幸せの経営学

発刊
2014年10月31日
ページ数
240ページ
読了目安
374分
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経営学の基本
マーケティング、戦略、イノベーション、リーダーシップ、会計などの経営学の基礎をわかりやすく紹介している本です。よりよい社会をつくるために経営学をいかに活用するかという考え方が示されています。

なぜ経営学を学ぶべきなのか

経営とは、目的を達成するために、ヒト、モノ、カネというリソースを最適に分配しようとする活動である。つまり、経営とは、目的を達成するための手段であり、目的のないところには存在しえない概念である。経営学のルーツには忘れてはならない3人がいる。

 

・テイラー:科学的な視点から事業の状況を測定
・ファイヨール:経営者の視点から測定された状況を分割管理
・フォード:経営学的な思想を実務に導入

経営学とは「測定と管理」の学問である。いかに測定し、いかに管理するのか。近代的な経営学はこの2つの問いを継続的に繰り返していく事である。

 

経営学は、究極的には「人間を幸福にする」という明確な目的を持った学問である。よって、経営学の知識は、ビジネスを超えてより広い範囲に活用されるべきものである。

人間が幸福を感じるためには、次の5つの要素が必要である。

①仕事のやりがいがあること
②人間関係が充実していること
③経済的に満たされていること
④心身が健康であること
⑤地域社会が活性化していること

 

これらの要素は、それぞれが完全に独立しているのではなく、お互いが緩やかに関係している。よって、全部の要素での充実を目指した方が、結果として合理的になる可能性も高い。

さらに幸福は伝染する。他者を幸福にする事で、自らも幸福になるという事が経営学を学ぶ意義である。

 

イノベーション論

人間が仕事に幸福を感じるためには、自らの仕事によって、超固体に幸福をもたらしていると実感できる事が重要である。そのため、新たな雇用を生み出す事の意義を忘れるべきではない。より多くの雇用を生み出すためには、本質的に、より重要な問題を解決するような、これまでにない商品を開発しなければならない。「重要な問題をこれまでにないやり方で解決し、結果として多くの雇用を生み出す」ためにこそ、イノベーション論が存在する。

 

何を問題として選定するかによって、その後の問題解決によって生み出せる付加価値は大きく変わる。人類が抱えている本質的な問題は3つに集約される。

①有限の地球(資源の枯渇)
②高齢化する社会(買う人もつくる人もいない社会)
③爆発する知識(増え続ける情報の整理・理解・活用)

進むべき道は、まず社会的に重要と考えられている問題を吟味してから、そこで自らのソリューションの質を高めるべく、イノベーションとなる解を磨き込む事である。

 

目利きが大切

個人のキャリア開発においても、企業経営においても「差別化」は最も重要な概念である。「差別化」の目的は、破壊される「あっても、なくてもいい商品」をつくってしまう事を慎重に避け、「なくてはならない商品」を生み出す事である。「差別化」されていない「似たようなもの」は、運命的に「供給過多」になり、勝ち目のない競争(レッド・オーシャン)に陥る。さらにはイノベーターにとっての格好のターゲットになり、異分野からの参入を呼び込みやすくなる。

 

こうした負のスパイラルから抜け出し、イノベーションを起こすのは「目利き」である。「目利き」があればこそ、競合の平均値から遠く離れたところに、新たな「本物」を生み出す事ができる。

 

マーケティングとは

マーケティングの目的は、イノベーションを「目利き」に見つけてもらう事にある。「目利き」には「価格」と「品質」のみならず、その商品を生み出した人々の「想い」に共感してもらう必要がある。「理念が投影された商品を通して、目利きといえる人々に理念に共感してもらう事で、社会のあり方を変える」ためにこそマーケティングが存在している。経営学における、マーケティングには3つの代表的な定義がある。

①ドラッカー:販売活動を不要にすること
②コトラー:顧客を分類し、ターゲットを絞り込み、そのターゲットに対して高い価値を提供し、利益をあげる活動
③レビット:顧客を惹き付け、維持するという企業目的を達成するために、総力を挙げてやらなければならないすべてのこと

 

イノベーションとマーケティングは本来一体のものであり、車の両輪のように、お互いを支え合うべきである。イノベーションのないところにマーケティングが用いられる時、長期的には必ず信頼が失われ、ブランドが毀損される。信頼を犠牲にしてまで、利益を生み出そうとすれば、その組織は必ず衰退する事になる。

 

マーケティングと心理学

人間の求めるものが、物質的なものから精神的なものへと急速に変化している時代にあって、無意識を無視したマーケティングはあり得ない。実際の顧客の消費行動の大部分は、水面下の無意識に依存している。そもそも「顧客は合理的で一貫した判断によって商品を選択している」というのが幻想である。

 

水面下の無意識にアプローチするには、心理学が必要となる。マーケティングに応用される心理学で代表的なものが3つ。

①単純接触効果:人間のある対象への高感度は、その対象との接触回数に依存する
②ディドロ効果:人間は本当的に「統一感」を好み、人から「一貫している」と思われたい
③ハロー効果:人間がある対象を評価しようとする時、顕著な特徴に引っぱられるようにして、他の特徴についての評価が歪められる