人に困らない経営 ~すごい中小建設会社の理念改革~

発刊
2019年2月14日
ページ数
224ページ
読了目安
217分
推薦ポイント 2P
Amazonで購入する

Amazonで購入する

推薦者

人手不足の時代に採用に困らない企業の戦略
中小建設業にもかかわらず、採用倍率20倍の三和建設。人手不足と言われる時代に、人材採用に困らない企業の経営、採用戦略が紹介されている一冊。

働きがいのある会社

三和建設は、1947年に創立された創業70年を超える中堅ゼネコンである。企業の生産・物流施設、マンションなどの民間建築の設計施工に強みがあり、戦後の高度経済成長とともに、複数の大手企業から継続的に工事を受注し発展してきた。

三和建設は、2015年から5年連続で、日本における「働きがいのある会社」ランキングでベストカンパニーに選ばれた。建設業者では初の受賞であった。2017年には、人を大切にする経営学会主催による「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の審査委員会特別賞を受賞した。どちらも「つくるひとをつくる」という経営理念への取り組みなどが受賞理由になっている。

社員の幸福を目的にする経営を行う

三和建設の経営理念は「つくるひとをつくる」である。建物づくりを通じて、あるいは建物づくりのために様々なものをつくっている。また、他にも未来をつくる、笑顔をつくる、自分をつくるなど色々考えられる。そして、それらをつくっているのは、最終的にはすべて「ひと」である。
経営理念の策定以上に重要なのは、その運用である。重要なことは2つ。

①経営理念の意味付け
経営者自身の責務として、とにかく理念を繰り返し伝えていかなければならない。

②経営理念と実際の取り組みとの整合性確保
経営理念をあらゆる取り組み事象と無理やりにでもくっつけていく。

三和建設で行われるすべての取り組みは、この経営理念と結びついている。額に飾るだけ、唱えるだけの経営理念ではなく、徹底して仕組みの中に具体化していった。

情報を共有し連帯感を強める

一緒に仕事をしている仲間が好きで、仕事にやりがいを感じていても、会社や経営者のことを信頼できなければ、本当の意味でその社員の働きがいは生まれない。信頼を勝ち取るためには、以下のことが求められる。

①経営者やその打ち手を信用している
②経営者と社員がお互いの存在を尊重している
③会社はすべての社員に公平で仕事や組織運営に公正であると認識されている

ルールや規範などの順守を求めるものは明文化し、何回も繰り返し伝える責任が経営者にはある。ルールがあらかじめ共有されていることは、社員のモチベーション維持の大前提であり、組織を組織たらしめているのはルールとそれを守る文化である。三和建設では、会社の約束事「コーポレートスタンダード」を手帳形式にして配り、毎年更新している。

さらに、経営情報はしっかり公開して、決算後の利益配分についても全社員と共有している。また、組織の風通しを良くするために独自の日報システムを採用し、社長から上司まで日報を共有している。

なぜ新卒採用が成功するのか

「つくるひとをつくる」という経営理念を定めてから、三和建設では社員活躍を目指している。そのために、新卒採用を行なっている。後輩を持つという責任感、若い人に負けられないというプライド、若い血が入ってくるという組織の成長感は、社員にとって理屈を超えたモチベーションの源泉となる。三和建設では、新卒採用にあたって、以下の取り組みを行なっている。

①「口コミ」「出張講義」「学生向け公開フォーラム」「社員からの紹介」で、学生に知ってもらう機会を増やす。

②1人140時間かける5段階選考を行う。学生にとって自己評価の機会となり、自らの仕事観や業界で働くことへの意義を明確化できる。そのことが、口コミとなって評判となる。