アトツギベンチャー思考 社長になるまでにやっておく55のこと

発刊
2023年10月5日
ページ数
220ページ
読了目安
266分
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家業を継ぐ後継者が考えておくべきこと
家業を継ぐ者が、元々の事業のリソースを使って、新たな領域に事業展開する手法「ベンチャー型事業承継」を提唱する著者が、後継ぎがどのように事業承継をして、新規事業を立ち上げれば良いのかを紹介している一冊。

事業環境が大きく変化している状況において、家業をどのように引き継ぎ、新たに事業を発展させれば良いのか、その考え方が書かれています。

アトツギにとって他業界の探索が重要

ベンチャー型事業承継とは、同族企業のアトツギが世代交代を機に、先代から受け継いできた有形・無形の経営資源をベースにしながら新規事業、業態転換、新市場参入など、新たな領域に挑戦することを指す。その狙いは、永続的な経営を目指すと同時に、社会に新たな価値を生み出すことである。

 

今は特定の業界、業種だけを知っていても安心できない時代である。業界、業種、業態の境はどんどんなくなっている。むしろ他業界の経験やネットワークが将来の財産になる。家業にないものを持ち帰るのが、アトツギの役目である。家業以外で自分が熱狂できる領域や得意分野を持っておくことは、後になって武器になる。

 

早い段階から家業に関われ

同族企業の事業承継は、継ぐ側も継がせる側も大きな覚悟と責任が伴うため、意思決定が先送りにされがちである。親子や家族でしっかりコミュニケーションを撮ることもないまま、この問題が放置されているケースがほとんどである。

「継ぐか、継がないか」という大きな決断を性急に行わないために「早い段階で何らかの形で家業に関わってみる」のが良い。体力も気力もある若い時こそ「どちらも」取り組むのが一案である。

 

なるべく多くのアトツギとつながっておく

経営者になるまでの、アトツギ時代の悩みは独特である。同族企業は、会社の数だけ事情が違い、ロジカルな解決法がなかなか通用しないし、先代や古参の社員に「忖度」している内に、自分自身をどんどん見失って行きがちである。そんな時は、自分と同じような境遇にいるアトツギの体験や考え方になるべくたくさん触れる環境に身を置くこと。多くのアトツギの体験談をシャワーのように浴びている内に「自分自身にとって心地よい経営判断の軸」がだんだん見えてくる。

以前は地元の経営者団体に所属するぐらいしか、他のアトツギとつながる選択肢はなかった。しかし、最近はオンラインでもコミュニティが多数誕生しており、地域を越えて後継同士がつながる手段が増えている。

 

まず家業の現状を知ることから始める

社長になるまでのアトツギ時代こそ、将来の売上高の新たな柱となる事業の種をまいておく時期である。社長に就任してしまうと、既存事業の維持拡大、人事、銀行との付き合いなど日々の仕事に忙殺され、新規事業どころではない。

とは言え、家業のことを理解しないまま、流行りのキーワードに乗っかった表面的な新規事業を立案したところで、家業の本質的な強みを生かした事業には育たない。このため、家業に入社してまず取り組むべきは、家業を徹底的に理解することである。

 

家業の置かれた状況を知るために、現在のビジネスの売上高を構成している商品、サービスや取引先、経営資源を細かく分析してみることから始める。役に立つのが「ファイブフォース分析」である。脅威が小さければ、これからも同じ業界で自社の力を磨き上げればいい。しかし、脅威が大きければ、脅威の少ない領域へ事業や業態を転換することを検討する必要がある。

 

家業で感じる「違和感」を大切にする

大企業やベンチャーで働いていた人が家業に入社すると、前時代的なアナログな業務のやり方に愕然とすることばかりである。家業の現場には「疑問と違和感」がたくさんある。この「なぜ」ことが、将来のビジネスの種になる。外の世界から家業に入ってきたアトツギだからこそ気づける課題がある。現状を客観視して、相対比較することで、業界が抱えているペインが浮き彫りになり、結果的に課題を解決する製品やサービスが多数誕生している。

ただ、それがどんなに正しいことだと思っても、社内でいきなり正論を振りかざしても先代や社員の心は動かない。まずはこれまでの貢献に敬意を払うこと。特にベテラン社員は、長年積み上げてきたものがあり、問題点に気づいていながらも改革できなかった場合、それなりの理由があったりする。そうした要因を丁寧にヒアリングしながら、一緒に解決して欲しい気持ちを伝えること。

 

人は今までやっていたやり方を変えるのは難しい。1社員として意見を言ったところで、なかなか聞き入れてもらえない。そこでDXの導入担当にアトツギが名乗り出るのも手である。現場の課題の抽出を「大義名分」に、社員と深いコミュニケーションができるようになる。

 

家業を再定義する

アトツギだからこそ、ある意味で「ヨソ者」の視点を持って客観的に経営資源を分解することができる。経営資源は有形のものだけでなく、自社の歴史や取引先との関係性、社員の能力、ノウハウなど無形のものも対象である。まずはできるだけ細かく書き出すこと。強みや弱みは、時代によって変わる相対的なものであり、アトツギが目指す事業によって、それまでパッとしなかった経営資源が輝く可能性がある。

 

参考文献・紹介書籍