マニュファクチャー2030 未来の製造業

発刊
2019年5月17日
ページ数
240ページ
読了目安
354分
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デジタル化される製造業のこれから
製造業の「エンジニアリングチェーン」と「サプライチェーン」の課題と対策を示しながら、今後、AIやIoT活用によってどのようにデジタル化されていくかを解説する一冊。

製造業はソフトウェアの技術力も磨け

製造業の競争力は、製品(ハード)そのものの競争力と、製品のサービス化での競争力が重要になる。この2つの競争力を向上させるのは技術力である。ハードの技術力の大小は、設計者や生産技術者などのエンジニアリングチェーン(研究・開発・生産技術)の人材の質と量により決まる。一方のソフトの技術力は、サプライチェーン(計画・調達・生産・販売・物流)の業務推進者と、IT・IoT・AI活用のシステムに関わる人材の質と量により決まる。

日本の製造業の強みは、ハードの技術力。その技術力を生かすためにも「ソフト経営改革力」を磨くことが必要である。製造業は、自社にIT人材を招き入れ、育成・強化することが急務である。

製造業のデジタル化

第4次産業革命と言われる今日においてキーとなるのアクションは、ネットワークであらゆるものをつなげることである。現在、製造業で注目されているデジタルシステムはIoTとAIで、今後は「サイバーフィジカルシステム」(CPS)という形で進化していくことが予測されている。

CPSは製造業とITシステムの共存を示すキーワードである。CPSは、モノがつながって情報を提供するフィジカル空間から吸い上げた大量のデータをクラウドなどのサイバー空間で蓄積し、必要な分析を行った上で、フィジカル空間に返し、そこでの活用が図られるという一連のシステム全体を指す。

CPSは、社会インフラの一部として、現実社会とのつながりが幅広いことからステークホルダーが多岐にわたる場合が多くなる。従って、どこと協業してCPSを実現していくかも重要な問題となる。

製造業は製品も工場もサイバー化に向かい、サイバー企業は製造への参入を狙うなど、両者の垣根が消えつつあることは既に大きなトレンドになっている。

このような中での有力な戦略の1つが、技術に裏打ちされた製品開発で先行しリーダーとなることである。もう1つの戦略は、モノづくりのプロセスを改革し、他社に勝る品質、価格、納期を実現することである。

2030年のエンジニアリングチェーン

2030年にはAIとRPAの活用度が劇的に上がり、新製品の品質と完成度は劇的に改善される。

・フロントローディング
後工程のサプライチェーンに関係する製造、購買、品質保証、サービス技術、営業、財務などの部門も製品開発に参画し、全社で上流管理を行う。

・コンカレントエンジニアリング
製品の企画から設計開発、生産準備に至る様々な業務を同時並行的に処理することで、量産までの開発プロセスを短縮する。
→技術者のノウハウをAI化し無人化

・PDM
製品開発・設計において、製品に関するすべての情報を整合性のある形で一元管理する。
→エンジニアリングデータ(デザイン、図面、仕様、部品情報、検査基準、指示書など)の自動生成

・バーチャルエンジニアリング
データをベースに、製品設計だけでなく、実験やテストまでデジタル空間でシュミレーションを実施し製品を改良していく。
→仮想空間での製品設計、試作、趣味レーションテスト、CAD/CAMデータの自動生成

・標準化とモジュール化
製品を毎回ゼロから開発するのではなく、検証済みの機能ブロックの組み合わせとして開発する。
→標準化と製品バリエーションの両面から最適化を実現するモジュールユニットを自動生成