成果を上げるライブコマースの教科書

発刊
2022年3月22日
ページ数
216ページ
読了目安
353分
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推薦者

ライブコマースの入門書
コロナ禍でEC市場が急拡大する中で、注目され始めている「ライブコマース」をどのように企画し、運営すれば良いのかを解説している教科書。
YouTuberやライバーと異なり、商品を起点として配信しなければならないライブコマースにおいて、何が求められるのか。SNSマーケティングと合わせた効果的なライブコマースの実践方法が紹介されています。

ライブコマースとは

ライブコマースは、インターネット版のテレビショッピングとよく言われる。インターネットのライブ動画の配信を活用し、配信を見にきた視聴者と配信者がリアルタイムに繋がることができる販売手法である。視聴者のコメントによる質問に答え、双方向のコミュニケーションをとって企業の商品やサービスの魅力を掘り下げながら販売まで誘うことができる新しいEコマースの形である。

配信者には視聴者の顔が見える訳ではないが、視聴者は配信者に対してテキストで質問や感想を送ることができる。この双方向のやり取りができる点が、テレビショッピングと決定的に異なる。

 

ライブコマースの配信は、ユーチューバーやライバーといったタレント性とは異なり、どちらかというとショップの販売員や、セレクトショップのオーナー、商店の店長に近く、収入はあくまで商品の販売による利益である。つまり、自分の働く会社やお店がECサイトを持ち、商品を取り扱ってさえいれば、すぐにできてしまう配信である。

 

但し、ECサイトにライブ配信できる機能を設置しただけで、視聴者がくるかわからない状態でライブコマースをしても意味がない。仮に視聴者がやってきたとしても、台本通りに淡々と商品を一方的に説明するだけでは売上に貢献しない。改めて企業はマーケティング活動に立ち返り、生活者と繋がり、企業活動への共感を得ていくことが重要になる。

 

ライブコマースの3つの型

日本ではライブコマースのプラットフォームが増えてきているタイミングである。これには3つの型がある。

 

①ECモール型

ライブコマースの配信は副次的でメインはあくまでお店ごとのECサイトをモール内に出店し、運営することにある。ライブコマースを見てもらえるかどうかはモール側による集客に左右される。

 

②SaaS型

企業が自社のECサイトに直接埋め込んで独自のライブコマースとして活用できる。データ分析を細かくできるので、成約率に寄与しやすいが、視聴者数をどうやって連れてくるかが課題になる。

 

③SNS型

InstagramやYouTubeのライブ配信機能を活用して行う。アカウントを持っているお店や企業であれば、これまでに関係を築いてきたフォロワーがいる環境が1番のメリットである。課題は、SaaS型のように配信を見ながら買うということができないため、買いたい時は配信から離脱してECサイトに行かなくてはならない点である。

 

自社の状況と目的のバランスを考えてライブコマースのプラットフォームを選定することが非常に重要である。

 

配信者がライブコマースの成功要因

どのライブコマースでも必ず重要な役割を担うのが配信者である。ライブコマースの最大の特徴がコメントを通しての視聴者との双方向性である以上、配信者を誰にするか、どう育成するかを押さえることで、クオリティは大きく上がる。

 

配信者には、営業マンのようなセールストークと、商品開発者のような商品知識、SNS運用担当のようなマーケティング知識、そしてライバーのような配信慣れと臨機応変に対応する力、これらを併せ持った人材が必要になる。こうしたスキルを持つ人材を「コマーサー」と呼ぶ。

 

コマーサーがライブコマースの配信を行う場合、少なくとも商品を販売するという目的がある以上、必ず配信内容の主体は商品になる。コマーサーは、商品の魅力を最大化し、視聴者の買いたい気持ちを醸成する必要がある。

インフルエンサーやライバーようにヒト軸のみで考え、個人のファンを消費に繋げてしまうような一過性の売上でライブコマースの成果を上げるのではなく、モノ軸で伝えるコマーサーが、商品の品質や開発背景などを伝えていくことが重要である。

 

コマーサーの起用方法は、ライブコマースの目的をPRにおくか、コミュニティにおくかで決めることができる。PRとして大きくリーチさせたい時は、有名インフルエンサーやタレント・モデルなどをプロコマーサーとして起用し、そのフォロワーを視聴誘導させ、視聴者数を上げていくことは可能である。但し、視聴者=購入者ではないため、1回の配信でキャスティング費用に対するペイを行うのは難しい傾向にある。

一方で、ライブコマースを新たな顧客接点として継続的かつ定期的な配信による運用をし、視聴者を顧客見込み群として育てていくコミュニティ型のライブコマースという考え方もある。この場合は、複数回にわたる配信と、視聴者数と視聴層を安定させていく必要があるため、コマーサーには商品知識があり、低コストで実施できるインハウスコマーサーが適任である。

 

但し、これまで特にSNSでのファン形成やエンゲージメント形成ができていない場合は、ライブコマースコミュニティのもととなる最初の視聴者を作ることに時間がかかる。視聴者を一から作る場合は、プロコマーサーとコラボし、プロコマーサーのSNSのフォロワーから視聴者に繋げつつ、ブランドのファンに転換していく設計をしていくと良い。