THE HEART OF BUSINESS 「人とパーパス」を本気で大切にする新時代のリーダーシップ

発刊
2022年7月22日
ページ数
392ページ
読了目安
546分
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人のパフォーマンスを高める組織のつくり方
AmazonなどのEC事業者によって、危機にあった世界最大の家電量販店ベスト・バイを、従業員の力を引き出すことで変革し、立て直した著者が、人を中心とした組織の作り方、考え方を記した一冊。
生きる意味の探求こそが人生であり、仕事であるとし、人生のパーパスと仕事のパーパスを結びつけることで、人間らしくパフォーマンスの高い組織ができると説いています。

仕事とは「生きる意味の探求」である

人生とは意味の探求だ。それが究極的には充実感や幸福への道になる。人間が意味を見つけられる場所は、仕事、愛、勇気という3つの中だ。仕事を通して意味のあることを為すという行為には、他者への思いやりや、逆境を乗り越えることなども含まれている。

 

意味やパーパスは、どんな種類の仕事にも見出せる。人は自分のパーパスを選択することができる。どんな仕事であれ、自分のやっていることがそのパーパスとどうつながっているか考えることができる。そして、ほんのちょっとした意味を見出すだけでも、仕事に対するエンゲージメントに違いが生まれる。

 

「何があなたを突き動かしているか」という問いを投げかけることは役に立つ。自分とパーパスがつながり、仕事への取り組み方も定まるからだ。リーダーにとっては、自分のパーパスを理解するだけでなく、周りの人が何に突き動かされているかを知ることも同じくらい重要だ。

 

パーパスと人を重視せよ

ビジネスの根本はパーパスや、人や人間関係にある。少なくとも利益は第一ではない。企業とは魂のない「モノ」ではない。1人1人の個人が共通のパーパスを目指して協働する、人間らしい組織である。この共通のパーパスが、各個人の生きる意味と重なった時、人に備わる魔法のような力(ヒューマン・マジック)が解き放たれ、目覚ましいパフォーマンスが発揮される。

 

パーパスとは、その企業が存在する意義のことである。その頂点にある「ノーブル・パーパス(大いなる存在意義)」は、世の中に与えたいと願うポジティブな影響のことであり、公益に貢献することである。この公益こそ企業が核として意識するものだ。企業は善を為すことでうまく行くのだ。

ノーブル・パーパスは従業員を引き寄せ、顧客とも深く関係する。そして、戦略立案やあらゆる意志決定・評価の指針となる。企業の存在意義は、次の4つを考えることで見出せる。

  • 世界が必要としているのは何か
  • チームとして情熱を傾けているものは何か
  • 自分たちの会社が得意なことは何か
  • その上で、自分たちが稼げるものは何か

 

ノーブル・パーパスは「パーパスフルな人間らしい組織」という枠組みの頂点に位置する。そして中央に位置するのは従業員だ。なぜならビジネスの秘訣は、最高のメンバーが顧客にとって最高の仕事をすることにより、最高の結果につなげることだからである。

従業員こそ「ハート・オブ・ビジネス(ビジネスの核心)」とみなし、中心に据える。従業員は社内の仲間のみならず、会社のすべてのステークホルダーと思いやりに満ちた本物の関係を築き育んでいくことで、会社のパーパスに貢献するだけでなく、各ステークホルダーに最高の結果を届ける存在である。
「顧客にとって最高の仕事」は、こうした従業員が顧客を人間として心を通わせる時に生まれる。

 

1人1人が生き生きと働ける環境をつくる

パーパスフルな人間らしい組織の原動力となるヒューマン・マジックを解き放つものは何か。それは1つの根本的な考えの変化から始まる。従業員たちを「リソース」ではなく「ソース(力の源泉)」と捉えるのだ。従業員たちは「人材」ではなく、共通のパーパスを追って協働する個人として扱われなければならない。従業員はそれぞれのモチベーションや目的意識を持った個人であり、お金だけに動かされる人的資本ではない。

今こそ、集団的な労働力を動かす方法ではなく、1人1人が大切にしているものとの結びつきを生むことによって意欲を高める方法を追求する時だ。ヒューマン・マジックを解き放つとは、1人1人が生き生きと働ける環境作りを意味する。自分にとって大切なことや自分が信じるものに取り組んでいる時にこそ、人は障害を乗り越え、エネルギーや創造性や感情を仕事に注ぎ込むのだ。

 

こうした環境づくりは、主に5つの材料で構成されている。

  1. 1人1人の生きる意味の探求と、会社のノーブル・パーパスを結びつける
  2. 人と人との本物のつながりを築く
  3. 自主性を育む
  4. マスタリーを目指す
  5. 成長できる環境を作る

 

パーパスフル・リーダーの5つの「あり方」

①自分と周囲の人々のパーパスを理解し、それらと企業のパーパスの結びつきを明確にする

②リーダーとしての役割を明確にする

③誰に仕えているかを明確にする

④価値観を原動力にする

⑤偽りのない自分になる

 

従業員がリーダーに求めているのは人間らしくあることだ。そして、自分たちがありのままに受け止められ、敬意が払われ、耳を傾けてもらい、理解され、一員とみなされることを期待している。それはつまり、リーダーは心を開き、知らないことがあれば知らないと認め、弱さをさらけ出す必要があるということだ。

弱さを認めることが社会的なつながりの核心だ。そしてその社会的なつながりこそがビジネスの核心なのだ。そのつながりは、私たち1人1人から始まる。