「目的」から始めよ
「何のために」がわからないままにガムシャラに働いても、成果は決してでない。そもそも私たちの仕事は「作業」そのものに意味があるわけではない。その作業を通じて生まれる「価値」の部分にこそ意味がある。
「何を」ではなく「何のために」から始めること。最初の「目的」が明確であれば、そこに目がけて仕事のやり方を最適化し、成果に直結させることができるようになる。目的を頂点として仕事を駆動することが成果創出の原則であり、「目的ドリブン」で考えることのエッセンスはそこにある。
端的に言って、「成果の創出」は「目的の達成」とイコールだ。仕事が目指す価値を実現して初めて、その仕事は「成果が出た」ものとして認められる。
目的から逆算する
目的それだけでは、仕事の成果は生まれない。目的を達成する手段が伴わなければ、目的は絵に描いた餅に過ぎなくなる。重要なのは、目的とその達成を受け支える実行の仕組みを理解することだ。その仕組みは「目的-目標-手段」の三層ピラミッド構造だ。
- Why(目的):成し遂げるべき「目的」を頂点として
- What(目標):目的を成し遂げるために達成が必要な「目標」が続き
- How(手段):目標の達成に必要な「手段」が基盤となって受け支える
「どのように?」と「何のために?」で三層がそれぞれ互いにつながっていること、これが目的を果たし、仕事で確実に成果を生み出すための要諦だ。この三層ピラミッド構造をつくることで、抽象的だった目的を「実務として制御可能かつ有効な対処を打てる状態」にすることができる。
目的を設定するためのステップ
①仕事の「上位目的」とその「背景」を押さえる
組織において目的を設定する時、まず押さえるべきは「上位目的」である。合わせて理解しておくべきことが「背景」である。「背景」とは、その目的を打ち立てるに至った経緯・きっかけのこと。目的と背景を合わせて深く捉えることで、初めてその意図するところが正しく把握できる。
②「ポジション」と「時間軸」で目的の広がりを押さえる
「ポジション」と「時間軸」を無視すると、必要以上に遠大な目的を設定してしまったり、今の立場にそぐわない過小な目的を設定したりしかねない。
③「何のために」を問い、文字に落とす
モチベーションが欠けた状態では、設定された目的も空疎なものになる。そのためには、自分として何を実現すべきと考えているのか(使命)、何を目指したいと思っているのか(意志)を突き詰めることが大切だ。
④上位者と目的をすり合わせる
具体的な仕事に着手する前に、設定した目的が「筋が良いか」どうかの確認を上位者と必ずとっておく。
目的を「目標」に落とし込むステップ
目的が到達点であるのに対し、目標は中継地点(マイルストーン)を意味する。目標は目的をいくつかの部分に分けて具体化したものだ。目的を定性的な条件・定量的な水準値に分解すれば、具体的な手触りのある目標が見えてくる。
①目的を「構成要素」に分解する
目的に対して「どのように達成するか?」(How)と問い、より具体的な構成要素に分解して行く。
②抽出した構成要素に目標水準と期限を与える
次の2つの視点から達成水準を設定する。
- どの程度の水準を?(目標の高さ)
- いつまでに?(目標の期限)
③SMARTの視点で目標を精査する
設定した目標が妥当であるかを、次の5つの視点で精査する。
- Specific:具体的であるか
- Measurable:測定可能か
- Achievable:達成可能か
- Relevant:目的と整合しているか
- Time-bound:期限が明確か
目的を押さえることで有効な手段を考える
「目的」と「現状」の間にあるギャップを埋め、目指す姿の実現を可能にさせるものが「手段」である。つまり、目的の達成を阻害している問題が何であるかを発見することが、手段を構築するための第一歩となる。さらに「問題」を発見しただけでなく、それを解決に導く「実行策」、それを見出して初めて「手段」が形作られる。
「手段」を考え出すには、次の5つの基本動作のパフォーマンスを高める。
- 認知:目標の達成に向けて解くべき問題を特定する
- 判断:対策案を考案し、優先すべき実行策を意思決定する
- 行動:実行策を行動計画としてチームに落とし込み、実行に移す
- 予測:将来に発生する潜在的な問題を先読みし、先手を打つ
- 学習:経験によって得られた学びを将来の問題解決に転用する
これらのパフォーマンスを高めるため、「目的」を押さえることが重要である。目的が正しく押さえられていれば、そこを基準として現状とのギャップを正しく「認知」し、ムダな問題を省きながら解くべき問題に集中することができるようになる。また、達成すべきことが明確であればとるべき対応もスピーディに「判断」ができるようになる。そうした正しい「認知」と「判断」に支えられることで、成果に直結する「行動」が生まれてくる。