い。多くは「ベストケース」のシナリオを想像している。

 

プロジェクトの規模が拡大し、意思決定が及ぼす影響が大きくなればなるほど、お金や権力がものをいうようになる。強力な個人や組織が決定を下し、利害関係者の数が増え、それぞれが自分の利益のために行動すると「政治」が幅を利かせる。そして重点は心理から戦略的虚偽表明へとシフトする。

 

成功するプロジェクトの基本

プロジェクトを始める時には、手段と目的のもつれをほどいて、「自分は何を達成したいのか」をじっくり考え、心理メカニズムのせいで性急な結論に飛びつきたくなる衝動に、なんとかしてストップをかけなくてはならない。十分な情報をもとに「何のために、なぜやるのか」を明確に理解すること、そして最初から最後までそれを決して見失わないことが、成功するプロジェクトの基本である。

 

優れた計画立案の特徴はラテン語の動詞「エクスペリリ(実験+経験)」に捉えられる。実験を通して経験を生み出していく「経験的学習」である。計画立案での「実験」では、プロジェクトのシュミレーションを行う必要がある。条件を色々変更して、どうなるかを模擬体験する。試行錯誤と真剣な検証を経て、シュミレーションは信頼性の高い計画になる。

計画を立てる間に、打てるだけの手を打っておくこと。そして、計画はエクスペリリをもとに、ゆっくり、徹底的に、反復的に立てることが大切である。

 

経験を最大限活用せよ

プロジェクトを成功させるためには、人々の生きた経験を活用することも大切だ。大型プロジェクトの計画立案と実行においては、経験豊富なチームを率いる経験豊富なリーダーに勝る資産はない。

 

人間が所有し利用できる最も有用な知識の多くは、形式知ではなく「暗黙知」である。専門家の直感は、適切な条件下では非常に信頼性が高い。経験豊富なリーダーが「直感」で始めて、検証し調整するという反復性の高いプロセスを用いれば、鬼に金棒である。

過去に何度も成功しているデザインやシステム、プロセス、テクニックがあるなら、微調整を加えたり、他の実証済みのものと組み合わせたりするなどして活用すること。

 

参考文献・紹介書籍