メタバース革命 バーチャル経済圏のつくり方

発刊
2022年9月18日
ページ数
224ページ
読了目安
241分
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メタバースのビジネス事例とこれからの可能性
世界最大のVRイベント「バーチャルマーケット」創設者が、メタバースの特徴とビジネス活用のポイント、メタバース関連の仕事のやり方を解説している一冊。
現状のメタバースの使われ方、取り組まれているビジネスなどの事例を紹介しながら、今後市場が拡大すると予測されているメタバースの可能性について書かれています。

メタバースとは空間のインターネットである

2010年代はメタバースという言葉や概念は、現在ほど一般的ではなかった。また、これらのサービスはVRゴーグルを使ってバーチャル空間に入るというものではなく、「平面のモニター画面で見る3D空間」に留まっていた。その後、2016年にVRゴーグル「Oculus Rift」や「HTC Vive」が登場し、一般の人が自宅からバーチャル空間にダイブすることができるようになった。

メタバースという概念が一躍有名になったのは、マークザッカーバーグが社名をFacebookからMetaに変更し、「メタバース」という言葉を使った時からである。これによって、メタバースという言葉はバズワードとなり、同時に2つのことが起こった。

  1. VRがメタバースと明確に結び付けられた
  2. 「Metaな世界」の存在そのものに、改めて注目が集まった

これによって、VR業界そして、元々メタバースを目指していたセカンドライフ等はもちろん、フォートナイトやMMORPGなどを展開するゲーム業界、あるいは暗号資産やNFTに関わるブロックチェーン業界などが、メタバースという旗印のもとに集まり始めた。

 

今のスマホやパソコンなど、画面の外からスクリーンを通して色々なコンテンツを眺めるのが「平面のインターネット」だとすると、VRを使ったメタバースは、いわば「空間のインターネット」である。コンテンツが画面の向こうにあるのではなく、自分自身がコンテンツの中に入ることができる。
体を動かして風景を見たり、モノを持って投げたり、人とコミュニケーションをするといった感覚は、平面のモニターを通して得られる感覚とは体験の質が全く異なる。VRを利用すると、自分がその世界にいるという強い実在感を感じることができる。

VR系メタバースの面白いところは、その「体(アバター)」や「空間」を、ゼロから自分で作り出すことができるという点である。一般的なゲームでは、空間は開発・運営会社が作るものだが、VR系メタバースでは、全く新しい空間を、どんな個人、どんな企業でも無限に作ることができる。バーチャル空間では、自由な表現をしたり、新しい体験を生み出したり、独自のビジネスを展開したりといったことができるのである。

 

メタバースのビジネス活用のポイント

平面のデザインやウェブサイトなどでは、ユーザーの視線を考えて、UI/UXを設計する。一方、メタバースでは「空間デザイン」が必要になる。人がバーチャル空間の中で、どこを見て、どのように移動するかを計算して、3D空間のUI/UXを設計する必要がある。

バーチャル空間ではユーザーは空間の中で動き回るので、一定の場所に留めるのが難しい。そのため「空間を丸ごと設計する」という発想が必要になる。空間全体をPRの場にし、ユーザーがその中に没入できるようにし、体験を楽しめるものにする必要がある。

 

現実ではあり得ない大きさのものを設置したり、特撮やアニメのような演出をしたりといったことも、バーチャルであれば可能になる。バーチャル空間上の展示即売会のようなイベント「バーチャルマーケット」では、これまでに機動戦士ガンダムやウルトラマン、ゴジラ、新世紀エヴァンゲリオンなどを街に出現させる演出でPRをしてきた。

 

より「身体性を伴った体験」ができることも、バーチャル空間の大きな利点である。例えば、バーチャルなサッカーボールを用意することで、実際にそのボールに触れてもらい、それで起きる動きを体験してもらう。さらに体験に加えて「ボールを蹴ると花火が上がる」など、驚くような仕掛けを仕込むこともできる。このような身体性を伴った体験の提供は、バーチャル空間のメリットを活かした非常に効果的なPRとなる。

 

バーチャル空間では実際に「モノを売る」こともできる。最も実施しやすいのは、バーチャル空間で使えるモノを売ること。3Dモデルなどを販売する場合、バーチャル空間内ならその「実物」が陳列できる。商品を画像でしか見られない二次元のECサイトとは異なり、三次元のバーチャル空間では、それを実際に手に取ったり試着したりすることができる。バーチャル空間で使える3Dモデルの販売は、どんな企業や個人でもすぐに取り組めるビジネス手法である。既にゲームやアニメのIPを持つ企業は、「自社で版権を持つキャラクターのアバターを販売する」という手法が取り組みやすい。

一方で、現実の物理空間で使えるモノを、バーチャル空間で売るとしても、現状の技術では、それほどリアルなものにならない。しかし、「タッチポイント」という考え方では有効である。バーチャル空間において、ユーザーやアバターの衣装や3Dアイテムとして触れたものが、現実社会においても親しみを感じるという現象が起こることがわかっている。