アナロジー思考とは
「新しいアイデアも結局はすでにどこかにあったものの組み合わせでしかない」と言われるが、これはほとんどの場合において正しい。新しいアイデアは「借りてきて組み合わせる」ことで生まれる。
発想力には2つの要素がある。
①多様な経験や知識を持っていること
②それらを発想の対象としているものに結びつけること
前者だけでは「単なる雑学博士」である。後者を鍛えることで「アイデアマン」になれる。多様な経験や知識を「つなげる力」がアナロジーの力である。
アナロジーとは「類推」のことである。物事を発想することにおいて、多様な知識や経験を結び付け、2つの世界の比例関係を利用する思考法をアナロジー思考という。アナロジーは複雑な事象に潜む本質的構造を見抜き、それを別の分野に応用する。
アナロジーとは「借りる力」である。長年同じ世界で仕事をしていると、アイデアの源泉が「以前にやったこと」や「同業他社がやっていること」になりがちで、新規性がなくなってきてしまう。このような場合に、何らかの違う世界から借りてくるという発想によって、新規性を付加することが可能になる。
アナロジーを活用するには、多様な世界を「一般化」「共通化」「構造の把握」を通じて、共通点と相違点を見つけることが重要である。2つの世界の比例関係を利用すれば、新たな発想を生むことができる。
4つのステップ
①ターゲット課題の設定
②ベース領域の設定
③ベースからターゲットへのマッピング
④評価・検証
まず対象となる課題を設定し、それを抽象化して特徴をつかむ。次にアナロジーの源泉であるベース領域を設定する。ベース領域は、ターゲット領域とは遠ければ遠いほど斬新なアイデアが生まれる可能性が高い。ベース領域とターゲット領域の対応要素をマッピングし、評価・検証を行う。
ビジネスの場合、同業界よりも他業界から知見を借りてくることが良い。また仕事のアイデアを「遊び」から借りてくることも考えられる。
類似性を見つける
アナロジーで用いるベース領域とターゲット領域を結び付けるには「類似性」を見つけることが必要である。「一見異なるようで、実は似ている」という2つの世界を結び付けるのである。
類似には、表面的な類似と構造的な類似がある。後者は発見しにくいが、その価値も大きい。構造的な類似を見抜くには、関係・構造の基本パターン(並列関係、因果関係、大小関係、対立関係等)を頭に入れておく必要がある。
アナロジーを活用するには、ベース領域とターゲット領域の間の共通点と相違点を見極め、最適なベース領域「借り先」を選択することが重要である。そのためには、以下の3つを利用することが重要である。
①一般化:対象の上位概念として包括する一般的な言葉に置き換える
②単純化:目的に合う部分の特徴を取り出す
③構造化:事象間の関係や構造を明らかにする
思考力を鍛える
アナロジー思考は、意識しないと鍛えられない。すべての事象を自らの世界と関連付けて考える姿勢が重要であり、常にアンテナを張っておく必要がある。