バーチャルファーストの時代がやってくる
メタバースやWeb3の流行は、インターネットの世界が次のステップに移行するという大きなムーブメントである。メタバースとWeb3をシンプルに定義すると以下の通りとなる。
メタバース:VR、AR、MR、ミラー・ワールドのリブランディング
Web3:仮想通貨、暗号資産、ブロックチェーン、クリプトのリブランディング
メタバースとWeb3の行き着く重要なゴール「インターネットファースト=バーチャルファースト」な世界というのが、今回起こっている大きなトレンドである。これまではリアルが主でバーチャルが従だったが、これが逆になるタイミングが今である。
「バーチャル上でみんなが参加することが可能で、そこには経済圏がある」。今はゲームの印象が強いかもしれないが、私たちの仕事や会議、生活など、今後すべてがバーチャルファーストに変化していく。
メタバースが生活に浸透していく
メタバースが私たちの生活に浸透していくには、次の3つロードマップがある。
①世界中のゲーマーを取り込めるか
②タブレットやPC市場(職場や学校)を取り込めるか
③ポストスマホ(ARグラス分野)
昨今VRヘッドセットはよく売れている。2020年はOculusQuest2だけでも約1000万台くらい販売され、2022年は倍以上の累計2000〜3000万台という数字が見えている。ゲーム市場では、ゲーマーを確実に取り込んだ人気ハード機の目安が1億台だった。この1億台という規模が3年以内にVR関連でも見えてくる。
1億台の先には、タブレットやPC市場をどう取っていくかが重要で、職場や教育現場で「マストハブになる」ことが鍵になる。教育現場でタブレットはマストハブになってきているが、同じくVRがそうなっていけばユーザー側もVRに慣れてくる。その次のポストスマホは、VRではなくARグラスの分野になる。
VRとブロックチェーンが共に大事なのは、リアルの世界を完全に置き換えていくために必要だからである。これらの実現に右脳的な感覚、センス・オブ・プレゼンスという実在感が決定的に重要である。この実在感を作るために重要なのが「レゾリューション(解像度)」と「レスポンス」である。バーチャル空間で人と出会い、人間関係を作ろうとすると、この実在感が重要であり、VRとARがこの部分を解決していく。
Web3の未来はどうなっていくのか
Web3の未来を考える上で重要なのが、ブロックチェーンにしかできない次の3つの特徴を考えることである。
①トラストレス×自律的×非中央集権
「トラスト(信用)を担保する主体がいない」というのは、Web3、分散型インターネットを構築する重要な概念と言える。仮想通貨を例にすると、ビットコインやイーサリアムなどは、信用を担保している中央集権的な主体がない。多数の参加者がネットワーク上の取引を検証、承認する仕組みで、一人ひとりが参加するネットワークがサービスの基盤となっている。
そもそもインターネットは個人をエンパワーメントさせる世界を目指してきた。しかし現状はGAFAMなど一部の企業がプラットフォーマーとしてサービスやデータをコントロールし、独占的な利益を得ている。
非中央集権的のプロトコルは、彼らからユーザーに力を戻す。Web3では、自分のデータは自身のものとして持てるようにする動きが加速している。
②NFT
NFTの多くはイーサリアムのスマートコントラクトを使っている。これは、NFTを発行する際に、ブロックチェーン上にプログラムを書き込むことができるということである。アーティストらがNFTを発行する時、「いつこのNFTが作られたか、オリジナルの所有者は誰か」という情報が入る。その後、誰が買ったかという情報がチェーン上に刻まれていく。これが常に透明に公開されるから、作品の所有者が誰かということが保証される。
NFTにすれば、供給量を制限できるので、デジタルでも限定商品が作れるようになった。これができれば、デジタル空間上の中でマネタイズが完結する経済圏が作れるようになる。これまでゲームでできなかったことは、そこで「お金を稼ぐ」ということだった。しかし、ゲームの中にこうしたブロックチェーンの技術が入ってきて、ゲーム内アイテムに資産性が出てくると、ゲームの中に経済圏が作られる。
③DAO
DAOは「Decentralized Autonomous Organization(自律分散型組織)」の略で、最小構成は「ビジョン、それに賛同する人が集まってできたコミュニティ、独自トークン」である。一番有名なDAOはビットコインやイーサリアムである。
強いビジョンをベースに、賛同する人が集まって、独自のトークンを発行するDAOは、今後の新しい組織の形になっていく。DAOの本質は「インセンティブ革命」である。つまり、プロジェクトに関わったすべての人が金銭的なメリットをもらえるようになっていく。そのインセンティブによって、それぞれの人が自律的に組織やプロジェクトの成功のために動くというのが、一番のコンセプトである。
こうしたWeb3の相互運用が可能な設計は、メタバースとの結合によってさらに大きくなり、経済価値を生み出すことを可能にする。