「。」を増やせば、わかりやすさが増す
ラジオで話す際に、何よりまず大切にしているのが会話の第一印象。どんな話でも、まずは相手に「聞く耳」を持ってもらわなければ、その先はない。まず相手に「この人の話をもう少し聞いてもいいかな」と思ってもらうことを目指す。会話の立ち上がりは、余計な負荷をかけない。
相手に負荷をかけない方法はシンプルである。それは「話す時に、短めの一文一文を完結させていく。つまり、意識的に「。」を増やす」こと。
あらゆる会話で大前提にしたいのは、「そもそも人は飽きやすい。その興味をそそり、持続させるのはなかなか大変」という現実である。どんな状況でも、最初に耳に飛び込んでくる一文が長すぎると、人は「わかりにくい話」と判断し、理解することをやめてしまう。
短い一文で始めれば、「これからこんな話をしますよ」という全体像を相手につかんでもらいやすくなる。しかも一文一文が短い話であれば、「まあ、あと少し聞いてもしんどくないか」と「聞く耳」を持ってもらえる。
短く言い切るコツとしては、ドラマのシーンごとに区切って撮影している感覚。まずはイメージを思い浮かべながら、「簡潔&完結」に言い切るように意識する。
あえてしゃべらずに伝える
言葉で伝えることがコミュニケーションのすべてではない。時には「言葉を使わない」という選択が必要な場面もある。聞くだけで辛くなったり、哀しみでやりきれなくなってしまうニュースやエピソードに対して、「言葉が出ない」「何も言えない」というのが本心ならば、「沈黙」こそが自分の気持ちを伝える最善の手段である。
「そうでしたか・・・」「大変でしたね・・・」という言葉の後の数秒の間こそ、思いやりやいたわり、共感が自然な形で表れる。はっきりとした言葉がないからこそ、相手に解釈してもらう幅が生まれる。
また、無言の「間」には、言葉にならない気持ちを伝えるだけでなく、すでに発した言葉を相手の中に深く染み込ませる役割もある。程よく「間」のある話は、聞きやすく理解しやすくなる。
対面して会話する時も、同じように「間」は意識したいもの。「間」を怖がらず、言葉をはさまずふんわり笑顔で待つ。いつもなんだか「感じがいいな」と思う人は、会話が途切れた時も決して焦っていない。むしろ「ごゆっくりどうぞ」というその余裕ある様子が、一緒にいる相手を心地よくさせている。
言い足りないくらいがちょうどいい
説明が足りないのも問題だが、あまりに多くの情報を提供されても、聞き手にしてみたら処理しきれない。すべての事柄を説明してしまうと、全体がだらだらとした印象になり、何を伝えたいのかわかりづらくなってしまう。
言いたいことを絞った方が、頭の中に映像が浮かびやすいもの。伝えたいものに集中、他はバッサリ落とす。自分は何を伝えたいのか、そのためには何が必要で、何が不要か。特に取捨選択の「捨」を意識すると、大事にしたい内容が鮮やかに残る。
自分のための「あれもこれも」ではなく、相手のための「これぐらいで、もう十分」。この判断ができる人は、相手に安心感を与えるし、話も気持ちよく受け取ってもらえる。
余白をつくる
ラジオDJの多くは、聞いてくれる人の状況に合わせた声や話し方、話題の順番などを意識している。長時間心地よく聞いていられるのは、聞き手に向けて、徹底的なおもてなし、つまり「聞きやすさ」を心がけているからである。言い換えれば、ラジオ番組ならではのメリハリ、「聞き流せる」余白が意図的につくられているからである。
常に集中して聞いていないと、たちまち内容がわからなくなるのは聞き手にやさしくない。ラジオの生ワイド番組の多くは、大体3時間を目安に構成されている。その中に、1つの話題を深く掘り下げるコーナーがあれば、気楽なフリートークの時間があったり、メール紹介や交通情報、天気予報があったりする。聞いている側が意識しなくても、ふっと気を抜いて休憩できる時間と、「ここは大好きなコーナーだ」と、ググッと身を乗り出して聞き逃すまいとする時間が両方用意されている。
集中力のスイッチがオンになったりオフになったりすることで、「長時間耳を傾けている」という意識が薄れ、聞きやすい一口サイズの話が代わる代わるやってくる感覚になる。
番組中、DJがずっとしゃべっているようで、実は一人で話す部分は、1つのテーマで3分程度。なので途中で、聞き流しても話を理解しやすいし、話題もリズムよく変わっていくので、飽きずに楽しめる。
実際の会話でも、相手に心地よく聞いて話してもらうために意識したいのが「余白」である。相手があいづちや質問、コメントができるような数秒の「息継ぎタイム」=「会話の余白」を作る。まずは意識していつもより相手の表情を捉えつつ、「間」を作りながら話すだけでいい。