やわらかい頭の作り方 身の回りの見えない構造を解明する

発刊
2015年3月23日
ページ数
188ページ
読了目安
227分
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人の考え方には癖がある
人の考え方には癖がある。自分の「常識」や「価値観」や「見方」が絶対でないことを知ることこそが、頭をやわらかくすることであると説く。様々な考え方の癖を紹介しながら、頭をやわらかくするポイントがわかる一冊。

「心の癖」を自覚する

私達は例外なく、自分中心のものの見方しかできない。頭が固いとは、自分中心の考え方しかできない事を意味する。その事をまずは認識し、矯正してみる事が柔軟な考え方につながっていく。

人間は基本的に感情によって行動するが、感情というのは往々にして一貫性がなく、他人に理解しにくい。特に複数の人達と集団で行動する場合には、このような思考の癖が「頭の固さ」となる。従って、頭をやわらかくして考えるためには、このような「悪い癖」を自覚する必要がある。

 

思考回路が行動を決める

個別の事象に対応していく事は、具体的な行動につながりやすく、すぐに直接的な影響が出やすい半面で、根本的な原因に対処するような本質的な解決策にはつながらない。一方で「思考回路を変える」のは、難易度が高く時間がかかる半面で、一度達成してしまえば、個別には対応しなくても全ての行動が一気に変わるという大きなメリットがある。本当に必要なのは、この「思考回路の転換」である。

 

始まり方が終わり方を決める

人間関係というのは「始まり方」が「終わり方」に相関する。例えば、営業マンが「ゴルフや接待で取った仕事」というのは、関係が続く限りゴルフや接待を続けなければならなくなる。相手が自分を見る目は初めの時点で確定し、これを変える事は非常に難しい。何事においても、何気なくスタートをきる時でもこのメカニズムを意識しておく事は、いざ始まった事のその後の進め方を考える上で重要と言える。

 

みんな「自分は特殊である」と思っている

私達は、他人が客観的に見るよりも、自分自身の事を特殊だと考えてしまう傾向がある。他人から「こうしたらいい」などと指摘されると、「自分の場合は違う」と感じて反論したくなる性質がある。

この傾向を逆の立場で考えてみると、私達は他人の話を聞いている時には、相手の話をかなり一般化して聞いてしまっている可能性がある。これは日々のコミュニケーションで、肝に銘じておく必要がある。従って、人間関係を円滑にするためにも、相手は「オンリーワンの特殊な存在」だと認識して「それをあなたにしかできないですね」とまずは受け止めて、その上で「一般化」して考えてみる事が必要である。

 

遠くのものの方がありがたい

人は「遠くの人」のアドバイスに、より耳を傾ける。親よりは親戚、親戚よりは学校の先生、学校の先生よりは塾の先生のアドバイスの方を聞く。実は新しいアイデアを生み出す時のポイントも同じところにある。人間は年齢を重ねてくると、遠出が億劫になる等ついつい「身近なもの」で済ませようとする。これは「頭の使い方」でも同じで、経験や知識を積み重ねるにつれて「身近にあるもの」で済ませようとする。これが「頭の固さ」の1つの原因になる。身近な世界だけで考えていれば楽だからである。

創造的なアイデアも、ほとんどは既存のアイデアの組み合わせと言われるが、1つのポイントがある。それが「遠くのものほど価値がある」という事である。「遠くの世界」を活用すれば、既存のものの組み合わせでもこれまでになかったものが生まれる。

 

気付いた時点で解決している

私達の身の回りの問題や課題に対して、以下の3通りの人が存在する。

①本当にできている人
②できていないと気付いている人
③できていない事にすら気付いていない人

私達は個人個人でも各々個別の問題によって、自分が①に入る場合もあれば、③に入ってしまっている場合もある。別の切り口から、これを身の回りの事象を問題になっているかどうかで分類すると3つに分けられる。

①「本当に問題がない」解決済の問題
②「問題だと気付いているが解決していない」未解決の問題
③「問題だという事にすら気付いていない」未解決の問題

②の状態を①の状態に持って行く事を問題の解決、③の状態を②の状態に持っていく事を問題の発見という。圧倒的に難易度が高いのは問題発見の方である。頭の固い人は「問題解決」が得意なだけであり、必ずしも問題発見が得意ではない。頭をやわらかくするには、③の領域を意識する事が大切である。

 

「単純に考える」方が実は大変である

「1のアウトプット」をするのに「1のインプット」をしてそのままアウトプットする人を「短絡的」。「1のアウトプット」を出すために100のインプットをし、それを解釈し、再構成してアウトプットを1出すのを「単純に考える」といえる。

「単純に考える」事は、複雑で膨大な情報を「再構成する」処理が必要である。「やわらかい頭」とは知識を再構成する力の事であり、単に知識を膨大に有している事とは、全く違う能力が求められる。

「博識である」事は、「考える力」とは直接関係ないばかりか、状況によっては逆に絞りにくくなる可能性があるという点で、「頭が固くなる」危険性もはらんでいる。