セゾンファクトリー 社員と熱狂する経営

発刊
2014年12月5日
ページ数
224ページ
読了目安
200分
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社員の育てかた、心の磨きかた
1本4000円を超えるような高級ジャムやジュースなどを製造販売しているセゾンファクトリーの経営が紹介されている本。ブランドを築くためには、人づくりこそが大切であるとし、超体育会主義を徹底した人材育成の手法が語られています。

ブランドづくりは人づくり

想像を超えたおいしさ。30年近く前に食品加工会社セゾンファクトリーを創業してから一貫して追求してきた事だ。セゾンファクトリーという社名は「旬の工場」を意味する。手がけているのは、ジャム、ジュース、ドレッシングをはじめとする瓶詰めの食品が中心となっている。商品化するためには季節ごとに最高の素材を使い、最高の方法によって加工しなければならない。ジュースやジャムの中には1点で4000円を超える商品があり、販売価格は安いわけではない。

 

おいしさによってブランドを築くのは並大抵の事ではない。「松竹梅」で言う松のさらに上、「松の上」のブランドをつくるためには、それに見合った社員を育成する必要がある。ブランドづくりは人づくりそのものだ。そのためのキーワードが「超体育会主義」だ。「決めた事を全員で全力で取り組む」というのが、セゾンファクトリーが最も大切にしている価値観である。

 

イベントで団結力を養う

あらゆる組織の中で、学校の体育会、運動部こそが理想的ではないか。体育会とは、勝利という共通した目標に向かって、所属するメンバー一人ひとりが目線を揃えて進んでいく集団だ。各部員は決意を持って日々の練習で自分を高めなければならないし、チームとしてもあらゆる局面を想定しながら準備しなければならない。「そこまでしなくてもいい」と妥協していては優勝できないため、いつも本気で取り組み、前に進み続けるしかない。

 

想像を超えたおいしさを実現するには、一緒に汗を流す社員が不可欠になる。いつも社員が社長の指示で動いているのでは、それはあくまで「やらされている」だけであり、一人ひとりが持っている最大限の力を発揮する事はできない。むしろ体育会のメンバーが勝利を目指して黙々と日々の練習に取り組むのと同じように、社員が自らの目標に向かって毎日の業務に取り組んでいく必要がある。

 

大切なのは、明るく前向きな気持ちで取り組む事だ。そこで、楽しみながら全力で取り組む気持ちを育んでもらうために、イベントに力を入れている。ビアパーティー、芋煮会、体育祭、戦うクリスマス。イベントの準備作業や当日の進行にあたって、社員に繰り返し強調しているのは「バカになれ」という事だ。バカになってやらなければ、何も生まれない。

 

とにかくイベントに集中する。皆が同じ目線に立って全力で取り組み、力を注ぐ事によって初めて見えてくる事がある。特に大切なのは団結力だ。皆が力を合わせれば大概の事ができ、その積み重ねこそが会社の力になる。

イベントでは毎回、若手社員を中心とした約10人のメンバーによる実行委員会を組織し、企画や運営を任せる。原則として実行委員会に対して口出しをしない。伝えるのは「自分達で考え、オリジナルで前年よりも素晴らしいイベントに仕上げて欲しい」という事だけだ。

 

声の大きさとトイレ掃除で心を磨く

社員を育成する上で、超体育会主義が大きなポイントになる。普段心がけている事は次の通り。

 

・大きな声で伝える
社員が大きな声で話していれば、内容はしっかり伝わり、相手に対して自信を持って商談に臨んでいる印象を与える。また、朝礼の場では、お腹の底から声を出す事によって、一人ひとりが士気を高めている。ビジネスは利口なだけでは絶対に拡大できない。能力や経験がある人が本気で取り組むからこそ売上が伸びるし、利益を増やす事ができる。その象徴が声の大きさである。

 

・トイレを一生懸命磨く
トイレを一生懸命磨くと、自然と心が落ち着いてくる。掃除を続けていると、トイレが少しでも汚れていると許せなくなる。そこまでくると、会社の隅々にまで気配りができるようになっている。すると、業務に取り組む姿勢も一変する。